【水戸】私のミッション・ビジョン・バリュー2021年第10回 大崎航詩選手「全てのことには意味がある」

水戸ホーリーホック
チーム・協会

【©MITOHOLLYHOCK】

水戸ホーリーホックでは、プロサッカークラブとして初めての試みとなるプロ選手を対象とした「社会に貢献する人材育成」「人間的成長のサポート」「プロアスリートの価値向上」
を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。

多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。

その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。

ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針

原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。

今季も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2021年第10回は大崎航詩選手です。

(取材・構成 佐藤拓也)

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Q.MVV作成のための面談はどのぐらい行いましたか?
「1時間強の面談を計4回行いました」

Q.MVVを作成してみて感じたことは?
「たまに自分のサッカー人生を振り返ることはあるのですが、言葉にして人に伝えることはありませんでした。自分がその時何を思っていたのかとか、何を思ってここまで来たのかということが自分の中でより明確になりましたし、自分が何をしている時に最もやりがいを感じるのかということも再確認できました」

Q.新しい発見はありましたか?
「今まで気づかなかった思いに気づくことがありましたし、今まで考えたこともなかったことを考えるようになって、それを言語化することができました。新しいことを考える時間にもなりましたし、自分の過去を振り返る時間にもなりましたね」

Q.大崎選手は言語化する能力に長けていますよね。そのために何か意識して取り組んでいることはあるのでしょうか?
「昔から議論するのが好きなんですよ。家族で話し合うことが多かったんです。その時にどれだけ感情的にならずに言葉を選んで分かりやすく相手に伝えるかが大事だと学びました。特に『分かりやすく』が大切だと気づきました。難しい言葉で話しても相手に伝わらなければ意味がない。かといって、簡単すぎると相手にされない。そういうことを考えながら適切な言葉を選んで話すようにしています」

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Q.まずMISSIONについて聞かせてください。「自分を支えてくれている人に感謝を忘れず、支えてくれている人と最高の時間を共有する」という言葉になった理由は?
「この言葉のきっかけは自分のおじいちゃんとおばあちゃんです。自分がサッカーをはじめてから高校3年生まで全国大会に出たことがありませんでした。自分は全国高校サッカー選手権大会に憧れて、高校サッカーの道に進みましたし、テレビで見ながら『この舞台に俺は出る』と家族に言っていました。高校3年生の冬に出場することができて、準決勝まで勝ち進むことができたんです。準々決勝の東福岡戦におじいちゃんとおばあちゃんが大阪から試合を見に来てくれたんです。そこで勝つことができたのですが、大会を終えて大阪に帰った時、2人から『今まで生きてきた中で最高の年末年始を過ごすことができた』と言ってもらえたんです。その言葉が本当にうれしかったし、ここで終わらせたくないという思いがこみ上げてきました。高校の全国大会でそれだけ喜んでくれるんだったら、さらに上の世界で活躍すれば、もっと喜んでくれるんじゃないかと思うようになったんです。その時からおじいちゃんとおばあちゃんをはじめ自分を支えてくれる人や応援してくれる人に対する感謝の気持ちを忘れず、最高の瞬間や喜びを共有してもらえたら、それが自分にとっての喜びだと思うようになりました。自分のMISSIONに終わりはないなと思いますね」

Q.おじいちゃんとおばあちゃんは「支えてくれる人」の象徴的な存在ということですね。
「自分がこの考えを持つきっかけを与えてくれたのがおじいちゃんとおばあちゃんだったということです。この世界に入ってから出会ったサポーターやファンの方にも支えてもらっているので、みなさんに勝って喜んでもらえたら本当にうれしいですし、負けて叱咤激励されることもありますが、自分と時間を共有してくれていることが自分にとって喜びです。自分や自分が所属しているチームを応援している人と最高の時間を共有したいという思いを常に持っています」

Q.特に水戸の場合、サポーターとの距離が近いので、「共有」している実感が強いのでは?
「それはあると思います。試合前から熱いサポーターが思いを伝えてくれますし、負けた時には厳しい言葉をかけられます。そういう方々がいることは自分たちの成長のきっかけになるので、これからもいい時間を共有できればと思っています」

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Q.VISIONは「世の中においての楽しい時間を全員で共有できる世界を作る」。どういう思いで選んだ言葉でしょうか?
「『最高の時間を共有する』ことが自分のMISSIONだと考えています。ただ、『楽しい』こともできるだけ多くの人と共有できるようになりたい。一番大きく言うと、世界中の人とそういう時間を共有したい。それが自分の最高到達点だと考えています」

Q.サッカー選手としてカテゴリーを上げていくことによって、多くの人を巻き込むことができるようになります。水戸で言えば、昇格すれば、水戸のサポーターだけでなく、この地域の方々と喜びを共有できますね。
「その通りだと思います。自分の現状の立ち位置や立場によって、共有できる人の数は変わっていくと思います。自分が活躍することによって、そういう人を増やしていって、その方々と時間を共有していくことが自分の目標です」

Q.そういう「世界を作る」ためにアスリートとして貢献したいと思っているのですね。
「自分はそう思っています。今の自分にできることはサッカーを通して、そういう時間を作ることだと思っています。たとえサッカーでなくとも、自分のやりたいことは変えることなく、『楽しい時間』を多くの人と共有できるようにしたい。それが自分の考えていることです」

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Q.VALUEについて聞かせてください。一つ目は「支えてくれている人への感謝を忘れない」。
「自分が頑張る理由、頑張れる理由は支えてくれる人や応援してくれる人がいること。自分が全国高校サッカー選手権大会に出場した時、両親が泣いてくれたり、おじいちゃんとおばあちゃんが喜んでくれたりした姿を見て、『もっと頑張りたい』と思うようになりました。そういう人たちに対する感謝の気持ちを絶対に忘れたくないと思っています」

Q.忘れないように思い出すようにしていることもあるのですか?
「選手権後にかけられた言葉を忘れないようにしていますし、たまに電話をして声を聞くことも大切にしています。電話するだけで喜んでくれるので、『また頑張ろう』と思うことができ、自分の目標が明確になる。なので、自分から積極的に連絡を取るようにしています」

Q.2つ目は「自分が一番楽しむこと」。
「どれだけ一生懸命やっていても、しんどそうな顔をしていたら、周りから心配されると思うんですよ。自分が一番楽しそうな顔で心から楽しめていれば、周りにも伝わると思う。『人のため』と思いすぎると、それがプレッシャーになることもあるので、まず自分が楽しんで、いいパフォーマンスをすることが、結果的に周りの人を幸せにすることができると考えるようにしています」

Q.3つ目は「壁にぶつかった時こそ前向きに取り組む」。
「大学の時からけがが多かったですし、プロに入ってからもすぐにけがをしてしまうなど、今まで何度も壁にぶつかったり、立ち止まったりすることがありました。でも、自分に起きているすべてのことに意味があると思っています。その時に気づけなかったとしても、後々振り返ると意味が見えてくる。この先、試合に出られなかったり、思うようなプレーができなかったりすることがあるかもしれません。たとえそうなったとしても、それも絶対に自分にとって意味があると考えるようにしたい。うまくいっている時は誰でも前向きになれると思いますが、うまくいかない時こそ前向きになって『このことには必ず意味がある』と頭に入れて取り組むことができれば、これから先で見えるものが変わってくると思う。なので、その考えを大事にしたいと思っています」

Q.この言葉は今年けがした時に出てきたのでしょうか? それとも以前からこの言葉を大切にしていたのでしょうか?
「大学時代にけがを繰り返しながらも評価してもらえたからこそプロになれたと思っています。今年けがをしましたが、その期間で体重を増やすことができ、当たり負けしなくなりました。そういうように何かしら意味があると思っています。今回のけがもプロに入る洗礼だと考えましたし、『自分の体はプロに適していない』というメッセージだと捉えました。サッカーができないことはつらかったですけど、日々の取り組みに関してまったく後ろ向きになることはありませんでした。むしろ、『絶対にどこかで必要な時間になる』と思うことができていました。大学4年間があったからこそ、この言葉を大切にしていますし、今回のけがも乗り越えることができたと思っています」

Q.最後は「自分が置かれた場所で最大限の努力、役割を全うすること」。
「今までのサッカー人生で唯一尊敬している人がいるんです。自分が大学4年の時のキャプテンです。その人は自分と同じタイミングでAチームに上がりました。でも、彼は試合に起用されていたのに、自分は起用されませんでした。『(試合に出るために)Bチームに戻りたい』とか、『試合に出ないと意味がない』とか、彼に向かって愚痴をこぼしていたのですが、彼は僕にこう言ったんです。『置かれた場所で咲きなさい』と。その言葉を聞いた時、奮い立たされました。いくら自分が高望みしても、今立っている場所は変わらない。自分ができることの幅がいきなり増えるわけでもない。今いる場所で最大限のことをすることが、結果的に自分が望んでいるところにつながっていくと思うようになりました。なので、この言葉を選びました」

Q.人生において、いい仲間の存在は大きいですね。
「そういうことを言ってくれる人が周りにいたことは自分にとっての財産です」

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Q.最後にスローガンについて聞かせてください。「全てのことには意味がある」。
「先ほど話したように、壁にぶつかった時、自分が立ち止まってしまった時、絶対に後ろ向きの気持ちになったり、『どうせ自分なんて』という考えになったりしがちなんですよね。でも、起きうることにはすべて意味があると思っています。昨年新型コロナの影響で大学サッカーリーグが中断した時には『サッカー選手になれないんじゃないか』と思うこともありました。でも、結果的にその期間で取り組んだことがリーグ戦再開後に実を結び、チームは優勝できましたし、自分はプロになる夢をかなえることができました。それも中断した期間があったからだと思っています。今まで自分が負ったけがも自分の取り組みの甘さや体の弱さが原因だったと思っているので、そういうところから見つめ直すことができました。その時気付かなかったことや気付けなかったことも後になれば、『あの時があったから』と思えるようになる。逆に言えば、これから起こることにも意味があると思えていれば、その時の取り組みも変わってくる。絶対にすべてのことに意味があると自分の中で持っておけば、これから先何があってもぶれることはないと思っています。なので、この言葉をスローガンに選びました」

Q.これまでの経験でその言葉を実証してきています。だからこそ、その言葉の重みが増していますよね。
「自分の人生を振り返って、目標がかなわなかったということが結果的にないんです。遠回りしたり、足踏みしたりすることはありましたが、高校選手権に出場することができましたし、大学でも4年間いい仲間に恵まれて、プロになることもできた。けがなど壁にぶつかる時期もありましたが、その時間にも意味があったんだと思うことができています。この考えを過去だけでなく、未来に持って行くことができれば、どんな出来事があってもぶれなく前に進むことができると思っています」
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著者プロフィール

Jリーグ所属の水戸ホーリーホックの公式アカウントです。 1994年にサッカークラブFC水戸として発足。1997年にプリマハムFC土浦と合併し、チーム名を水戸ホーリーホックと改称。2000年にJリーグ入会を果たした。ホーリーホックとは、英語で「葵」を意味。徳川御三家の一つである水戸藩の家紋(葵)から引用したもので、誰からも愛され親しまれ、そして強固な意志を持ったチームになることを目標にしている。

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