【特集記事/後編】届けたいのはワクワク感。大和シルフィード・西山春香が日産スタジアム開催に期するもの

大和シルフィード
チーム・協会

【大和シルフィード】

【大和シルフィード】

文:akira(@akiras21_)

「初めて聞いたときはスケールの大きさに衝撃を受けて、唖然としたのを覚えています。チームメイトも『えっ、日産スタジアムってやばくない!?』という反応でした(笑)」

プレナスなでしこリーグ2部に所属する大和シルフィードのDF西山春香は、5月28日(土)のヴィアティン三重レディース戦が日産スタジアムで行われることが決まった時のことをこう述懐した。

大和シルフィードU-15出身、トップチーム創設メンバーでもある。
彼女はいつもシルフィードと共に歩んできた。県リーグから始まり、なでしこチャレンジリーグ参入戦、そして1部からの降格をすべて経験。
2022シーズンはキャプテンとして、最終ラインからチームを鼓舞している。
「シルフィードはいろいろな想いが重なって出来ているクラブなので、来季は必ず1部昇格を果たさなければと思っています。2021シーズンはなでしこ1部で2勝しか挙げられませんでしたが、それでもサポーターの方々からは温かいお言葉を掛けていただき、たくさんの人々から愛されているチームだと強く感じました。コロナ禍では声を出しての応援はできませんが、それでもお客様の拍手はピッチ上の選手たちにも響いています」

U-15、そしてトップチームの創設メンバーに。伝えたいのは女子サッカーの魅力。

西山のサッカー人生は小学生の頃にスタートした。
当時は女子サッカーがあまり普及しておらず、男子チームに所属。
その後大和シルフィードU-15、伊勢原高校を経て、2014年に新設されたシルフィードのトップチームへ加入した。

「2011年のFIFA女子ワールドカップで日本代表が優勝し、女子サッカー人口が増え、環境も良くなってきてはいますが、選手やクラブの数はまだまだ多くないし発展の余地がある。“女の子がサッカー?”と思われがちなことは少なくないですけど、サッカーを通じて女の子にスポーツの楽しさを伝えていきたいという想いがあります」

ひとりの女性アスリートとして、スポーツの魅力を伝える選手に。
「プレー・アカデミー with 大坂なおみ」から助成を受けてシルフィードが実施する「ガールズエンパワーメントプロジェクト」のコンセプトとも一致する想いだ。
そのうえで、日産スタジアムでの試合をその足掛かりにしたいと西山は語る。
「シルフィードが所属するなでしこ2部の上には1部、そしてWEリーグとカテゴリがありますが、今のシルフィードを観て『WEリーグよりも面白い』と感じていただけるような、ワクワクする試合にしたいです。今の私たちならそれができると思っていますし、お客様に『女子サッカーって楽しいな、また観に行きたいな』と思っていただけたら嬉しいですね」

【大和シルフィード】

憧れの日産スタジアム。シルフィードの攻撃的なサッカーを支えるキーワードとは。

今季は大和ゆとりの森公園大規模多目的スポーツ広場、大和なでしこスタジアムの両会場で公式戦を戦ってきた。
そしてシーズンの折り返し地点となる第10節、世界規模の大会の数々で決勝戦が行われてきた日産スタジアムでの一戦が行われる。
「小さい頃から両親と一緒にたくさんの試合を観てきたスタジアム。そこで試合ができるとは思っていませんでした。Jリーグの試合が行われるスタジアムを含め、過去いろいろな会場で試合をしてきましたが、日産スタジアムは芝の状態が特に気になりますね」

なでしこ1部、そしてWEリーグ参入を目指すシルフィード。
近年はGKからのビルドアップという最後列からの攻撃にチャレンジしており、高橋和幸監督が今季就任してからも基本は継続しつつ、細やかな部分で意識の改善を図っている。
「今季は以前と比べてミスが減ってきていて、得点力が高いチームになりました。特に前半の早い時間帯に得点できると、試合運びの面で余裕が生まれますし、チャレンジしようという気持ちにもなれる。ディフェンダーとしてはとても助かります」
そう語る西山は、チームの注目ポイントに「雑草魂」を挙げた。
これは普段からチームメイトとよく口にする言葉で、全員がハードワークをすることや泥臭くゴールを狙うことなど、闘志を剥き出しにして体を張ったプレーを指している。
「より強く、より熱く、より私たちらしく」というフレーズと並び、みんなでチームを強くしていきたいという想いを束ねるキーワードとなっているようだ。

【大和シルフィード】

伝説への第一歩。シルフィード史上に残るドラマをその目で。

「『遠くのメッシより近くの春香』といいますか。クラブとファン・サポーターの親近感は大切にしていきたいです。先日のJFAアカデミー福島との試合に駆けつけてくださったサポーターの方が、『7年シルフィードを追いかけてきたけど、感動して涙出ちゃったよ』というお言葉を掛けてくださいました。試合結果は奮いませんでしたが、あの試合が私の人生のベストゲームです」
こう語るのは、大和シルフィードの大多和亮介社長。
稀代の熱戦を目の当たりにした大多和社長は、ギリギリまで悩んでいたという日産スタジアム開催のチケット代を2000円にすると決断した。
「男子とか女子とか関係なく、カテゴリーも関係ない魅力を生み出せる力が女子サッカーやシルフィードの選手たちにはある。その価値に見合うものをお客様に提供すべくクラブ一体となって向き合いたい。シルフィードの仲間を増やす一日、未来へのストーリーの起点になる一日を皆様と一緒に迎えられたらと思います」

そして、西山はピッチから力強く想いを体現する。
「なでしこリーグが初めて日産スタジアムで行う試合。たくさんの方々に私たちの生の姿を見てほしいです。そして、リーグ優勝を狙う上でも大切な試合になるので、チームみんなで気持ちを重ねて臨みたいと思います。応援よろしくお願いします」

いつかは小野寺志保さんのように、シルフィードの“レジェンド”と呼ばれる存在になりたい――そう語った次代のバンディエーラ。
活力みなぎるビタミンオレンジの未来を背負い、西山春香は初夏の日産スタジアムで伝統のアームバンドを巻く。

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著者プロフィール

なでしこリーグ1部所属の女子サッカークラブ。 1998年に神奈川県大和市で設立、2011年女子ワールドカップ優勝メンバーである川澄奈穂美選手や上尾辺めぐみ選手らを輩出してきた。 現在は、WEリーグへの参入を目指しクラブのプロ化を進めている。 神奈川県SDGs社会的インパクト実証事業など、ジェンダーや女性活躍といったテーマを中心に、スポーツを通じた社会課題の解決を事業の中心にすえながら様々な活動を重ねている。

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