早大ラグビー部 華の早明戦で勝利 対抗戦有終の美を飾る! 大田尾竜彦監督・NO・8佐藤健次・SH宮尾昌典ら詳細コメント

チーム・協会

【早稲田スポーツ新聞会】

早稲田スポーツ新聞会(記事 塩塚梨子、写真 内海日和)

12月5日。雲一つない晴天の下、満員の東京・秩父宮ラグビー場で、関東大学対抗戦(対抗戦)最終節の早明戦が行われた。前日の帝京大と慶大の試合結果により、対抗戦の2位と3位を争うこととなったこの試合。まさに早明戦にふさわしい、意地のぶつかり合いが幾度も見られたゲーム展開となった。前半は開始すぐに先制点を許したものの、SO伊藤大祐(スポ2=神奈川・桐蔭学園)によるPG、SH宮尾昌典(スポ1=京都成章)の逆転トライで、3点リードで試合を折り返す。後半は粘り強いディフェンスが功を奏し、無失点でリードを守り、最後にWTB小泉怜史(文構3=東京・早実)が劇的な独走トライ。17―7で勝利し、対抗戦の最終節を見事白星で飾った。


 前半開始5分、相手にゲインラインを突破されると、わずかな隙を突かれ先制点を献上してしまう。しかし、早大は冷静だった。10分、敵陣で明大にノットロールアウェイの反則を与えると、早大はPGを選択。これを確実に決め、スコアを3―7とする。その後、早大はスクラム、明大はラインアウトがうまくかみ合わず、互いに攻めあぐねる時間帯が続く。再び試合が動いたのは24分。相手のパスミスによるこぼれ球に小泉が反応しボールを蹴ると、宮尾がキャッチし、ハーフウェーラインから独走。逆転のトライを挙げる。その後はお互いにミスが重なり、ともにPGの機会を得るがどちらも失敗。早大は10―7と3点リードで後半を迎えることとなった。

独走トライを挙げた宮尾 【早稲田スポーツ新聞会】

後半は、さらに拮抗(きっこう)した展開が続く。NO・8佐藤健次(スポ1=神奈川・桐蔭学園)のゲインや、プロップ木村陽季(社4=東京・早実)、フッカー川崎太雅(スポ2=東福岡)のタックルなど、何度か見せ場をつくるものの、なかなか敵陣深くまで攻め入ることができない。さらには相手に自陣ゴール前で攻められる時間が続く。しかし、今日のゲームテーマである『BATTLE』を体現するかのように、15人全員が粘り強いディフェンスを見せ、最後まで得点を許さなかった。そして迎えた35分。明大に大きくゲインされ、攻め込まれたところをフランカー相良昌彦(社3=東京・早実)がターンオーバー。そこから一気に敵陣に攻め込み、左に展開すると、フランカー前田知暉(社3=大阪・東海大仰星)とCTB松下怜央(スポ3=神奈川・関東学院六浦)が2度のオフロードパスをつなぎ、最後に小泉が独走してインゴールへ。勝利を決定づけるトライとなった。最後は明大のボールを再びターンオーバーし、FB河瀬諒介(スポ4=大阪・東海大仰星)が外に蹴り出してノーサイド。最終スコアは17―7で、対抗戦3年ぶりの早明戦白星となった。

勝利を決定づけた小泉のトライ 【早稲田スポーツ新聞会】

今日はアップからメンバーの士気が高かった。その士気が下がることはなく、試合中も全員が声を出し、鼓舞し合っている場面が多く見受けられた。また、この試合で最も光ったのはディフェンス面。全員が前に出るディフェンスで相手の攻撃を耐え抜き、春からこだわってきた接点で引かなかったことが、早明戦の勝因となった。ただ、スクラムでは『重戦車』と称される明大相手に押し負けてしまい、ラインアウトではノットストレートの反則を犯してしまうなど、セットプレーは試合を通して好調とは言えなかった。それでも、大田尾竜彦監督(平16人卒=佐賀工)が「全員で補い合っていた姿を見れたことが一番の収穫」と話すよう、そのような劣勢を他のプレーでカバーできたことも勝因の一つだろう。メンバー全員が戦い抜き、積み重ねてきたことを確実に出せた結果が今回の白星につながった。
 9月に始まった対抗戦も、今日で終幕。2位という結果で終わったが、早大が目指す『荒ぶる』をかけた戦いは今から始まる。3週間後、再び秩父宮の地で早大の勝利を見届けよう。
コメント
大田尾竜彦監督(平16人卒=佐賀工)※記者会見より抜粋
――今日の試合の感想をお願いします
 今日の試合はCTB長田智希主将(スポ4=大阪・東海大仰星)が不在という中で、ピッチに立った15人、ないし23人が自分たちの実力を発揮してくれたと思います。当然様々な課題はあるのですが、今日に関していうと、全員で補い合っていた姿を見れたことが一番の収穫だと思います。選手たちを誇りに思えるというか、非常に頼もしかったです。
――「補い合っていた」ということは、どのようなプレーから感じられましたか
 今日は早稲田として、ディフェンスの部分を慶大戦から整理して臨んだ試合でした。タックルから起き上がった後の指示などの部分で、今日はFB河瀬諒介(スポ4=大阪・東海大仰星)が廣瀬君(CTB廣瀬雄也、明大)のキックから明大がトライをしかけた場面で刺したのですが、あの前の場面ではWTB小泉怜史(文構3=東京・早実)が河瀬をものすごく呼んでいました。恐らくスペースを埋めてほしいという意図だと思うのですが、それに河瀬が反応したというかたちでした。恐らく前節までだと、このような声の掛け合いは生まれていなかったと思うので、このあたりは上から見ていても分かりましたし、非常に良いディフェンスが生まれたと思います。
――接点の部分について評価をお願いします
 良かったと思います。足が芝生に噛んでいる感じというか、タックラー、特にセカンドマンが乗り越えられたらノットロールアウェイ、押し返したらスローボールという接点の攻防で、今日は頑張ったなと感じています。
――小泉選手の今日の活躍についてどのように感じられましたか
 元々の能力がすごく高いです。能力が高いのだけど、殻を破れないという評価で使ってきた選手だったのですが、今日はきっかけになるのではないかと思っています。今日の彼のプレーに関しては、とても良かったと思います。
――全国大学選手権(大学選手権)では、明大と再戦の可能性、天理大が上がってくる可能性もありますが、どのように捉えていますか
 どちらの可能性もあります。明大の場合は、私も経験したことがない連戦というかたちになるので、目の前のことを一秒一秒やり切るだけかなと思います。対戦相手については我々がコントロールできないので、今日良かったところとできなかったところを自分たちの中で反省をして、より良いチームになっていくということ。一日一日を大事にしていくことしかないかなと思っています。

CTB長田智希主将(スポ4=大阪・東海大仰星)
――今日の試合の感想をお願いします
 ゲームテーマを『BATTLE』と決めて、この試合に臨みました。そういう意味で、一人一人がよく戦ってくれたと感じています。接点だったり、タックルといった部分で戦ってくれたことが、今回の結果に繋がったと考えています。まだまだこれからが本番だと考えていますし、今日の試合で出た課題を修正して次に臨んでいきたいと思います。
――早明戦までの期間をどのように過ごしていましたか
 もちろん僕自身出場したいという思いはありましたが、チームにとって何が一番プラスなのか、ベストなのかということを考えたときに、100%の状態で出場できる23人で臨んだ方がいいと考えました。僕は出場する選手たちが迷いなくプレーできるように考えて、声かけなどで一緒にリズムを作ろうと考えていました。
――試合の感想をお願いします
 一人一人がよく戦ったと思います。接点の部分であったり、BKだとスペースを埋める動きなど、本当に良く働いて動いてくれた部分が見れたので、良かったと思います。
――大学選手権では、明大と再戦の可能性、天理大が上がってくる可能性もありますが、どのように捉えていますか
 どちらかというのは分からないことなので、決まった相手に対して準備をする、自分たちが今日得た課題を修正するということです。課題でいうとペナルティであったり、22メートルに入った後の仕留めの精度などを修正して臨みたいと考えています。

プロップ小林賢太(スポ4=東福岡)
――今日の試合の感想をお願いします
 今日のゲームに関しては、長田主将からもあったように、ゲームテーマ『BATTLE』というのを出していました。本当に、ピッチに立っている15人がテーマにコミットできていたと思います。しかし、まだまだディフェンスやアタックの部分で細かなミスがあるので、そこは修正しなければならない課題だと思っています。なので、そのような部分を改善していきたいと考えています。
――自陣でディフェンスをし続ける場面もありましたが、明大のタックルはどのように見えていましたか
 今日に関しては、ディフェンスする時間が長い中で、自分たちはディフェンスにフォーカスして練習を積んできたので、そこには自信を持っていました。ペナルティをしないで、自分たちのディフェンスシステムを遂行すれば、必ずボールを取り返せるので、我慢の時間が多かったのですが、自分たち全員が規律を保ったうえでディフェンスできていたと思います。
――終了直前の交代時には泣いているようにも見えたのですが、どのような思いでしたか
 80分超えた時間帯でスコアして、自分たちのセーフティリードに持ち込めたというところで、試合終了はしていないですが、少し感情が出てしまったところがありました。
――スクラムではどのような工夫をしましたか
 うまくいったところとしては、自分たちが1年間積み上げてきたステップアップの部分で、8人全員がキープできたときには、そこがうまくいっていました。うまくいかなかった部分では、セットアップのずれや、8人がまとまれていたときに、明大からプレッシャーをかけられてしまったという部分です。相手がどう動くかというよりは、自分たちがこれまで積み上げてきた部分が、できていたかできていなかったかという違いだと思います。
――後半、自陣深くのスクラムでは相手のミスを誘いました。どのようなことを意識されていましたか
 少しスクラムで劣勢の場面が多かった中で、自陣ゴール前でのスクラムになりました。そこで押されてしまっては、ペナルティトライなども考えられる場面で、押すマインドを80分通して持とうという、FW内でのゲームテーマがあったので、そこを8人全員で意思統一できたかなと考えています。
――練習を積んだ部分への手応えはありましたか
 自分たちのスペースを見る、補い合うといった部分に1週間フォーカスして練習してきたので、そこが機能したと考えています。
――慶大戦で苦戦した、リーダー陣のコミュニケーションの部分はどのように感じられましたか
 コミュニケーションの部分においては、ピッチに出ている選手の中に、リーダーの素質を持った選手が多くいます。そのため、それぞれの意見が出て、そのことが逆にチームがまとまらないという方向に進んでしまったのが慶大戦でした。自分たちがチームを進めていく中で、5フォースそれぞれのリーダーを中心に、今回の試合のゲームテーマを再確認して、自分たちがうまくいかなかった時に、どのように立ち返るかを明確化することができたので、今日の試合ではうまくいったと思います。

FB河瀬諒介(スポ4=大阪・東海大仰星)
――今日の試合を振り返っていかがですか
 今日の試合はかなり激しい試合になると思っていて、早稲田としてはコンタクトの部分でしっかり戦おうと思っていました。
――早明戦に憧れて早大に進学されたと思いますが、最後の早明戦はいかがでしたか
 率直に言うと、しんどかったです。毎年毎年プレッシャーもありますし、佐藤健次も言ったように「秩父宮がアウェーだ」と話していて。今日は長田主将がいない中で、4年生としての責任や重圧があったので、そういう部分でもしんどかったかなと思います。
――最後の大学選手権となりますが
 プレッシャーもかかりますし、しんどいことも多くなると思いますが、自分のできることをしっかりやって、終えたいと思います。
――先制されてから逆転に向かうまで、どのような気持ちでプレーしていましたか
 焦りはなく落ち着いていました。ディフェンスも崩されたなというイメージはなかったので、しっかりボールを継続して持ち続けられたら逆転できるなと思っていました。
――試合中、河瀬選手の声がよく聞こえたのですが、その点は意識していたのでしょうか
 バックスリーや前の選手がハードワークできるかが鍵だったので、それは意識していました。

NO・8佐藤健次(スポ1=神奈川・桐蔭学園)
――試合を振り返って
 今日は長田主将が出場しないので、FWで勝とうという話をしていました。コンタクトの部分で前に出られて、ディフェンスも堅くできたことで、チームに良い流れを持っていけたのではないかと思っています。POMについては、今日の自分のテーマとして「1メートル、1センチにこだわる」ということを決めていました。ディフェンスも大切なのですが、今日はアタックに集中しようということで絶対にゲインすると決めていました。それが体現できて良かったと思います。
――前半はボールを持つ回数が少なかったように思えましたが
 前半にボールをもらえなかったのは、自分がストラクチャーを壊してまでゲインするという感じではなかったからです。そこは冷静にできたと思います。
――ボールを持ってからは
 今日は、相手のディフェンスの穴やスペースが見えていたので、それがゲインにつながったのかなと思います。
――初めての早明戦はいかがでしたか
 グラウンドに入って最初にスタンドを見たときに明治の旗がすごく多くて、アウェーだなと感じてしまいました(笑)。河瀬選手にも「最初はアウェーだと感じるよ」と言われて、それで少し緊張がほぐれたというか、試合中に気にすることなくできたかなと思います。自分はプレッシャーに強いとは思っていなくて、まず試合を楽しもうと思っていました。それがプレッシャーをあまり受けないメンタルに繋がったのかなと思います。
――シーズンを通して成長したと感じるところは
 まず、ボールキャリーでチームの誰よりもゲインできる状況が増えたことは成長だと思います。シーズン最初はあまり周りが見えていなくて「自分が自分が」とプレーしていたのですが、最近は自分だけではなくてチームのことやFWのこともうまくできていると思います。
――スクラムはいかがでしたか
 FWとしては、明治のスクラムに対して自分たちのスクラムをやるというのがベストですが、今日はチームが勝つためにダイレクトフッキングという選択をしました。それが良い方向に転んだので良かったですが、スクラムはもっともっと課題が出たので、そこは修正していきたいと思います。
――「1メートル、1センチにこだわる」という発言がありましたが、体の使い方などで意識できたことはありましたか
 自分は外国人の選手のように真正面から相手を飛ばすという選手ではないので、うまく相手をかわしながらゲインするというところ。それはできたと思いますし、最後の方は「いけるな」という感覚がありました。今日はメンタリティもボディコントロールも良かったなと思います。
――初めての大学選手権となりますが
 対抗戦と違う雰囲気になると思いますが、自分のやることは変わらないので、周りの環境に流されず、自分のやるべきことを明確にする。そして、それらを毎試合できるように、これから準備していきたいと思います。
――先制されてから逆転に向かうまで、どのような気持ちでプレーしていましたか
 そんなに焦ることもなく、先輩方が「自分たちのアタックをしていればトライをとれるから」と言ってくれて。そうしてうまくまとめてくださったので、不安なくプレーできました。
――FWの中で、今までよりもよくできたことは何でしょうか
 FW周辺のディフェンスは、自分の役割や立ち位置を明確にしようということを決めていて、それはできました。1on1では明治大学さんの大きなFWに勝てなかったと思いますが、2人でタックルできて、それが点を返せた要因ではないかなと思います。FWが引かずに前に出られたということが、ディフェンス全体として良かったです。
――チームとして成長を感じたことは
 後半に明治大学さんに攻められて、自陣の奥深くでスクラムやラインアウトをすることがありましたが、そこで自分たちのディフェンスなどによって相手に簡単にスコアさせなかったことが成長かなと思います。

SH宮尾昌典(スポ1=京都成章)
――試合を振り返って
 今日の試合は、僕自身すごく課題が見えた試合でした。ファーストトライについて、こぼれ球をトライできたのは良かったです。
――こぼれ球は予測できていたのですか
 ディフェンスでプレッシャーをかけることができていたので、僕が明治ボールに対して反応できたのかなと思います。
――初めての大学選手権となりますが
 今よりも自分に厳しく、チームにもっと溶け込んで、勝利に貢献できるようにしていきたいと思います。
――先制されてから逆転に向かうまで、どのような気持ちでプレーしていましたか
 先制点は取られたものの、ゲインもとれていましたし、チームとしてやってきたことをやろうと思っていました。そんなに焦ってはいなかったです。
――チームとして成長を感じたことは
 慶応戦で後半に攻められてスコアされてしまうシーンがありましたが、今日は後半にスコアされなかったので、そこは成長だと思います。
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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