【Xリーグ】短期集中連載 Road to Rice Bowl ー アメフト日本一への軌跡(最終回)
【©NFA|X League】
最終章 決戦!ライスボウル:世界よ、これが日本のアメフトだ
6年ぶり5度目の日本一を目指したインパルスは2019年のジャパンエックスボウルに続き、社会人の王座決定戦でフロンティアーズに敗れた。
1984年に日本選手権という位置づけになり、昨年まで学生王者と社会人チャンピオンの間で争われてきたライスボウルは新たに社会人リーグが優勝を争う試合形式として生まれ変わった。
新方式で行われた試合は残り30秒を切るまで勝敗の行方が分からない、日本アメフトのトップリーグ王座決定戦にふさわしい好ゲームとなった。試合中に開いた最大の点差はフロンティーズがリードした11点だったが、これは48分の試合時間の中でわずかに53秒しか続かなかった。残りの47分7秒の点差は6点以内。1回のプレーでタッチダウンが生まれる可能性のあるアメリカンフットボールではリードする側がいつ入れ替わってもおかしくない緊張感の中で展開したゲームでもあった。
TDランを決めて雄たけびをあげる富士通フロンティアーズQB高木翼(18) 【©NFA|X League】
そして、これ以上に大きな影響を与えたのが第4ダウンギャンブルの攻防だ。第4ダウンギャンブル成功率はインパルスが0%(2回の挑戦でいずれも失敗)だったのに対し、フロンティーズは67%(3回中2回成功)だった。
フロンティアーズの2回の成功のうち1回は第4クオーター最初のプレーだ。インパルスが18対14とリードしていた場面で、フロンティアーズはインパルス陣内21ヤードで第4ダウン6ヤードという状況にあった。
インパルスRBミッチェルビクタージャモー(5)をタックルする富士通LB趙翔来 【©NFA|X League】
この後フロンティアーズはフィールドゴールで加点してリードを24対18と広げる。この時点で残り時間は3分20秒だった。ここからこの試合を左右する第4ダウンの場面が3回連続で起こった。
フロンティアーズのフィールドゴールの直後のインパルスのポゼッションはQBアンソニー・ロウレンスの被サックなどもあり自陣41ヤードで第4ダウン2ヤードの場面を迎える。ここでRBミッチェルにボールを託すが、カナダのプロリーグCFLから帰国して出場登録されたばかりのフロンティアーズのLB山岸明生がロスタックルして攻守交代。
フロンティアーズLB山岸明生(左)のプレッシャー受けながらパスターゲットを探すインパルスQBアンソニー・ロウレンス 【©NFA|X League】
この時点で残り時間は1分45秒。すでにインパルスにタイムアウトは残っていなかった。自陣28ヤードからの攻撃でインパルスはロウレンスからWR木戸崇斗、ミッチェル、レオンシャ・フィールズへのパスなどでのフロンティアーズ陣内25ヤードまで進む。しかし、第4ダウン1ヤードでブレナン翼に向けてロウレンスが放ったパスはフロンティアーズのDB樋田祥一のブレナンへのハードヒットが効果的に決まってインコンプリート。この瞬間にフロンティアーズの日本一奪回が事実上決まった。
新人ながらパスキャッチで活躍したインパルスWRブレナン翼 【©NFA|X League】
どれもが普段のたゆみない練習と努力で培われた高度な技術の結果として生まれ、勝利にこだわる強い意志があってこそ実現するプレーである。そして、これが日本の誇るアメリカンフットボールのレベルであり、新しいライスボウルの歴史を刻む社会人リーグの矜持でもある。
【©NFA|X League】
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ