【特集記事/前編】史上初、そしてその先へ。大和シルフィードが日産スタジアムで試合をする理由

大和シルフィード
チーム・協会

【大和シルフィード】

女子サッカーの歴史に新たな1ページが加わる。

【大和シルフィード】

文:akira(@akiras21_)

プレナスなでしこリーグ2部に所属する大和シルフィードが、5月28日(土)に“なでしこリーグ史上初”の試合を行う。
FIFAワールドカップ日韓大会、ラグビーワールドカップ、東京オリンピック(2021)のメイン会場に選ばれた日産スタジアムで開催されるのだ。
神奈川県大和市をホームタウンとする大和シルフィードが、なぜ横浜で試合をすることになったのか?
「なでしこ初の日産スタジアム開催」が実現するまでの経緯、そして日産自動車とのパートナーシップについて、大和シルフィードの大多和亮介社長に話を聞いた。

大和のクラブが日産スタジアムで公式戦?その理由とWEリーグ参入要件

「日産スタジアムでの開催を進められることは、大変光栄なこと」
大多和社長の言葉には、WEリーグ参入を目指すクラブにとって避けては通れない課題が関係している。

WEリーグ参入要件の一つにはスタジアムが含まれており、照明施設や観客席など設備面での充実が求められるほか、全ホームゲームのうち80%以上(※2022年現在の目安は9〜11試合)をWEリーグの基準に適したスタジアムで開催する必要がある。

シルフィードのホームである大和なでしこスタジアムはこの要件を満たしていないため、シルフィードは大和市のみならず神奈川県とも連携して調整を進めている。
そんな中で、2022年の1月にシルフィードは日産自動車とのパートナーシップを締結。

日産自動車は「かながわ女性の活躍応援団」の一員で、神奈川県と協働して女性の社会進出や活躍推進に取り組む中、同じコンセプトを持つシルフィードとの関係性が生まれた。
日産自動車は横浜国際総合競技場(日産スタジアム)の命名権契約を結んでいるが、その契約の一部としてスタジアムを優先利用できる日程が割り当てられている。
これを活用したい日産自動車と、ジェンダーへの理解促進に対しスポーツを通じて価値提供できるシルフィードとで需要と供給が一致した。
そんな折、日産スタジアムの割り当てがシルフィードの日程と偶然重なったと日産自動車から打診を受け、プロジェクトは猛烈なスピードで進行。
当初はWEリーグ参入要件の充足のためにとを想定していたが、一転して今シーズンの開催が決定。4月上旬の発表に至った。

【大和シルフィード】

日産自動車に対して大和シルフィードが提供する価値

日産自動車とシルフィードによるパートナーシップの一環として、シルフィードの日産スタジアム開催のほか、日産自動車の社内研修「NISSAN ジェンダートーク powered by 大和シルフィード」が社内向けに行われている。
第1回のテーマは「スポーツと性の多様性(LGBTQ)」。スポーツとジェンダーの専門家である野口亜弥さん、LGBTQの当事者である現役サッカー選手の下山田志帆選手、シルフィードからは濱本まりん選手や、元選手で現在はクラブスタッフを務める橋本紀代子さんらが参加し、本質的な質問が飛び交う有意義なセッションとなった。

今後も様々なトピックを複数回にわたって取り上げる予定で、大和シルフィードとしては「スポーツ」という切り口を大切にしていきたいと大多和社長は語る。
「日産自動車様はJリーグの横浜F・マリノスを長らく支援されていますが、シルフィードは女子サッカークラブとしてF・マリノスとはまた違った価値を提供していきたい。
今回の日産スタジアム開催をそのきっかけにできればと思っています。
たとえば、5月28日のヴィアティン三重レディース戦のほかに、『プレー・アカデミー with 大坂なおみ』の助成を受けてシルフィードが開催する『ガールズエンパワーメントプロジェクト』でも日産スタジアムを使わせていただく予定です」

日産スタジアム開催は「きっかけ」。みんなでつくるシルフィードの未来図

大多和社長が思い描く、F・マリノスとは違ったシルフィードの価値。そのカギは、ファンが抱くクラブへの親近感にあるという。
「プロスポーツにおいて観客数はとても大切ですが、いわゆるマイナー競技が持続的に発展するための指標として、数だけが全てだとは思っていません。足を運んでくださる方々がどんな人たちなのか、そしてどんな楽しさを感じているのか。そこに“Jリーグや他の競技にはないもの、シルフィードにしかないもの”を求めていきたい。これを前提に、当日はいい空間を創っていきたいです」

大多和社長は「良かった点もご不満も関係なくどんなフィードバックでも頂きたい」という。
それはクラブの成長へと繋がっていくだけでなく、観客一人ひとりがシルフィードに関心を持ち、ゆくゆくはクラブの仲間に加わるきっかけになるからだ。
新たなシルフィードの価値を一緒に創っていきたい…だからこそ、大多和社長は“クラブへの親近感”を重要視している。

「F・マリノスのスタッフだった頃から思っていたことですが、日産スタジアムは日本一のスタジアムであり、そこで行われるF・マリノスの試合を支えるあらゆる人々も素晴らしいです。ボランティアの方々、警備会社の方々、演出のサポートメンバー、そしてステークホルダーの多さなど、総じてクオリティが高い。F・マリノスからシルフィードに移って改めて感じています。
だからこそ、今回の日産スタジアム開催はシルフィードにとって、あらゆる面でチャレンジになります。
ここでの経験を大和に持ち帰って、シーズン終盤となる9月、10月のリーグ終盤となるホームゲームやその先に繋げていきたい。
5月28日は日産スタジアムに足を運んでくださる皆様と一緒に空間を創って、多くの方々がシルフィードの輪に加わっていただけるような日にしたいです。
競技面での強さだけでなく、関わる人々のエンゲージメントの高さが特徴的なクラブになりたい。
そうした熱量溢れる方々に、今後シルフィードを自分ごととして“使って”、”楽しんで”いただけたらいいですね」

【大和シルフィード】

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著者プロフィール

なでしこリーグ1部所属の女子サッカークラブ。 1998年に神奈川県大和市で設立、2011年女子ワールドカップ優勝メンバーである川澄奈穂美選手や上尾辺めぐみ選手らを輩出してきた。 現在は、WEリーグへの参入を目指しクラブのプロ化を進めている。 神奈川県SDGs社会的インパクト実証事業など、ジェンダーや女性活躍といったテーマを中心に、スポーツを通じた社会課題の解決を事業の中心にすえながら様々な活動を重ねている。

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