【鳩スタ殿の13人】#021 山口愛(鎌倉インターナショナルFC スタッフ・理学療法士)ー『鳩スタ』は少しずついろんな世代が集まる場所になっている

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【Kazuki Okamoto (ONELIFE)】

 神奈川県リーグに所属する鎌倉インテルが、民間の力だけでつくり上げた自前のホームグラウンド「みんなの鳩サブレースタジアム」(通称「鳩スタ」)。雑草の生い茂っていた古都・鎌倉の広大な空き地に誕生した「鳩スタ」は、その名の通りに「みんなの思い」が形になった場所だ。

 ここでは「鳩スタ殿の13人」と題して、「鳩スタ」に関わる人々のそれぞれの思いに迫る。今回は、地元鎌倉深沢の出身で鎌倉インテルのスタッフとして働く理学療法士・山口愛。

(文・本多辰成/スポーツライター)

「鳩スタ」は普段つながれない人がつながる場所

鎌倉インターナショナルスポーツクラブ主催の高齢者を対象とした健康教室 【鎌倉インターナショナルFC】

 昨年10月の「鳩スタ」オープンから鎌倉インテルのスタッフのひとりとして働く山口愛は、自宅から徒歩10分の「鳩スタ」に通うのがルーティンだ。

「主な仕事としては試合やイベントの準備などをしています。たとえば試合の時に会場で何を売るか、どんなイベントをするかといったことを考えたり、クラブグッズの企画などにも関わっています。『鳩スタ』の運営スタッフのシフトにも入っていて毎日のようにいるので、『鳩スタ』に来てくれた方が一番会う人かもしれません」

 もともとは病院に勤務していた理学療法士。その資格を生かして、「鳩スタ」で開催されている高齢者向けの体操教室の講師なども務めている。

「総合型地域スポーツクラブの活動として、3月までは月2回、4月からは週1回のペースで行われる体操教室の講師をさせてもらっています。だんだん参加者も増えてきて、この前は18人の方が来てくれました。体操教室に来てくれた方が鎌倉インテルの試合を見に来てくれたりもして、そういうのがすごくいいなと。高齢者の方とサッカー選手という、普段なら関りがないような人たちがつながれる場所に『鳩スタ』がなっている気がします」

フロンターレで川崎へ移住、インテルで鎌倉へUターン

フロンターレをきっかけに川崎へ引っ越す 【鎌倉インターナショナルFC】

 もともとサッカーを見るのが好きだったという山口は、10年来の川崎フロンターレファンでもある。生まれ育ったのは鎌倉市だが、フロンターレ好きが高じて川崎市に引っ越したこともあった。

「弟がサッカーをしていたのでもともとサッカーは好きで、試合を見に行った等々力競技場の雰囲気がよくてフロンターレを応援するようになりました。等々力競技場に自転車で行けるところに住むのが夢だったので、結婚を機に夫に懇願して川崎に住むことなりました。その時期は特にサッカーが側にある生活をしたかったこともあり、鎌倉に住むにはあまり魅力を感じられなかったんです」

2019年シーズン、マネージャーとしてチームに帯同する山口(左) 【鎌倉インターナショナルFC】

 地元の鎌倉に戻ってくるきっかけのひとつとなったのが、鎌倉インテルの存在だった。2019年にたまたま鎌倉インテルの記事を目にした山口は思い切ってクラブに連絡を入れると、マネージャーとしてチームに帯同することになった。

「その時は病院で理学療法士として働いていたんですが、スポーツも好きだし、何か地域に貢献できることがしたいということもなんとなく考えていたんです。そんな時に、まだできて1年くらいだった鎌倉インテルの存在を知って、とりあえず問い合わせフォームから『何かやらせてもらいたい』というメッセージを送りました。たまたまそのタイミングで夫の仕事の関係もあって鎌倉に戻ることになって、最初はマネージャーとして2シーズンほどチームに帯同させてもらいました」

「鳩スタ」は少しずついろんな世代が集まる場所になっている

「鳩スタ」でのホームゲームで地域の方々を迎え入れる山口 【Kazuki Okamoto (ONELIFE)】

 サッカーのある川崎を離れて鎌倉へのUターンとなったが、「インテルがあるなら鎌倉に住むのもいいかな」と思えたという。特に、当初からクラブがスタジアムの建設計画を掲げていたことに大きな魅力を感じていた。

「最初からクラブは将来的に鎌倉にスタジアムをつくりたいということを掲げていたので、それはすごく魅力的に感じていました。単にサッカーチームのマネージャーをするというのではなくて、その先に絶対に何かあるんだろうなと。そういう思いがあったので関わりたいと思いましたし、スタジアム計画についてはずっと意識していました。鎌倉出身者としても、そういう場所ができたら地域がすごく活性化するだろうなと」

 クラブ創設4年目を迎えた昨年10月、スタジアム計画は「鳩スタ」の誕生という大きな一歩を刻んだ。本業の事情とコロナの状況も影響して1年ほどチームを離れていた山口も、鎌倉インテルのスタッフとしてクラブに戻ってきた。

「ちょうど仕事を辞めて暇をしていた時だったので、GMの吉田(健次)さんに連絡して最初はアルバイトとして働かせてもらって。その後、鎌倉インテルのスタッフとして仕事をさせてもらうことになりました。『鳩スタ』が少しずついろんな世代の人たちが集まる場所になってきているのを実感しますし、応援してくれる人たちと直接話したりすることができるので、今はとてもやりがいを感じています」

クラブと「鳩スタ」とずっと一緒に成長していきたい

週末のホームゲームに向けて「鳩スタ」での青空ミーティング 【鎌倉インターナショナルFC】

「みんなのスタジアム」という名の通りにこれからもみんなでつくり上げられていく「鳩スタ」。現段階ではハード面の課題もまだまだ残されている。ピッチ脇の「パークエリア」の活性化も課題のひとつで、山口もそのミッションを託されたひとりだ。

「鎌倉にはいい感じの公園というのがあまりないんです。空き地のような場所や本格的な植物園みたいなところはあるんですが、運動している人がいたり、お茶を飲んでいる人がいたりと、いろんな人が集まる公園みたいな場所はあまりありません。海外に行くと老若男女が集まっていろんなことをしているヘルシーな感じの公園が多い気がするので、『鳩スタ』のパークエリアをそんな空間にできればなと思っています」

 先が見えてしまうと環境を変えたくなるタイプで、理学療法士時代にも何度か職場を変えていたという山口。しかし、「鳩スタ」で働く今は、「悩むことも楽しい」刺激的な日々だという。

「これまでと全然違う仕事ですけど、どうすればいいんだろうって悩んでいるのも楽しいし、みんな頑張っているので私も刺激をもらいながら仕事をしています。これまでは先が見えてしまって飽きてしまうことが多かったんですが、鎌倉インテルや『鳩スタ』の場合はたぶんずっと進化し続けていくと思うので、逆に私も振り落とされないようにずっと一緒に成長していきたいと思っています」

 生まれ育った鎌倉に誕生した「鳩スタ」。みんなでつくり上げていく手作りのホームグラウンドに、J1のスタジアムとはまた違った魅力を感じている。

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【鎌倉インターナショナルFC】

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著者プロフィール

鎌倉インターナショナルFC(通称:鎌倉インテル)は、世界で最もグローバルなスポーツであるサッカーを通じて未来の日本を国際化していくため、2018年に設立された新しいサッカークラブです。現在は神奈川県社会人リーグに所属していますが、プロサッカークラブ(Jリーグ参入)、そして世界を目指して活動をしています。『CLUB WITHOUT BORDERS』をビジョンに掲げ、日本と世界を隔てる国境をはじめ、性別、年齢、分野、そして限界、あらゆる“BORDER”(境界線)をもたないサッカークラブを目指しています。

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