リーグワンを駆け抜けろ!新人王候補のインサイドにファンが切り込む

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【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

復帰前のハードな走力メニューを終えた夜、柔らかい物腰にきりりとした表情を浮かべてインタビューの席に着いたのは、クボタスピアーズ船橋・東京ベイのルーキー・根塚洸雅選手。
プレシーズンマッチ4試合に出場して3トライを記録、アシストやタックルでも見せ場を作り、オレンジアーミーの期待を集めた。
『30の質問』を通じて見えてきた、根塚選手の素顔とは?

(取材日:2022年1月11日)

自分のラグビーを通じて笑顔になってほしい

1.今日の練習はどうでしたか?
昨日、今日と2日連続でブロンコ(※)をしたので、きつかったです。
最終チェックが終わったので、来週からが楽しみです。
※ブロンコ:持久力テストの一つ。

2.開幕戦に向けて、どのような気持ちで挑んでいましたか?
トップレベルで初めてのシーズンなので、開幕戦には出場したいと思っていました。
知名度を上げたかったのと、単純に早く試合をしたかったので。
―知名度を上げたいという背景は?
自分を通じて笑顔になってくれる人が増えたらいいなというのがラグビーを続けている理由なんです。
楽しんでもらうためには、知らない選手ではなく、知ってもらうことが必要だと思っています。そのために注目を集める開幕戦は絶好の機会だと捉えていました。

―プレシーズンマッチでの負傷によって開幕戦に間に合わなくなったときの心境は?
順調に仕上がっていたタイミングでしたが、負傷した試合もプレー内容は良く、トップレベルでラグビーをしていく自信を持てました。
その自信から、焦らずにしっかりリハビリテーションをして治してから試合に出ることが最善だと切り替えることができたのは良かったです。

3.笑顔になってほしいと思うようになったきっかけは何ですか?
小学校高学年の頃に不整脈という心臓の病気で運動を制限されたことです。
最も重症だった時には数か月ほどペースメーカーという、無理をするとピピピッと警報音が鳴る医療機器を装着して登校していました。
中学校へ入学する前の検査で治癒したと診断されて運動制限が解除されたとき、動けることが楽しくてラグビーに対して「ここまで来れるならやり切りたい」と思うようになりました。
このエピソードがあったから今があると思っています。
(以後は検診異常なく経過しているそうです。)

根塚 洸雅(ねづか こうが)/1998年9月15日生まれ(23歳)/兵庫県出身/身長173cm体重82kg/東海大学附属仰星高等学校⇒法政大学⇒クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(2021年入団)/ポジションはセンター、ウィング、フルバック/愛称はこーが、コーギー 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

ファミリーでダンス

4.入団してはじめにかわいがってくれた先輩はどなたですか?
山崎洋之さんが一番かなと思います。
大学生でジュニアジャパンに選ばれたときから仲の良かった先輩なので。
古賀駿汰さんも『KOGA』と名前が同じこともあって入団する少し前から縁もあって、しばらくは送り迎えもしてもらっていました。
―普段はどのように接しているんですか?
ヒロさん(山崎選手)とは、ぼくが話したことに対してヒロさんが敬語を使って「なんでやねん」とツッコむ流れが王道ネタとして完成しています(笑)。
チームでは杉本(博昭)選手の方が「本物のヒロさん」ですが、僕の中にはヒロさんが二人います(笑)。

5.スピアーズの一員になったと思う瞬間はどんなときですか?
実際に試合をしてみて、トライを獲ったときにみんなが駆け寄ってきてくれて「スピアーズに入ってるんだな」と思いました。
スピアーズの良いところの一つです。
入団直後はフィールドプレーができない時期があったので、今季チーム練習が始まってコンタクトも含めたラグビーができるようになって、実感するようになりました。

6. スピアーズの印象は入団する前と後で変わりましたか?
入団前に思っていたよりもファミリー感が強い本当に優しくて温かいチームで、さらに印象が良くなっています。

7. 仲の良い海外出身選手はどなたですか?
バックスの選手にはほとんどちょっかいをかけたりしています。
クラブハウスの隣のロッカーがG(ゲラード・ファンデンヒーファー選手)、その隣がナード(バーナード・フォーリー選手)、クロッツ(ライアン・クロッティ選手)、斜め横にラピさん(ピーター“ラピース”ラブスカフニ選手)。
前後左右が海外出身選手なので、そこでいじっています。
―SNSでも仲の良さそうな写真を投稿されていますね
DB(デーヴィッド・ブルブリング選手)とは大分合宿の時に同部屋となり、クリスマス前だったので、クリスマスにどこへ行くか、日本に来てどんなデートをしたかといった話題で盛り上がり、距離が縮まりました。
海外出身選手全員とコミュニケーションをとれています。
―入団1年目から年齢もポジションも離れている海外出身選手と良好なコミュニケーションを築けているのは素晴らしいですね
ジャロ(荒井通訳)と同級生で仲良くなったのが大きいかもしれません。
入団当初は二人でいることが多くて、ジャロのところへ集まった海外出身選手と仲良くなっていきました。
ラグビー以外でも何を言っているか分からなければジャロを呼んだし、休みの日もジャロと遊んでいるところへ海外出身選手も来て、ということがあって仲良くなった気がします。

8.入団してみて、スピアーズに驚いたことはありますか?
大学に比べて、ラグビーでこんなに上下関係が緩いチームがあるんやなと(笑)。
上下関係というより、一人ひとりにリスペクトがあるからこその緩さなのかと気が付いて驚きました。
―チームの雰囲気の良さが伝わってきます
海外出身選手がいるからか、チームの中にずっと笑いが飛び交っていて、テンションが高いんです。
基本的にはオペティ(オペティ・ヘル選手)が一人でずっとダンスを踊っていたりして、ナードやクロッツがたまに乗ってくる感じです。
日本人選手だとケビンさん(合谷和弘選手)もよく踊っていて、ケビンさんとはよく二人でふざけています。

練習後の一コマ。左から中田選手、山崎選手、松下副務、永富選手、根塚選手。スタッフとも垣根なく仲が良いのはスピアーズの人気の理由の一つ。 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

ユーティリティーバックスの視点

9.入団後に体重調整をしましたか?
もともと大学では13番でやってきて、大学4年生の時にバックスリーに戻り、87キロから82〜3キロまで落としました。
今もバックスリーに対応できるように体重をキープしている感じです。

10. 入団して初めに取り入れたことは何ですか?
今までとは違い、トップレベルのラグビーは知識がないとできないラグビー。
キックのルールが変わったタイミングでもあるので、キックを得意なものに取り入れようと頑張っています。

11. スピアーズでは、どんな点に磨きをかけたいですか?
大学2年生のジュニアジャパンのときにプレーしたくらいで、本職でWTBをするのは大学1年生以来のことです。
WTB(ウイング)としての視点にもっと慣れて、周りをたすけられるようにもっと声かけできるようになれたら、自分の色を出していけるんじゃないかと思っています。

12. CTB(センター)のプレーの魅力はどんなところですか?
CTBは僕の中ではバックスの中で一番ディフェンスが上手くて身体を張るポジションです。FL(フランカー)に似た動きもある走れる選手というイメージで、トイメンも海外出身選手が多くて、バックスで一番ハードだと思っています。

13. WTBのプレーの魅力はどんなところですか?
WTBはトライを一番大外で獲るというところですが、決して簡単なことではなくて、そこの嗅覚があるかないかがすごく大切なポジションです。トライを獲り切れるWTBが魅力的な選手だと思います。

14. FB(フルバック)のプレーの魅力はどんなところですか?
FBは一番自由なポジションというイメージ。アタックでもディフェンスでも、一人みんなより後ろから参加する。いつも決まったところにいるというわけではないからこそ、知識、スキル、センスが求められるポジションなのではないかと思います。

15.根塚選手のベストポジションはどこですか?
身体がもっと大きかったらCTB。
もともと、タックルなどバチバチしているようなディフェンスが好きで、高校の頃はFLも視野に入れていました。
大学3年生の時の脳震盪の経験や身体のサイズを考えると、今はCTBをやるのは難しいかなと思っていますが、ディフェンスの嗅覚に関してはCTBが合っていたと感じます。
プレシーズンマッチでWTBをやったときにディフェンスでチームに貢献できることが多かったので、そういうところにCTBの経験が繋がっていて良かったです。

「こーが!行け!!」

16.練習や試合を経験してみて、率直にどのように感じていますか?
やっぱり一番は、頭を使うなということ。
大学まではノリや直感のようなもので動いていたことに気付かされました。
考えていた部分もありますが、それ以上に、トップレベルでは一つずつのプレーに考えがあり、知識が全然違うなと感じています。

17.プレシーズンマッチに出場することが決まったときの心境は?
「やっとここでラグビーができる」という嬉しさが一番でしたね。
僕のプレーを見るのが初めてという方が、スピアーズの中でもいると思うので、「どれだけ見せられるか楽しみ」という部分が一番大きかったです。

18.プレシーズンマッチで最も印象的なプレーはなんですか?
東芝ブレイブルーパス東京戦の後半から出場して、ラインアウトからトライまで行くことができたシーン。
たぶん、アタックとしてちゃんとボールを持った初タッチのままトライ・・・確か。そこは曖昧ですが・・・また動画を見てみます、確か初タッチだった気がします。

19.そのときの状況を教えてください。
自分にとっての社会人初トライでした。
ずっと後ろから拓朗さん(高橋拓朗選手)の声が聞こえていて、その時は「すごい幸せやな〜」と思いながらトライまで走っていました。
―どんな声でしたか?
「こーが、行け!」という「応援してくれてる!」と感じられる声でした。
走っているときにずっと聞こえていました。
駿汰さんも「インサイド!内にいるよ!」みたいな声をかけてくれていたんですけど、めちゃくちゃ相手と(位置が)被っていて(笑)。
そういうことを考えながら(走っていて)、初めてのトライを獲れて、みんなが集まってきてハグして・・・。
その感じはすごい幸せだったし、一番印象的でした。
試合中は熱くなることもあるし、楽しすぎてハイになるときもあるのですが、その時は拓朗さんの声が聞こえてきてちょっと冷静になれました。

スピードとステップを活かしてディフェンスを置き去りにしたプレシーズンのトライ 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

強みは圧倒的なコミュニケーション能力

20.入団してからの自分に点数をつけるとしたら何点ですか?
(10点満点中)6点です!(と即答)
―厳しい採点ですね!
プレー自体はよかったのですが、ケガしちゃったというところで「もったいないな」というところも含めて・・・。
―ケガしていなかったら?
8か9です。10はいかないですね。まだ全然・・・思っていたプレーができなかったこともあったので。
でも、ラグビー以外のところ、私生活のことも考えて、コミュニケーションも含めて・・・じゃあ7にします(笑)。

21. 新人選手の中で「1番○○」とアピールするならどんなことですか?
一番はしゃべれるところ。
コミュニケーション、自分を出すのが上手いところだと思います。

22.社業で一番がんばっているのはどんなことですか?
一番がんばろうと思っていた仕事が感染対策のために無くなったので、工場で掲示されるポスターの制作を頑張っています。
新しい工場長ともコミュニケーションをとりながら働いています。

23.モチベーションはコントロールする方ですか?
目立ちたがり屋なので、試合前に「こんなプレーができたら今日はぶちあがるやろな」と考えて自分の中でテンションが上がっていることはありますね。
試合前にハイなテンションで入れます。
―練習のときはどうですか?
しんどい練習の時にはお寿司やサウナなどで自分を奮い立たせています。
好きな寿司ネタはハマチ。ハマチ一推しです。
お寿司は同期の玉置(将也選手)と食べに行くことが多いです。

24.好きなコーヒー豆は決まっていますか?
グアテマラかマンデリンの、エスプレッソ系のダークローストが好きです。
渋ければ渋いほどいいですね。

『信頼』を武器に戦う

25.ラグビー以外のことも含めて、学生時代の一番の思い出は何ですか?
ずっとラグビーしかしていなかったので、どうなんやろう、思い出・・・。
大学で初めて代表で日本のジャージを着て海外に行けたのは嬉しかったですね。
U20の1試合目はオールブラックスと戦ったんです。
いい経験をさせてもらったと思っています。
・・・結局ラグビーのことになってしまいますね(笑)。

26.これまでの指導者の言葉で一番刺さった言葉はなんですか?
全部真に受けちゃうので、どれが一番ということはなくて、すべてが少しずつ刺さっている感じです。
ただ、中学生の時に兵庫県のスクール選抜の練習で、かわいがってくれていたコーチからいただいた言葉は今も覚えています。
2対1の状況で味方にパスしたら2回ともノックオンだったので、3回目はパスせずに自分で行ってしまったんです。
そのときに「信頼せんくなったらラグビーなんかできへんで!もう選手として終わりやぞ!」と思い切り叱られて胸が熱くなりました。
今でもラグビーは信頼が大事だなと思います。
―「信頼」はスピアーズでもキーワードですね
スピアーズでは、一人ひとりを「Kubota Man」と言いながら自分たちで讃えます。
そこはチームの強みの一つ。
一人ひとりにリスペクトがあって、相手のことを知ろうとする。
「この人だったらここにいてくれるだろうな」と考えられる、信頼から繋がる、信頼があるからこそできるプレー。
強いチームにとって信頼というのは欠かせないものだと改めて感じています。

27.根塚選手だけが気が付いているスピアーズの良いところは何ですか?
スピアーズは、他のチームでは「Bチーム」と呼ばれることが多いリザーブメンバーを「ウィングス」と呼んでフォーカスを当てています。
―昨季までの「ボルツ」から呼称が変わったんですね?
ウィングスの「チームの羽となって、チームを支える、羽ばたく」という感じは、僕としてはボルツよりしっくりきていて、かっこいいと思います。
だからといって、ウィングスに甘んじることなく、メンバーとしてやっていけるように頑張りますが。
―スピアーズのノンメンバーの捉え方は独特なのでしょうか?
大学まではコーチ陣もAチームにフォーカスすることが多かったんですけれど、スピアーズは「ウィングスがいないと今のチームはできない」と感謝しています。
チームを全体で見ていて、「Aチーム以外のところが頑張らないと強いチームになれない」という意識があるんです。
だからこそBチームもAチームのために練習しているのではなく、対戦相手の動きをしながらも「Aチームを抜こう、Aチームに勝とう」と思って練習に挑んでいるのだと思います。
チームとしてウィングスを大切にする、ウィングスもそれに応えようとする、その好循環は、良いチームの特長であり、スピアーズの強さなのだと思います。

スピードを活かしたハードタックルも根塚選手の魅力の一つ 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

深く雅やかに、らしくあれ

28. お名前の由来を教えてください。
「洸」という漢字には、深い、気持ちの広い、という意味があり、「雅」には、優雅、上品な、気品があるという意味があるそうです。
雅やかな深い人間になってほしいという気持ちを込めたそうです。

29.座右の銘に「らしくあれ」と挙げていましたが、根塚選手らしさとは?
一番は、「一番楽しむこと」です。
もう一つ、ラグビー関係なくという点では、相手にふざけて絡むことが一番距離を縮めやすくて自分らしいコミュニケーションの方法。
「なんやこいつ」と思われても、ラグビー以外のところでも、相手を尊敬しつつ、人柄や距離感が分かればぎりぎりまで攻めてみる、それが僕らしいなと思います。

30.スピアーズのラグビーの一番の魅力は何ですか?
人間。(即答)
一人ひとりが魅力的な人が多い。
試合中以外はどんなときでも、スピアーズでいると笑顔の写真しか撮れないんです。
そこがファンの方から見ても魅力的なんじゃないかと思います。


「ファンの方から取材されるのは新鮮でした。こうしてつながれるのもスピアーズの良いところですね。」と笑った根塚選手。即答したり時間をかけたりしながら、用意した質問すべてに回答してくれた。その様子には、思考の海の底でじっくりと考え込むというよりは、素潜りのように一気に潜水して深海で掴み取った答えをシェアしてくれるような、根塚選手ならではの瞬発力の高さとセンスの良さが表れていた。

リーグワンデビューは2月19日(土)第6節 リコーブラックラムズ東京戦。
2月19日はスピアーズの11番のプレーで笑顔にしてもらいましょう。


文:クボタスピアーズ船橋・東京ベイ オレンジリポーターHaru
写真:チームフォトグラファー 福島宏治
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著者プロフィール

〈クボタスピアーズ船橋・東京ベイについて〉 1978年創部。1990年、クボタ創業100周年を機にカンパニースポーツと定め、千葉県船橋市のクボタ京葉工場内にグランドとクラブハウスを整備。2003年、ジャパンラグビートップリーグ発足時からトップリーグの常連として戦ってきた。 「Proud Billboard」のビジョンの元、強く、愛されるチームを目指し、ステークホルダーの「誇りの広告塔」となるべくチーム強化を図っている。NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23では、創部以来初の決勝に進出。激戦の末に勝利し、優勝という結果でシーズンを終えた。 また、チーム強化だけでなく、SDGsの推進やラグビーを通じた普及・育成活動などといった社会貢献活動を積極的に推進している。スピアーズではファンのことを「共にオレンジを着て戦う仲間」という意図から「オレンジアーミー」と呼んでいる。

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