ファンしか知らない躍進のキーマン高橋拓朗―折れない翼に託す夢
【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】
その躍進を支えるキーマンは誰かと問えば、どんな名前が飛び交うだろう。
過去のワールドカップで活躍した選手を挙げる声もあるだろう。
試合の度にまばゆく輝き話題を集める若手選手を挙げる声もあるだろう。
でも、オレンジアーミーは知っている。
彼らが試合で活躍するために不可欠な存在を。
それは、今季より『ウィングス』と名付けられた、出場メンバー表に名前のない選手たちだ。
その一人、高橋拓朗選手にインタビューしたのは、春服に袖を通したくなる陽気の日。
『23の質問』を通して、感度の高い高橋選手のピールオフを試みた。
試合に出るために小さな成功を重ねる
すごい良いです。
もちろんチームの成績もいいというのもありますし、それに伴って練習の質や雰囲気もすごく良いですし、試合に出ていないメンバーも絶対に腐ることはないですし、(ずっと出場機会のなかった)松井(丈典選手)がポンとメンバーに上がったら、みんなで「行けよ!」と応援しているし、すごく良い雰囲気で練習ができています。
2.今の目標、日々の課題は何ですか?
目標は完全に「試合に出ること」です。
日々の課題は「試合に出る」という大きな目標に対して、小っちゃな一つ一つの成功をしていくこと。
例えば、本当に簡単なことで言うと昨日できなかったことを練習で見直して「こういう風にしたら」というような、小っちゃい小っちゃい成功を重ねていこうかなと思っています。
3.試合に出場するときにギアを上げたりしますか?
身体の準備はずっと一緒です。
例えば、自分の場合は体重の増減はほとんどなく、ずっと一定の体重です。
本当はもう少し欲しいですけど、現状でのベスト体重は基本的に一年間変わらないです。
もし身体の気になるところがあれば、すぐにそれに対応する準備は常にできています。
高橋拓朗 (たかはしたくろう)/ 1991年12月26日生まれ(30歳)/群馬県出身/身長182cm体重86kg/明和県央高校⇒中央大学⇒クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(2014年入団)/ポジションはセンター 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】
出場機会の少ない中で
ここ数年はリザーブで出ることが多かったんですけれど、別府でキューデンヴォルテクスと試合をしたときにはスタートメンバーに選ばれていて。それで自分自身も結構滾って(たぎって)いたんですよね。
トイメン*1が確か大きめの外国人選手で、前半のラストワンプレーの(相手ボールの)ラインアウトから外側に回されそうになったときに、思い切りよく前に出てタックルに入って。
バシンと一発では倒せなかったんですけど、ドンピシャで入って、相手がオフロード*2しようとしたボールがコロコロとタッチラインを出て、前半が終わりました。この前半を終わらせたというタックルは、自分の中ではセンターの役割としてすごく良かったですね。
―それまではどのような展開だったのですか?
相手チームはオフロードが多かったんです。一発で倒さないとポンポンと繋がれちゃうみたいな展開で抜かれることもありました。
あの試合は、精神的にも身体的にも、どっちかが偏るわけじゃなくて、うまい感じで試合に持って行けたときだったんですよね。
*1:自分が対峙することになる、相手チームの同じポジションの選手のこと。
*2:タックルを受けながらのパスのこと。
5.プレシーズンマッチは高橋選手にとってはどのような試合ですか?
プレシーズンマッチは、試合に出られていないウイングスにとっては大舞台かつ勝負の試合です。
以前に近藤(英人選手)の記事の中で「プレシーズンマッチの仕上がりがあんまり良くなかったから、そこでアピールできなかった」というような発言があったんですけれど、多分、みんなそういう想いで皆やっていると思うんですよね。「プレシーズンマッチで強く印象付けて、試合に、開幕戦に」と狙っていると思うんです。
キューデンヴォルテクス戦は特にスタートメンバーということもあったし、「そこでやるしかない」と滾っていたんですよね。
6.試合でのパフォーマンスには、チームが見てくれているという信頼関係も影響していますか?
スピアーズには『Honest Feedback』といって、選手間でも、コーチと選手間でも、正直なフィードバックをしあうという文化があるんです。
僕は今まで「見てもらっているだろう」というスタンスだったんですよね。「これだけ頑張っているんだから、きっと見ていてくれているだろう」と思っている中で試合にでられないと、「あれ?なんでだろう?自分はこれだけやっているのに」と思っちゃっていたんですけれど、最近はフラン(・ルディケ ヘッドコーチ)に積極的に訊きに行くようにしています。
―高橋選手にとってHonest Feedbackの影響はどのようなものですか?
「試合に出るようになるために何が必要か」、「今の自分に何を求めているのか」、「センターだったらこういうことをしてほしい」というのを全部言ってもらえる、正直なことを自分に言ってくれる環境があって、試合に出られないときにも監督やコーチは個人個人、一人一人を見ていてくれているので、訊きに行けば「何が足りないか」を絶対に教えてくれる。
そういうチームだからこそ、試合に出られていない僕らも、貢献度は消えずに持ち続けていられます。
世代交代が進むチーム内において若い世代の選手たちとも、経験豊富なベテラン選手たちとも、同じようにコミュニケーションが取れる存在(一番右が高橋選手) 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】
「こーが!行け!!」の瞬間に迫る
あのときはラインアウトからバックスで大きく外に振るサインが出ていて、自分はデコイ*ランナーとして縦に走っていました。自分がデコイとしての役割を果たして、こちらに相手が引き付けられていたので、「こっちに相手が来たってことは、絶対に洸雅が空いてる!」と思ってパッと横を見たら、洸雅の前がすごく空いているのが見えて。
洸雅が良いランナーだということは練習していて十分に分かっていたので、「迷うくらいだったら絶対に洸雅が行った方が良い」と頭の中で瞬間的に感じて、「洸雅、行け」って言いました。「行け行け行け」って。
自分で行けよ、もうパスとか考えるなよ、って。
洸雅の今までのパフォーマンスとかプレーとかを見てきて、ランニングが強みであることは実感していたので、洸雅なら絶対に行けると思いました。
パスとか余計なことを考えないで思いっきり行ってほしいなと思って、「行け!!」って言いました。
*:パスを受けると見せかけて、おとりとなって走る選手。ダミーランナー。
8.新人選手を迎え入れるときには何か意識していますか?
オフフィールドでは、なるべくラグビーのことだけじゃなくて、私生活の面も話すようにしています。
もちろん(プレーに関する)サインのことを訊かれたら、「自分は試合に出られていないから知らないことがある」ということがないように常に試合に出られる準備をしておいて、先輩としてすぐに何でも教えられるようにはしています。
9.先輩から信頼され、後輩から慕われる立場として心がけていることは?
まず、ラグビー選手として、練習に対して真摯に向き合おうと思っています。
もともと加減ができなくて、ゼロか百か、みたいなスタイルなので、練習でちょっと手を抜くというようなことができないんです。ちょっと怪我しそうとか、ちょっと調子が悪いからとか、そう思って加減することができないんですよね。
練習にも全力で取り組む姿を後輩が見てくれたら嬉しいですし、ベテランだから体力が落ちて走れないとは絶対に思われたくないので、ベテラン感は出したくないと思っています。
中堅と捉えると、下の世代と上の世代のパイプ、橋渡し、というものでもないのですが、下の世代が下だけで固まることのないように、結構無理やりにでも絡んで話を振って、会話なんかで(色んな世代が)混ざるようにしています。
2021年11月13日に行われたプレシーズンマッチ 東芝ブレイブルーパス東京戦でタックルにいく根塚選手とそのサポートに入る高橋選手 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】
成績とともにチームに起きた変化
小学校の頃に、地元の群馬で開催された試合を観戦したときに応援するためにもらったスピアーズのフラッグを実家の自分の部屋に飾ってあるんです。小学生だったので、好きとか、ファンとか、そのチームを応援したいとか、そういうのじゃなくて、「トップリーグのチームのグッズをもらった!やった!」くらいの感覚で部屋に飾っていたんですよね。
それで、スピアーズに決まって「あの旗のチームだ」というのが唯一の印象です。
群馬の地元チームの試合も観に行っていましたけれど、そのフラッグの他にはトップリーグのチームのグッズは何も持っていないんです。
そのフラッグは今でも実家の自分の部屋の壁に貼ってあります。
11.入団直後のスピアーズの印象は?
みんな大人だな、トップの選手だな、と思いました。
チームに先輩や知り合いが誰もいなかったので、結構不安な状態のまま入団して、最初は距離を感じていました。
今思えばそんなことはなかったんですけれど、不安が勝り過ぎて、勝手に威圧感やオーラのようなものを感じていました。
12.在籍中に一番変化したことは?
自分が感じる中では、チームの雰囲気が一番変わりましたね。
最初はチームの中に話したことのない先輩もいましたが、今のチームでそういうのは無いと思うんですよね。ポジションが遠すぎてっていうのはあるのかな…でも、今はミニグループ*の中でまず話すこともあるし、上の世代の人も近い年代の先輩も、結構みんな話していると思います。
休日に遊びに行くとしても同期くらいしかなかったけど、ここ数年で入団している若手を見ていると、正直、ちょっとうらやましいですね。
―そういう変化は特定の時期に起きたものですか?徐々に変わっていったのですか?
そうですね・・・成績とリンクしている気がします。
フランの就任当初からすぐに結果が出たわけではなくて・・・、海外選手が入団したりという変化はありましたが、ラグビーって補強だけでそんなに変わらないし、誰々を呼んだから急に強くなるということはあまりないと思うんですよね。
フランが来たときには12位、11位で始まって、そこから7位と成績が上がっていく中で、チームの雰囲気がすごく良くなってきました。
いい意味で上下関係がないと思うし、下からバシバシいえるような環境というか空気感は、全然あります。ラグビーはラグビーでしっかりやって、グラウンドを離れたら離れたで、和気あいあいと楽しくやっているなと思います。
―それぞれが役割を果たして、そこに信頼関係が成立しているということでしょうか?
この役割というのも、「お前はリーダーだからこれをやれ」とか「このくらいの年齢なんだからこれをやれ」とか、そういうことを言われているわけじゃなくて、各々が自主的にやって、自然とそういう良い雰囲気になっているんだと思います。
*:選手やコーチを複数のグループに分けて様々な対決を行う、チームアクティビティの一つ。
13.プレーの面での変化はありましたか?
チーム的には、スラッシーさん(田邉コーチ)が来てから変わりましたね。
それまでの「守って守って」というイメージから、「どこからでも攻撃しよう」という『アタッキングマインド』を常に持っています。「自陣だから」と決まりごとのように「キックして何とかエグジットする」ということではなくて、色んな事に対して常々「こういうオブションもあるよね」という意識は植え付けられています。
それが変わって今のスピアーズのラグビーに反映されているのかなと思いますね。
我ながら良いラグビーだと思います。
―パスのスキルが高いですよね。
本当に上手ですよね。フォワードでも関係ない(パスさばき)ですもんね。
―練習でも違いがあるのでしょうか?
(広報・岩爪:バックスのユニット練習が一気に面白くなったと感じます。スピード感、テクニック、声の出し方、バリエーション、、、観ていてもとても面白いです。)
そうですね、(練習でも)ただの3対2や2対1ではなくて、考えないとできないラグビー。それがスピアーズのラグビーを「面白い」と言ってもらえているのだと思います。
―ファンクラブ有料会員を対象にした公開練習(※現在は中断中)も好評ですね。
スラッシーさんは、話しかけるとかではなくて、わざとファンの近くまで行って目の前で練習するような、粋な計らいをするんです。
きっと群馬という土地がそういうかっこよさを育てたんでしょうね(笑)。
(田邉コーチと高橋選手は群馬県に縁があるという共通点があります。)
プライベートも感度高く
「トレーニングの重要性は2-3割で、残りを占める食事や睡眠を重視すべき」というトレーニング論がありますが、僕も身体作りにおいては食事が大事だと思っています。
怪我もある程度は繋がっているんじゃないかなと思うんです。僕は人生で一度も肉離れを起こしたことがないのですが、食にこだわったり、普通の人よりも水とかも意識したりしているからなのかな、と勝手に思っています。
肉を食べる、食べないじゃなくて、質のいいものを食べていれば、というのがあると思うんです。
日々身体と向き合っているので、もしも少し痛みを感じたり不調になったりといった小さな変化があれば、すぐに気が付いて、それに対してアプローチするということはできていると思います。
15.最近作ったヒット料理は何ですか?
昨日、鯛の唐揚げを作ったんですけれど、めちゃくちゃ旨かったですね。びっくりしちゃいました。
嫁よりも自分の方が帰りが早いときは作っているんです。昨日も「作って置いておこう」と思って、最初は漬け丼にしようとしていました。お酒とみりんを鍋に入れて火にかけてアルコールを飛ばしたあとに、しょうゆと昆布とおろしにんにくを入れて作ったタレに鯛を漬け込んでいるときに、「あたったらいやだな」とふと思って。急遽、漬け込んだ状態から、ただ片栗粉をまぶして唐揚げにしたら、それが奇跡的にめちゃくちゃ旨くできました。
ぜひ作ってみてください!
あとはムニエル。その辺が最近のヒット作です。
―間違いなさそうなレシピですね。
―数日前に作ってらっしゃった太刀魚の蒲焼も天才の発想だなと思いました!
あれも旨かったです!
ちょっと鰻っぽいんですよ。叩いて切ったらひつまぶし風になって。出汁は用意しなかったんですけれど。
そういえば、確かにあれもおいしかったですね、我ながら。
あれもヒット料理かな。
16.最近買ったお気に入りアイテムは何ですか?
洋服の方が良いのかな…。(と言いながら探しに行ってくださる。)
―ジャンルに関係なく、お気に入りを教えてください
ちょっと見てほしいんですけど、激ハマりしていて、めちゃめちゃあるんですよ!
クラフトビールです。(ラベルを見せながら)ラベルをこんな感じで全部集めていて。
味だけじゃなくて、デザインでも楽しめて、保存もできるというところが、やっぱりなんかいいですよね。
良い店を見つけたんです。ラベルを見てジャケ買いをしてもあまりハズレがないんですけれど、知識の多い店長に好みを伝えるとピッタリのものを教えてくれるんですよ。送料もぎりぎりまで安くしてくれます。
17.高橋選手だけが気が付いているスピアーズの良いところはありますか?
そんなとこあるんですか?(笑)いや、ないんじゃないかな。僕だけが気が付いている・・・。
僕がこういう(植物性食品中心の)食生活をしているので、栄養士さんが僕だけ献立を変えてくれるというのは、僕だけが気が付いているのかなと思います。
―チームミールにもベジフードが取り入れられるようになっていますね。
―仲間の取り組みに関心を持って試そうとする、象徴的な出来事だと感じます。
そういえば、たまたま今日のチームミールでも炒め物に大豆ミートが入っていましたね。
僕の食生活はみんなも知っていることなので、「これが噂の」という感じで取り入れやすいのかもしれませんね。
18.ベジンジャーズ*の仲間は高橋選手にとってどんな存在ですか?
もちろん、それぞれの競技のトップ選手なんですけれど、簡単に言うと、世間でいうところの「意識高い系」と捉えられるような、意識、アンテナを本当にすごい色んな所に張っている人たちです。
日々食べているものと向き合うことができた、食生活を考え直せた、というのが大きいです。
身体が資本の僕らにとって、日常的に食べる者に関する色んな情報を教えてくれて、アスリートとしての気持ちの持ち方やトップ選手としての悩みについて聞いたり喋ったりしている中で、自分の中でも色々と気付かせてくれます。
友達みたいでもありますが、すごいリスペクトがあります。同じ選手、アスリートとしてというより、人としてリスペクトしている人たちです。
*:植物由来の食品を中心とした食生活を送るアスリートが競技の枠を超えて集まったチーム。
19.高橋選手が一番影響を受けた人は?
え〜、誰だろう・・・。
嫁ですかね。
結婚するパートナーは、「生涯の伴侶」というくらいなので、ただの恋人の延長線上ではなくて、常にお互いに成長させ合える関係じゃないと違うんじゃないかという気がするんです。
そういった意味で、妻は自分に考えさせてくれる機会をたくさんくれる人です。
すごい考えたり頭を使っていて、自分がいかに全然物事を考えられていないのかを感じさせてくれるので、尊敬しています。
些細な話をしながら、日々影響を受けていますね。
―SNSでの印象ですが、感度の高いカップルですよね。
そうありたいですね。
選手としてというのは、いつか限界があると思いますが、人としては常にアップデートして成長し続けていたいです。
もちろん奥さんといえども赤の他人なので、やっぱり性格とか考え方とか全然違うところはいっぱいありますが、そこで色んな話をしています。
奥さんのことは、かわいいというより、「本当にかっけーな」と思います。
2021年に行った葛西臨海公園東なぎさクリーン作戦での集合写真。高橋選手は、チームの有志メンバーで行うビーチクリーン活動にも積極的に参加。食事を気にするようになってから、環境問題についても気に掛けるようになったと話す。 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】
グラウンドに立って、滾り続けろ
大学4年生のときに副キャプテンだったんです。
2年生からずっと当たり前のように試合に出ていて、「スタメンは俺だ」と思い続けていたんですけれど、4年生のシーズン開幕前に腰をけがして。
―つらいタイミングでのけがでしたね。
やっぱりどうしてもパフォーマンス的には他の4年生や後輩の方が良いのは薄々感じていたんですけれど、大学最後のシーズンだし無理してでもやりたいというのと、ずっと出場していたこととバイスキャプテンをやらせてもらっていたというプライドみたいなものも、正直なところ自分の中ではあって。
そのときは、酒井(宏之)さんが4年生のときから新しくヘッドコーチに就任したタイミングでした。酒井さんは、とんでもないエンターテイナーで、すごくチームを良くしてくれて、(出身の)中央大学はいつも中位にいたチームなのに2位でリーグ戦を終えることができました。
新任直後に、ずっと出場していた副キャプテンの僕を外すのは監督にとっても心が痛かったと思うし、僕にメンバーから外すことを伝えるときは心情的に結構きつかったと思うんですよ。他の指導者だったら、メンバー外にしたことをうやむやにして、ごまかしていたかもしれないと思いますが、酒井さんも、「Honest Feedback」をしてくれたんです。
「パフォーマンスの面でこういうところがこうだから」とか「腰の状態が」とか、出場させない理由をちゃんと言ってくれて、「滾り続けとけ」と言われました。
―先日もInstagramにアップされていた言葉ですね。
「滾る」という言葉が自分ぽいなと思って、自分の中では刺さりました。性格もプレースタイルも器用な方じゃないので。
滾り続けていたら、いつかチャンスがくるだろうなと思って練習していて、最後の大学選手権のときは試合に復帰して、という風に大学は終わったんですけれど。
僕、絶対に腐らないんですよ。練習も絶対にさぼったりしないので。
そういう今の気持ちを支えてくれているのかなと思います。
―いいメッセージですね。
プロレスラーの中邑真輔選手が「滾ろうぜ」ということをよく言ってるんです。
それを僕に言ってきたんですよね。「中邑選手の試合を観とけ」とも言われました。
「お前はいつか絶対に試合に出られるから、ずっと滾り続けろよ」と鼓舞してくれたから、けがにも負けなかったし、腐らずに練習にもしっかりと取り組めてたのかな、だから今の自分があるのかな、と思います。
今も試合に全然出られなくて似たような境遇が長く続いている中でも、この言葉が刺さっているからなのかな、と思い出しました。
酒井さんありがとうございます。
21.仲間の言葉で一番印象的な言葉は何ですか?
八年間もいると色んな話をするので、パッと出てこないですね・・・。
あ、でも!ああ、あれだ!!
引退した健さん(田中健太さん、2019年度退団)と結構仲良くさせてもらっていて。健さんが引退する前はなかなか試合に出られなくて、色々もがいて葛藤して、というところで一緒にやっていたんです。
スピアーズでは退団する人に対して(餞別の)言葉を送る役があって、健さんのときは僕が言わせてもらったんですが、餞別の言葉を送った日に健さんからメッセージがきました。
「なかなか試合に出れなくて悔しいと思うし、拓朗の気持ちもわかるけどあと先考えず拓朗らしくやるべきことやってれば大丈夫!あとは痛くても辛くてもグランドに立ち続けること。全身テーピングのボロボロのカッコ悪い姿であろうが、なんだろうが今しか出来ないんだから悔いないように。拓朗には必ずチャンスは来るから!」
と、自分に自信と勇気を持たせてくれるようなことを言ってくれました。
「拓朗がメンバーに入ったら必ず飛んで行くと。オレを感動させてくれ」
とも言ってくれました。
健さんは、弱い姿を見せたくない人だというのは分かっていたので、健さんはもうスピアーズではラグビーはできないから、自分は健さんの分も、その想いを、そのソウルを、田中健太イズムを受け継いで、頑張ろうと思いました。
それが残っています。
2019年度退団セレモニーでも現役選手を代表して田中さんへ挨拶をした高橋選手 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】
「誇りの広告塔」として
リーグワンになったとはいえ、全員がプロ選手なわけではないので、入社当時から応援してくれている人もいれば、異動してからも同じ部署のクマ(大熊克哉選手)と一緒に応援してくれる社員の人もいて、ラグビーの話を振ってくれたり、試合の翌週にはその内容を話題にしてくれたりします。
スピアーズでは、「誇りの広告塔になろう」と掲げているのですが、会社の人たちと会話している中では、そうなれているのかなと感じます。
23.スピアーズのラグビーの一番の魅力は何だと思いますか?
ここ数年、攻撃力という面では、どんどん上がっていると思います。
今までは僅差で勝利するようなラグビーが多かったと思いますが、「楽しいラグビー」と言ってもらえるようになったのは、アタッキングマインドがフォワード、バックス関係なくチーム全員に植え付けられているからだと思うし、どこからでも得点が取れるチームになっているので、それは魅力なのかなと思います。
あと、個人的にはディフェンスも好きなので、スピアーズの代名詞のような前に出るディフェンスも魅力だと思います。
そこからターンオーバーしてチャンスに変えてトライまで持っていくという場面も結構あるので、ディフェンスも魅力かなと思います。
高橋選手は今日もグラウンドに立ち、走り続ける 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】
SNSでのDMを見て、ダイレクトに応援の気持ちを感じているという高橋選手。
一つずつハードルを乗り越えて、リーグワンのグラウンドに立ち、滾らせて活躍する姿を見たい。スピアーズがさらに強くなるために、今日も全力で練習しているであろう高橋選手を応援し続けようと改めて誓った日になった。
文:クボタスピアーズ船橋・東京ベイ オレンジリポーターHaru
写真:チームフォトグラファー 福島宏治
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