土居聖真が即答した決断。「キャプテンとして初めてトロフィーを掲げたい」【FREAKS vol.318】

鹿島アントラーズ
チーム・協会

【©KASHIMA ANTLERS】

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 2022シーズンが始動して、1週間ほど経った日のことだ。吉岡FD(フットボールダイレクター)から『キャプテンについて相談がある』と声をかけられた。

「誰にキャプテンを任せるのだろう。やっぱり健斗(三竿選手)かな」

 土居聖真は頭のなかで新シーズンの青写真を描きながら、吉岡FDの待つ部屋へと向かった。

「まず、『今シーズンは優磨(鈴木選手)とピトゥカに副キャプテンを任せたい』という話がありました。自分のなかでも適任だと思い、『いいと思います』と伝えました」

 続けて、吉岡FDの口から予想外の言葉が発せられた。

「『キャプテンは聖真にやってほしい』、と。まさか自分が指名されるとは思っていなかったので驚いたけれど、現場のスタッフを含めて満場一致だったそうで。それで吉岡FDから『やってくれるか?』と聞かれました」

 断る理由は、何一つなかった。

「はい。やります」

 こうして、2022シーズンは背番号8がその腕にキャプテンマークを巻くこととなった。

 今年5月には30歳となり、フットボーラーとしてベテランの域にも入っていく。ユースチームからトップ昇格し、今季で在籍12年目。そのキャリアはアントラーズの歴史とともに重ねてきた。

「もしかしたら上から目線で話をしているように聞こえてしまうかもしれませんが、“土居聖真“としてほぼ経験し尽くしてしまった思いがあります。日本代表ではW杯予選やW杯本大会を経験していませんが、アントラーズではFIFAクラブW杯も経験したし、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)も優勝している。クラブレベルで見れば、かなりの国際経験を積むことができたと思っています」

 国内外のタイトルを勝ち取り、世界最高峰の大会に2度も出場した。土居が言うように、そのような稀有な経験をしている選手は、日本国内では数少ない存在だ。近年は優勝をつかむことができずチームとともにもがき苦しんでいるが、言い換えれば“土居聖真”というフットボーラーは、アントラーズの栄光も苦難も味わい尽くしてきたといえる。

「そのなかでさらに自分自身を成長させ、アップデートさせるために、これまで以上の刺激を得なければならない。そのきっかけになるのは、キャプテンを務めることなのではないかと。ありがたいことに、アントラーズに長く在籍し、Jリーグでも長くプレーさせてもらっています。それだけに30歳を目前にして、初めて挑戦することが少なくなってきた。吉岡FDから『機は熟した』という言葉をかけてもらいましたが、クラブもタイミングを見計らってくれていたように感じます。今シーズンこそが、僕がキャプテンに就任するタイミングだったのではないかと思っています」

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 本田泰人、小笠原満男、内田篤人、三竿健斗が継承してきたキャプテンの系譜に、土居聖真の名が刻まれる。歴代の主将たちは、その闘志とリーダーシップでチームの先頭に立ち、他の選手たちを引っ張ってきたようにも見えるかもしれないが、土居の目にはやや違って映っていた。

「振り返ってみると、自我や感情を押し殺してでも、周りの選手が活躍できるように仕向けてくれる先輩ばかりでした。自分が若いころに(小笠原)満男さん(アカデミーテクニカルアドバイザー)から言われた言葉が思い浮かんだり、自分が調子よくプレーできていたのは先輩たちのおかげだったなと思い返してみたり。今度は自分に、今の若手選手たちがのびのびとプレーできるように働きかける番が来たということです」

 自己犠牲の精神こそが、土居のなかでのキャプテン像として強く刻まれている。そして、そのような先人たちの姿勢がアントラーズに多くのタイトルをもたらしたことも理解している。だからこそ、次は土居自身がそれを体現する番だという。

「ネガティブな空気ではなく、ポジティブな空気が充満するような働きかけをしていきたい。ただ、キャプテンという肩書はつきますが、あくまで一選手であることに変わりはありません。チームには昨季までキャプテンを務めてくれていた健斗もいるし、副キャプテンの優磨もいます。性格的にも、言うべきところは彼らに託そうかなと(笑)。僕は逆に、先輩から強く言われて落ち込んでいる若手選手をフォローすることで、バランスを取ろうかなと思っています」

 チームを下支えすることが自らの役目だと自負する。シーズンのなかでたびたび訪れる荒波のなかでもチームを転覆させずに栄光への航海を続けるために、キャプテンとして舵を取るつもりだ。

「勝つこと……『どんなことをしてでも』といったら語弊があるかもしれませんが、僕は結果として試合に勝てば何でもいいと思っています。これはあくまで一例ですが、いわゆる1点差を守り切る“鹿島る”と表現されるプレーは、まさに勝利への姿勢が表れている場面の一つ。見ている人からブーイングされようとも、周りから『違うだろ、キャプテン!』と言われようとも、そこへのこだわりは曲げたくない。要するに“勝つためにやるべきことをやる”ということです。勝つために手段を選ばないという覚悟を見せます」

 根底にあるのは、あくまでも勝利に対する強い執念。深紅のシャツと背中に刻まれるナンバー8、そして先輩たちがつないできた伝統の腕章を栄光の明かりで照らすために、新キャプテン・土居聖真は新たな挑戦に臨んでいる。

「アントラーズにかかわるすべての人々が近年の結果に満足していないように、僕自身も常に勝利を、そしてタイトルを望んでいます。そのために、自分自身が何をしなければいけないのか。今シーズンから新たにキャプテンを務めさせてもらうだけに、それを常に考え、実行していきたい。チームとして、もがき苦しみながらも一つひとつの課題を乗り越え、シーズンの最後にはキャプテンとして初めてトロフィーを掲げることができればと思います」

 新たな思いで臨む2022シーズン。チームを勝利に導く土居聖真のプレーに注目だ。

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著者プロフィール

1991年10月、地元5自治体43企業の出資を経て、茨城県鹿島町(現鹿嶋市)に鹿島アントラーズFCが誕生。鹿角を意味する「アントラーズ」というクラブ名は、地域を代表する鹿島神宮の神鹿にちなみ、茨城県の“いばら”をイメージしている。本拠地は茨城県立カシマサッカースタジアム。2000年に国内主要タイトル3冠、2007~2009年にJ1リーグ史上初の3連覇、2018年にAFCアジアチャンピオンズリーグ初優勝を果たすなど、これまでにJリーグクラブ最多となる主要タイトル20冠を獲得している。

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