【早大競走部】佐藤航希×菖蒲敦司 駅伝シーズン直前特集 第5回 

チーム・協会

【撮影に応じる菖蒲(左)と佐藤航【早稲田スポーツ新聞会】】

【早稲田スポーツ新聞会】

第5回 佐藤航希×菖蒲敦司

【早稲田スポーツ新聞会】 取材・編集 栗田優大、高橋優輔

今回登場するのは、佐藤航希(スポ2=宮崎日大)と菖蒲敦司(スポ2=山口・西京)の2年生コンビ。前半シーズンでは、ともに5000メートルでの自己ベスト更新、関東学生対校選手権(関カレ)での入賞と活躍を見せてきた。成長途上の二人に、ここまでの振り返りと駅伝シーズンへの思いを伺った。

※この取材は9月11日に行われたものです。

仲の良い二人の印象は

――これまでにお二人で一緒に取材を受けたことはありましたか

菖蒲 なかったですね。

――競走部Twitterでの投稿や4月の早稲田大学競技会後のコメントから仲が良いと感じたのですが、いつからの知り合いですか

佐藤 高校1年生の国体(国民体育大会)の時の表彰式だったかな。そこで話したのが記憶にありますね。

菖蒲 大会等で会うのはなかったのですが、数回、SNSを通じて連絡しあうくらいでしたね。

――仲が良くなったのは大学に入ってからだと

菖蒲 そうですね。

――お互いの選手としての特徴や強みはどのようなところですか

菖蒲 (佐藤は)高校時代からロードにかなり定評があって、都大路(全国高校駅伝)の結果や、各都道府県の駅伝大会の結果を見たら分かる通り、ロードの大会では外さないというか、強かったです。でも今シーズン入って5000(メートル)で自己ベストを出したり、ハーフ(マラソン)で結果を出したりと、さらに強さがましたかなと思います。

佐藤 (菖蒲は)高校のときから特にトラックで活躍していて、かなりスピードのある選手だと思っていたのですが、1500から、大学に入ってハーフの距離まで適応していて。マルチにレベルの高い域でやっているので、すごいなと思います。

――競技面以外での他己紹介をしていただけますか

菖蒲 ミニマリストで部屋に物がないですね。

佐藤 必要最低限の家具とインテリアを揃えるのが好きなので、できるだけきれいな状態にするのが好きです。

――佐藤選手からみた菖蒲選手はいかがですか

佐藤 どうですかね(笑)。いい意味で寂しがりやって感じがします。

一同  (笑)

菖蒲 ずっと僕の部屋にいるんです(笑)。

佐藤 すぐ(菖蒲が)部屋に来るんですよ(笑)。自分が積極的にいくことはあまりないのですが、かまってほしいみたいなのが結構あります。

菖蒲 基本一人でいるので、いつも空いているというか。ひまな時に基本いるので、いいと思います。

ともに高め合って出した自己ベスト

4月の早大競技会5000メートルでともに13分台を出した佐藤航(左)と菖蒲 【早稲田スポーツ新聞会】

――前半シーズンを振り返っていただけますか

佐藤 3000(メートル)から始まったと思うのですが、結構毎年トラックは外しているというか、苦手意識がだいぶあって、昨年も11月くらいまで試合に出ていませんでした。高校の時も前半シーズン、トラックシーズン全部外しているので、大学に入ってもあまり気合が入っていなかったというか、結局前半のトラックはだめなのだろう、いつも通りそんな感じなのかなという感じで過ごしていました。
 菖蒲と練習する機会が増えてからですかね、同じ5000を指標にする機会があって、13分台を出したときですが、それに向かって一緒に練習するあたりから、状態も上がってきました。菖蒲の影響が大きいと思うのですが、トラックシーズンでも自分でも手応えをつかめて、試合に向けても手応えがあって、どんどん乗せてもらってというか。それで結果が出たという感じですかね。

菖蒲 僕はトラックがすごく好きなので、かなり意気込んでシーズンインしたのですが、100点以上の結果をあげられるのかなと思います。本当に佐藤が言ったように一緒に練習したというのもあって、練習から私生活から学校生活までずっと一緒なので、お世話係じゃないですが(笑)、ずっと、佐藤について動いているので、僕のやりたいようにジョグするぞって言ったらジョグをして。そんな感じでやったので、ストレスフリーで今シーズンは練習できていて、それもあって予想以上の結果を出すことができてよかったです。

――お二人とも前半シーズンで結果を残されましたが、伸びしろだと感じた点はありますか

佐藤 自分はハーフで走ったのですが、試合の前はそんなにきっちりと練習を積めているわけではなかったですし、ちょっと不安な部分もあり、しっかりとした準備というわけではなかったです。その状態でもある程度入賞のラインまでいけたのは、自分にも伸びしろというか、もっと練習を積んで自信を持ってスタートラインに立てれば、まだまだ結果も伸びると感じました。

菖蒲 今シーズン初めて日本選手権、日本最高峰の舞台に出場させていただいて、今までのレースとは全く別物というか、自分がトップとか優位な状況にいない中でのレース展開だったので、やっぱり苦しい部分が多かったです。大学2年生の段階で経験できたのは大きいと思うので、今後大きな大会に出場した際も気持ちで負けない、スタートラインに立つときから自信を持てるように準備すると同時に、そこで結果を出せるような選手になっていきたいなと思います。

――先程、菖蒲選手との練習でトラックに対して手応えを得られたと仰っていましたが、それ以外の点で今シーズンの成長につながったと感じるところはありますか

佐藤 単純に走る距離が増えたのかなっていうのがあります。高校時代も長い距離を走るのは好きでしたけど、大学に入ってからもそれを継続して、週単位とか月単位ではなく、2ヶ月とか3ヶ月単位で距離をトータルして踏めたということが、結果として良かったのかなと思います。

――関カレのハーフマラソンに出場する際、体づくりの意味でもあえてハーフを目指して練習したと仰っていましたが、体づくりは順調にきていますか

佐藤 関カレが終わってからトラックにシフトして、結構走行距離が落ちました。また、夏合宿はケガで復帰途中なので、また走行距離を増やしていっているという感じです。

「起きること起きることは必然」(佐藤)

質問に答える佐藤(右) 【早稲田スポーツ新聞会】

――夏季練習での自身のテーマや目標はどのようなことを掲げていますか

菖蒲 一つはケガなく練習を積むことをあげてはいました。僕も佐藤と同様、ケガして足踏みした部分はあったのですが、今はケガなく練習できているのでそこはいい点ですね。継続はできているのかなと思います。

佐藤 去年はBチームで、初めてAチームで過ごす夏だったのですが、相楽さん(相楽豊駅伝監督、平15人卒=福島・安積)から言われた通り、ポイント練習などの一回ごとの質は多少他の選手より劣っても、距離で稼いで走行距離を伸ばすことを意識しました。その成功の体験が前半シーズンにあるので、ある程度ポイント練習の質を落としても距離を踏んで、継続するのがテーマではありました。

――夏季練習ではどんなトレーニングをしましたか

菖蒲 ジョグばっかりですね(笑)。ジョグとか距離走していて、ケガしてからは一緒にウォーキングしたりとか補強したりとかそんな感じでした。単純な練習ばかりです。

――長い時は1日でどのくらい走りましたか

菖蒲 僕は結構一次合宿はうまくいって、二次でケガしてしまって二次の後半でまた上がってきて、それで今(取材当時)三次(合宿)ですが、今が一番距離を踏んでいますね。1日40〜50キロくらいは走っています。一昨日は51キロくらい走りました。

――夏季練習で手応えを感じたところはありますか

菖蒲 ケガして休んでしまいましたが、1週間くらいの休養だったので、むしろトラックシーズン詰め詰めだった分、しっかり休ませてもらったということで、そこはプラスに捉えました。最近もスピード練習だったり、長い距離を走る練習だったりが多くなっていますが、その中で余力を持ちながら練習ができているなというのが去年と違ってあります。なので、その点今年は去年よりいい走りができるのかなと思います。

佐藤 高校時代の話にはなりますが、高校1年から3年、大学と、これまでずっと夏はほとんど練習ができていませんでした。秋以降9月、10月 あたりから走り始めるというか、その辺からしっかり気持ちを入れてくという感じでした。毎年、故障して夏はあまり消化しきれていないので、今年も特に不安はないというか、これまで通りという感じです。
 起きること起きること必然だと思っているので、ここでケガしたのも何か必然だと思っています。前半シーズンの休養という意味かもしれないですし、またケガして自分の体により詳しくなるというか、体のメカニズムを学べたということは走り始めてからも絶対プラスになります。そういう意味では良かったというふうに思っています。

――一方で課題だと感じたところはありますか

菖蒲 ずっと課題にあげている中間疾走ですね。途中でバテてしまって、持ち味であるラストスパートが発揮できないというレースが失敗レースの時はよくあるので。夏合宿でもそこを鍛えないといけないと思いながらやっています。

佐藤 継続力ですかね。毎年ケガしているって言いましたけど、ケガしないに越したことはないと思っているので、継続して行える力があればいいかなと思います。

――お二人とも、他のAチームメンバーより少し長く合宿先に残っていましたが、その狙いは

菖蒲 先程述べたように二人共通してケガをしてしまったので、その遅れた分を取り戻す意味も込めて1週間残ることになりました。

――佐藤選手も同じ理由ですか

佐藤 そうですね。同じで、Aの二次でお互いケガしたので、そこである程度完治というかまた走り始めて、Bに合流して、走行距離を稼ぐという意味で残りました。

――1カ月後に出雲駅伝を控えて、いよいよ駅伝シーズンが始まりますが、現在の調子は

菖蒲 ケガも完治して練習もしっかりできているので、出雲は前半区間で走りたいなとは思っています。山口県出身なので出雲が近いこともあって、近いところで走ることで(親も)うれしいと思うので、しっかり出雲は狙っていきたいなと思っています。

佐藤 現実的に今の復帰具合とか練習の消化具合とかを見ても厳しいとは思います。チーム全体で3冠を今年は目指しているので、気持ちはしっかり目指して、一緒に流れに乗って練習していきたいです。そうすることで、結果として出ないとしても自分自身にしっかり返ってくると思うので、出ないから関係ないということじゃなくて、しっかりみんなの流れに乗って、同じ気持ちで頑張りたいなと思います。

――先日、辻文哉(政経2=東京・早実)選手と諸冨湧(文2=京都・洛南)選手にお話を伺った際には、ポイント練習で2年生が引っ張っていると仰っていました。2年生の学年間での雰囲気はどのような感じですか

菖蒲 昨年はやっぱりついていくだけでしたが、Aチームの半数を2年生が占めているので、引っ張っていかないといけない学年になったのかなと実感が湧いています。なので、その点で前に出て走る選手が多くなったのかなと思います。

佐藤 僕から見てですが、2年生のどの選手を見てもレベルが抜けているというか、トップクラスの選手が集まっています。スピード系になれば菖蒲だったり栁本(匡哉、スポ2=愛知・豊川)だったりとバチバチにやり合うみたいな。ロードになって距離が伸びてくれば、辻とか諸冨とかが強くて、いい刺激を高いレベルで与えあえるような存在というか、いい雰囲気で練習ができていると思います。

――佐藤選手はこうして刺激を受けているという話がありましたが、菖蒲選手はいかがですか

菖蒲 誰だろう(笑)。他に干渉するっていうことがあまりなくて、みんな頑張っているので頑張んなきゃなぐらいです 。誰々が頑張っているから、とはあまり思わないですね。

――トラックシーズンでは数多くのレースに出走されましたが、その疲労が抜けた状態で合宿に臨めましたか

菖蒲 一応数日オフをもらいましたが、それでも始まってからはきついなというのが、一次合宿期間中にはありました。

――夏合宿中にスタミナ強化ができたと感じた場面はありましたか

菖蒲 一つ具体的に上げるなら、二次合宿で最後Bチームに残って1週間やったのですが、最後の日に1人で3000(メートル)3本というメニューを課せられました。1人で3000を3本をやるのは初めてだったので、ちょっと怖かったです。でも案外一人でも走ることができたので、最後に成長しているのが実感できました。今までできなかったようなメニューが1人でできるようになって、長い距離に自信がつく結果でした。

――スピード強化が生きた場面はありましたか

菖蒲 このトラックシーズンすべて勝ちパターンが一緒だと思うのですが、最後差すっていう感じで。今まではそこに持っていくことができない場面が多かったのですが、そこまでしっかり耐えることができて、ラスト400か300でスパートを出せるのが自分の強みだと思うので。今シーズンはほとんどのレースでそこまでつなげられたのは成長したなと思います。

――佐藤選手にお聞きします。メンバー争いを勝ち抜いて、駅伝メンバーになるためにどのようなことが求められると考えていますか

佐藤 近年駅伝でもスピードも重視されてきて、自分が得意なスタミナだけでは戦えないというのは分かっています。せっかく同期にスピードのある選手がたくさんいるので、これから一緒に練習していくことで、自分自身もスピードに関してもっと強くなれると思います。

「戦える力はあると思う」(菖蒲)

――駅伝ではチームの中でどんな役割を果たしたいと考えていますか

菖蒲 僕はやっぱりスピードを生かせる前半区間を走りたいと思っています。3つの駅伝全てでスターターというか、ある程度前半の区間、それじゃなくてもしっかりチームに貢献できるような走りができるように。今シーズンは先ほど言ったように戦える力はあると思うので、自信を持ってやっていきたいなと思います。

佐藤 現段階の話にはなるのですが、格上の選手と戦うためには自分はアップダウンがある方がいいなと思っています。その方がレースの中にもシチュエーションが増えて、勝てるチャンスが増えてくると自分の中では思っています。多少自分よりも速い選手であれば、上りを使ったり、下りを使ったりで、色々な場面で戦術を変えて戦えるので、そういう区間で勝負したいなと思います。

――最後に個人の目標と意気込みをお願いします

佐藤 駅伝の結果で言うと、区間上位で走ることがチームのためにもベストだと思うのですが、区間上位を狙っているとそれ以下の結果になると思います。区間賞狙っていって、結果的に区間上位っていうふうになればいいかなと思います。すこしばかにされると思うのですが、区間賞狙っていって、自分の目標である区間上位でというふうに考えています。

菖蒲 僕は目標を詳しく立てるってことはあまりしないので、チームの流れに乗って自分の走りができたらいいなとは思っています。

――ありがとうございました!
◆佐藤航希(さとう・こうき)
2001(平13)年8月2日生まれ。168センチ。宮崎日大高出身。スポーツ科学部2年。

◆菖蒲敦司(しょうぶ・あつし)
2001(平13)年12月16日生まれ。168センチ。山口・西京高出身。スポーツ科学部2年。
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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