【卓球】中国に本気で勝ちにいった女子、金・銀・銅と3つのメダルを獲得

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【(C)Getty Images】

Tokyo2020(東京五輪)が閉幕した。卓球女子日本代表は、伊藤美誠/水谷隼ペアが、混合ダブルスで金メダルを獲得。シングルスでは、伊藤美誠が銅メダルを獲得。団体では、オールストレート勝ちで決勝まで進み、王者中国に負けはしたが、銀メダルを獲得した。

ここでは女子の伊藤美誠、石川佳純、平野美宇、各選手の戦いぶりを振り返りたいと思う。

■3種目すべてでメダル獲得、走り抜けた伊藤美誠

日本チームで唯一、3種目に出場した伊藤美誠。約2週間の長丁場を一気に走り抜けた。

東京五輪のスタートは水谷隼との混合ダブルスから。準々決勝のパトリック・フランツィスカ/ペトリサ・ソルヤペア(ドイツ)戦では、絶体絶命のピンチを迎えるも、なんとか大逆転勝ちでしのぎ切る。本来のプレーを出すことができなかった伊藤は、試合後に悔しさと安堵の涙を見せた。

その後の準決勝、林昀儒/鄭怡静ペア(チャイニーズタイペイ)戦では、伊藤らしいプレーが復活した。男子シングルスで4位になった林昀儒に対しても、押されることなく真っ向から打ち合い、伊藤が水谷を引っ張り4-1で完勝した。

決勝は許昕/劉詩雯ペア(中国)との対戦。序盤は中国ペアに押されミスが出ていたが、中盤以降は対応。シーソーゲームとなる。ドイツ戦では、珍しく表情が曇りプレーも弱気になっていたが、決勝では競った場面でも表情を崩さず、最後まで自分のプレーと水谷を信じ戦い抜いた。

王者・中国に勝利し、日本卓球界初となる金メダル獲得。静岡県磐田市生まれで、同じクラブ(豊田町スポーツ少年団)出身の2人のプレーに日本中が感動した。

第3シードで臨んだシングルスは、準々決勝まで圧巻の戦いぶり。盤石のプレーで負ける要素が全く見当たらなかった。そして準決勝では、同い年のライバル孫穎莎(中国)と対戦。接戦が期待されたが、結果的には1ゲームも取れず敗戦となった。中国チームは、完璧に伊藤のプレーを研究しており、孫穎莎の凄まじい気迫、集中力も見事だった。

悔しい敗戦だったが気持ちを切り替え、3位決定戦では、石川が敗れたモンユ・ユ(シンガポール)に完勝し、日本女子初のシングルスでのメダルを獲得。しかし、試合後のインタビューでは、「悔しい気持ちの方が大きい」と答えた伊藤。日本卓球界で一番高い目標を持っているのは、伊藤だと実感した。

団体では、決勝戦では再び孫穎莎と対戦。リベンジが期待されたが、またも敗戦を喫した。しかし、準決勝までは相手チームとのエース対決に勝利し続け、日本のエースとしてチームを引っ張った。

結果的に、金、銀、銅と3つのメダルを獲得した伊藤。素晴らしい結果に拍手を送ると同時に、次回こそシングルスでの中国越えを期待したい。

■シングルスの敗戦から切り替え、団体で躍動した石川佳純

シングルスに第5シードで臨んだ石川佳純。準決勝まで中国選手と対戦しないドローとなり、初のシングルスメダル獲得のチャンスに思えたが、残念ながら準々決勝で、今大会好調のモンユ・ユに敗れる。試合後はショックを隠せず、団体への気持ちの切り替えが心配されたが、その不安をかき消す素晴らしいプレーを見せてくれた。

団体では、平野美宇とのペアでダブルスに出場。東京五輪のメンバーが決まってから平野とのダブルスを強化してきたが、今までで最高のコンビネーションを見せ、勝利を重ねた。五輪初出場となる平野に対し、試合中は常に声をかけ支え続け、石川自身もアグレッシブで攻撃的な、素晴らしいプレーを披露。まさに、シングルスでの悔しさを団体にぶつける充実した戦いぶりだった。

そして、中国との決勝戦。陳夢/王曼昱ペア(中国)に対しても1ゲーム目を奪い、本気の中国と渡り合ったが惜敗。しかし、十分に勝つ可能性を感じさせるプレーだった。

リオデジャネイロ五輪後は、伊藤、平野を筆頭とする若手の台頭により、苦しい戦いが続いていた石川。試合でも常に厳しい表情で余裕がなく見え、思い切ったプレーができなくなっていたように感じる。

しかし、東京五輪の団体では、試合中のイキイキとした表情がとても印象的だった。プレーでも積極的に仕掛け、そんな石川の戦いぶりに胸を打たれたファンも多いと思う。ロンドン、リオ、東京と3大会連続でメダルを獲得したのは、日本卓球界で石川佳純だけだ。長年日本女子を支え続けてきた、彼女に改めて敬意を表したい。

■今後の活躍に期待が膨らむ、充実のプレーを見せた平野美宇

念願の五輪初出場となった平野美宇。卓球競技最後の女子団体からの出場となり、全試合で石川佳純とのダブルス、3番目のシングルスに起用された。

五輪という誰もが緊張する大舞台で、平野の表情は柔らかく、常に冷静にプレーしているように見えた。まず、石川とのダブルスでは、サーブ、レシーブで力を発揮。しっかりとコントロールされた巻き込みサーブで、相手に上手くレシーブをさせず、石川の3球目攻撃に結び付けた。

レシーブでは一発で決まるフォアフリックで、しばしばノータッチで得点。ラリーになると、バックストレートへのバックドライブの得点力は高く、常に攻撃的なプレーで仕掛けていたのが印象的だった。

シングルスでは、さらにプレーの幅が広がり、平野本来の高速プレーで得点を重ねた。ラリー中では、フォアハンド、バックハンドで、クロス、ストレートとコースを狙うことができ、試合を重ねるにつれて、どんどん調子が出てきたように思う。

速いプレーをしながらも安定性は損なわず、準決勝までは全く負ける気配を感じさせない、素晴らしいプレーだった。決勝の中国戦でも、積極的なプレーを貫いたが、勝利するまでは至らず。

今大会の平野は、試合中の表情も良く充実のプレー振りだった。今後の活躍が十分に期待でき、さらに強くなる選手であることは間違いない。

■打倒中国を目指す、日本女子チーム

日本女子チームは、東京五輪が中国に本気で勝ちにいった初めての大会になった。中国の壁はまだまだ高く、決勝では完敗を喫したが、今大会の3選手のプレーは、もしやと思わせる戦いぶりであったと思う。

混合ダブルスで中国ペアを倒し、金メダルを獲得することができたように、勝負の世界に絶対はない。パリ五輪まで3年。パリの舞台での日本女子のプレーが早くも楽しみである。

文=照井雄太
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