「日本初の英語による国際的なスポーツマネジメント大学院プログラムの学生の満足度に影響する要因とキャリア形成における必要性に関する研究-つくば国際スポーツアカデミー (TIAS) の修了生調査を事例として-」
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国際学生を対象とする場合は、学位を授与する大学院プログラムを提供することが重要
TIASでは、国際的な視野を持ったスポーツ人材の育成を目指して大学院プログラムを開設しましたが、出願者は年々増加し、5大陸すべての50か国以上の国から多数の応募をいただくまでに至りました。得られる修士号は「スポーツ・オリンピック学」で、42ヵ国から計95人が修了しました。また、国際オリンピック委員会(以下、IOC)が中心となって設立されたInternational Academy of Sports Science and Technology(以下、AISTS)との業務提携で、IOCや国際スポーツ競技連盟(以下、IF)の実務者による講義やインターシップ活動支援を受けたことから、修了生は現在国際パラリンピック委員会(以下、IPC)やIF、各国のオリンピック・パラリンピック委員会、競技連盟、スポーツ関連企業、政府機関、教育機関などで即戦力として現在も活躍しています。
以上のことから、本研究の目的は、日本初の英語による国際的なスポーツマネジメント大学院プログラムに対する学生の満足度に影響する要因及びキャリア形成における必要性を明らかにし、我が国における国際スポーツ界のリーダーとして活躍する人材を育成するために必要な大学院プログラムの在り方を検討することでした。
TIAS修了生調査の結果を通して、「総合満足度」と個々の項目の「満足度」、「総合キャリア必要度」と個々の項目の「キャリア必要度」に関連性があるかを確認するためそれぞれクロス集計し、カイ二乗検定を行いました。
その結果、まず満足度に影響を与える要因として、講義内容では、修了生の総合満足度の高群と非高群において、オリンピック・パラリンピック教育と共通分野の全ての授業科目の満足度に有意差がみられました。また、講義内容以外のサービスでは、「教員の質」である「教員との良好なコミュニケーションの機会」と「教員の学生に対する高い学術的支援」の項目にも総合満足度の高群と非高群に有意差がみられました。このことから、修了生の大学院プログラムの満足度という観点からは、教育に伴う運営や環境面というよりは、教育の本質である講義内容や教員の対応が学生の満足度に影響する要因であることが分かりました。
一方で、修了生のキャリア必要度という観点から、講義内容では、修了生の満足度とは違い、「スポーツマネジメント分野」の全ての講義が総合キャリア必要度の高群と非高群に有意差がみられました。また、講義内容以外のサービスでは、満足度で得られた結果とは違い、「外部連携の質」、「業界ネットワークの質」、「学生の質」、「事務局サービスの質」、「キャリア機会提供の質」にも総合キャリア必要度の高群と非高群に有意差がみられました。このことから、まず国際学生を対象とする場合は、学位を授与する大学院プログラムを提供することが重要であることが分かりました。さらに、「教育の質」の講義内容でも外部機関や外部のゲストスピーカーとの連携、スポーツ業界との地理的近接性とつながる講義の工夫が求められ、業界ネットワークの質、学生の質、教員や事務局のキャリア支援もキャリア形成の必要性においても重要な要因であることが考えられました。
以上のことから、今後国際的なスポーツマネジメント大学院プログラムを設計する上では、学生の満足度とキャリア必要度と両方の観点からプログラムを設計することが重要であると考えられます。関心のある方は、本論文を一読頂ければ幸いです。
塚本 拓也 筑波大学
高橋 義雄 筑波大学
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