早大ア式女子 3.11被災地・女川でチャリティーマッチ 欧州組に大勝!

チーム・協会

【早稲田スポーツ新聞会】

欧州組集結チャリティーマッチ 6月19日 女川スタジアム
【早稲田スポーツ新聞会】記事 前田篤宏、写真 前田篤宏、大幡拓登、編集 松永拓朗

今月こけら落としがあったばかりの宮城・女川スタジアムで19日、チャリティーマッチが開催された。ア式蹴球部女子(ア女)OGの千葉望愛(平26スポ卒=現スペイン・フェマルギン)が発起人となり欧州でプレーする日本人で『プロタゴニスタ』を結成し、年に一度開催されているのが欧州組集結チャリティーマッチ。東日本大震災の被災地である女川で、更なる復興と女子サッカーの発展を目的に行われた。今回が2回目で、ア女は初参戦となった。スペイン1部やドイツ1部など、欧州リーグの最前線で戦う選手も集まった今年のプロタゴニスタ2022。ア女にとって震災について考えると共に、実力を試すいい機会にもなった。

90分間の激戦で会場を沸かせた後には、記念撮影を行った。プロタゴニスタの選手と共に早稲田の『W』ポーズを見せる場面も 【早稲田スポーツ新聞会】

レギュラーシーズンでは綿密なスカウティングを経て試合に臨むア女。しかしプロタゴニスタは年に一度しかしないチームであるため、事前情報は皆無に近い。すなわちア女スタイルを100パーセント貫くことがア女に唯一できることだった。急造チームのため組織力に欠けるプロタゴニスタに対し、特徴の一つであるハイプレスで真っ向勝負を仕掛けた。とはいえ相手は欧州の最前線で戦うプロ選手だ。加えてア女も前日に激戦を戦い抜いたばかりであるため、難しい戦いになると予想していたものの立ち上がりから相手に自由にプレーさせなかった。14分、ハイプレスで相手のパスミスを誘発。回収したFW廣澤真穂(スポ4=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)が放ったシュートは対峙したDF千葉の足に当たる。これにはプロタゴニスタのゴールマウスを守ったGK近澤澪菜副将(スポ4=JFAアカデミー福島)も反応できずゴールイン。先制したア女に対し、プロの意地を見せたいプロタゴニスタは反撃を試みる。チームメイト同士であっても試合前日に初対面を迎えた選手もいたが、共にプレーする中で互いの息が合うようになった。すると38分に細かいパスワークからチャンスを作り堅守のア女ゴールを割った。スペインでプレーする選手が多く、スペインらしさのある崩しであった。

発起人の千葉。在学時、1年目はインカレ優勝を、3年生ではインカレ準優勝を達成しているア女のアイコン。卒業後は浦和レッズレディースに加入し、現在はスペイン2部でプレーしている 【早稲田スポーツ新聞会】

後半はア女が4得点を記録し、圧倒する展開となった。69分、廣澤の抜け出しを察知したMF宗形みなみ(スポ1=マイナビ仙台レディースユース)からロングフィードが渡りチャンスとなる。するとFW高橋雛(社4=兵庫・日ノ本学園)が中央レーンを猛然と駆け上がり、左サイドで持ち上がっていた廣澤からのクロスにワンタッチで合わせ、ゴールに流し込んだ。続いて81分、FW生田七彩(スポ1=岡山・作陽)のパスに高橋が抜け出し、そのままネットを揺らす。2点差をつけて迎えたアディショナルタイムにもア女の愚直な姿勢は変わらない。90分を過ぎてすぐ、生田が相手GKを務めたGK丸山翔子(スポ2=スフィーダ世田谷FCユース)までプレスをかけると、丸山のパスをカットし、そのままゴールに流し込む。再開直後、GK石田心菜(スポ2=大阪学芸)が相手の際どいロングシュートをセーブすると、そのCKをカウンターにつなげ、完全に抜け出した生田がそのスピードをもってして追う相手をあっという間に引き離し、丸山との1vs1を冷静に制した。ア女は5ー1の大勝を収めた。

2ゴールと大活躍した高橋。ゴールはもちろんだが、ボールホルダーに速く強く圧をかけてくる相手を足元の技術と軽快な身のこなしでいなし、キーパスを何本も通した。配信で解説を務めた元日本代表永里氏もその実力に舌を巻いていた 【早稲田スポーツ新聞会】

海外でプレーしている選手との対戦で刺激を受けた選手は多いはずだ。これから関カレでの激しい優勝争いや秋から始まる皇后杯に向けてもプロのレベルを体感し、それだけではなく勝利をつかんだことはプラスに働くだろう。そして特筆すべきはア女のバイタリティだ。前日に山梨学院大との強豪対決を終え、その日の夜に東京から宮城まで移動、そして午前中に被災地を訪問してから試合、というどう考えてもおかしな日程だったのにもかかわらず、それを全く感じさせないプレーぶりだった。90分間強度が落ちず走り続け、慣れない天然芝でプロ集団を圧倒した。ア女は過酷な日程を内容の濃い大勝で終えると共に、確かな自信をつけて女川を後にした。

プロタゴニスタのGKを45分間務めた近澤。「球際はもちろん、裏抜けのアクションやテンポのいい崩しでゴールに向かってくるところが手強かった」と対戦相手としてのア女を感じるいい機会になった 【早稲田スポーツ新聞会】

スターティングフォーメーション

【早稲田スポーツ新聞会】

以下コメント(一部囲み他社質問あり)

後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)
――今日スカウティングなども一切なく自分たちのサッカーを貫くという形だったと思いますが、サッカーだけの話で言うとその部分はいかがですか
サッカーだけで言うと仰る通りで、あちらも去年はやってると思うんですけど別に(普段から)組んでいるチームではないので自分たちのサッカーをとにかく丁寧にやりました。また、疲労があったので交代枠を撤廃してもらったのもこちらのお願いだったので、そのようなルールで始めました。
――各選手相手はヨーロッパでプレーしていますが、ここまで圧勝するという結果は予想されていましたか
いやーーーー。スコアですか、うちはずっと積み重ねていきているチームでそこは予想していなかったです。ここまで全員で来たので全員出したいという気持ちがあったのでそこは中の選手たちが頑張ってくれたことに感謝です。

MF宗形みなみ(スポ1=マイナビ仙台レディースユース)
――ヨーロッパでプレーする選手たちと試合してどうでしたか
プレッシャーのかけ方であったり、パスが普段体感することができないスピードでした。そこの部分、特にフィジカルの部分は自分のものにできたらと思います。
――影響や刺激は受けましたか
普段プレーするカテゴリーと違う中で自分が体感するものであったり、判断のスピードやフィジカルであたり負けしない部分というのは1番自分が痛感したところだと思います。
――宮城県出身としてここ女川でプレーすることは何か感慨深いものはありましたか
私が小学1年生の時に宮城で震災を経験したこともあったのでこの地でこのように復興のきっかけとして自分がプレーできたのは本当に良い経験だと思います。
――今後海外でプレーするというような夢は広がりましたか
私は元々海外でプレーしたいと思っていて、このようにいい刺激をもらったので自分もそこを目指していきたいと思っています。

GK近澤澪菜副将(スポ4=JFAアカデミー福島)
――今日は45分でしたがア女と対戦してみてどうでしたか
ア女と対戦してみて嫌だなと感じました。相手の立場になってア女の強みを体感してア女は手強い相手だなと感じました。
――具体的にはどのような点が手強かったですか
球際のところはもちろんですけど、裏抜けのアクションやテンポのいい崩しでゴールに向かってくるところが手強かったです。プロタゴニスタの方もすごく上手だったんですけど、そこはア女が自信を持っていいところだと思いました。
――今日チームとしてはかなり自信に繋がったと思いますが、次は2試合連続で強豪との対戦になりますが意気込みはありますか
まず、この週末3連戦をみんなで怪我しないようにコンディションを整えながら戦ってきて乗り越えることができました。この後も強豪相手が続きますがコンディションを整えるところは徹底して、これまでの関カレで痛感した課題の修正にフォーカスしていきたいです。
――2週間で5試合をこなしている中、監督もコンディションは大丈夫だろうということで起用したと聞いたんですけど、疲労の部分はどうですか
全然ないです。毎試合楽しみながらできてるのでいいコンディションを保ててると思います。

FW廣澤真穂(スポ4=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)
――80分ほど出場されたと思いますが、プロタゴニスタと対戦した率直な感想を聞かせてください
ヨーロッパの代表ということでフィジカル面で海外のレベルを学べたのはとても良かったです。
――連日で激しい試合になったと思いますけど、コンディションはどうですか
必死にケアして、みんなで協力して乗り越えられたのですごいいい経験になったと思います。
――ゴールを振り返っていただけますか
ボールを奪った流れでそのままゴールにいけると思い、キックフェイントを入れた時に相手の足が揃ったのが見えて、相手キーパーがれなだったんですけど、振ったら相手の足に当たったりして何かが起きるのはわかったので振って良かったと思います。
――コンディション的に苦しんだ期間は区切りついたと思いますが、また来週から帝京平成、東洋とまた強豪続きますけれど何か意気込みはありますか
試合数もまだ他の大学に比べて少なく、勝ち点もまだそこまで積み上げられていないので強い相手にしっかり勝つというところが早稲田の強さを見せるには必要だと思うので、ここからもう一度チーム一丸になって戦ったいきたいと思います。

DF千葉望愛(プロタゴニスタ、平26スポ卒=現スペイン・フェマルギン)
――試合を終えた感想を教えてください
ちょっと雨が降ったので心配したんですけど、その後は晴天に恵まれて良かったです。予想外でこんなに暑くなるとは思わなくて選手もバテてしまったんですけどすごく楽しんでできたと思います。そして、346人の方が見に来てくださったことに感謝しております。
――どのような気持ちでチャリティーマッチに望み、どのようなきっかけでこのチャリティーマッチを企画したのか教えてください
試合前の午前中に早稲田の学生と町へ行って女川の町がどのように今のこの形になったのか改めて知った上で試合に臨むことができました。みんなで「女川の町はもっと発信していかなければいけないよね」と話して試合に臨みました。
――女川の町を見た中で感じたことや得たことはありましたか
震災3日後にはもう道路が復旧して、数ヶ月後にはもう町が復興していたということを聞いて、いまもすごい綺麗な町で、今後の震災に備えていてもっとこの町を知ってもらいたいなと思いました。
――来年以降もこの場所でやっていきたい気持ちはありますか
そうですね。本当にいい町ですし、今回女川の商店街で出店をしていたたくさんに方にまた来てくださいと声をかけてもらったので、毎年来れるように頑張りたいと思います。
――今日は出身大学である早稲田との試合でしたが、後輩と試合をしてみてどのような印象を持ちましたか
早稲田の学生さんたちは昨日2試合してきて不利な状態だったんですけど、私たちのために来てくれて、色々な縁があって試合できたのですごく良かったです。
――対戦した中で特に印象に残った選手はいますか
試合前にア女の10番の選手、9番の選手の技術もあり力強くて印象に残っています。
――これから彼女たちはインカレ2連覇に向かってチャレンジしていきますが、何か激励のメッセージはありますか
疲れている中でも試合の中で声を掛け合っていてコミュニケーションを選手同士で取り合って、そしてWEリーグなどの色々な試合を見て勉強して挑戦し続けてほしいです。
――前回チャリティーマッチを初めてやってみて反省とか収穫とかたくさんあったと思うのですがどのように活かしましたか。
去年は何も分からない状態でとりあえず開催できたというか試合ができた状態だったのですが、今回は去年やったおかげで色々な繋がりができて去年よりもはるかに大きく開催ができたと思います。
――アメリカでプレーしてる選手もいますが今後に向けてはさらに大きくしていきたいと思っていますか
そうですね。(海外でプレーする日本人選手が)本当はもっと世界中にいるのでやりたいんですけれど、シーズンだったり、日本のリーグの関係もあるのでそのようなところを考えなければいけないです。
――WEリーグではリーグとして社会貢献という活動も行っています。そこで千葉選手のように自発的に社会貢献を行うことは素晴らしいと思うんですけれど、そのような活動がもっと広がればいいと思っています。そこでどのように広がっていけば良いでしょうか。WEリーグの選手たちはクラブにやらされている感もあります。
チームに所属している以上チームとの関係があると思うのでやりたくてもできない選手もいると思いますし、そこは選手とクラブ、クラブとリーグが連携していく必要があると思います。
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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