【選手とスポンサーの関係を考える対談|田口元気×玉川華帆】「#ThanksRespect」プロジェクトとは、母の日や父の日に、両親にありがとうと伝えるような感覚

SAL
チーム・協会

【本田好伸】

今シーズン開幕前から、フットサル選手のSNS界隈で見られるようになったあるハッシュタグがある。

「#ThanksRespect」

選手やクラブが、スポンサー企業やサプライヤーの企業紹介や感謝の想いを投稿する際に、共通のタグをつけて発信している。6月19日に開幕した女子Fリーグでは、試合会場の看板にもこのタグが掲げられた。

Fリーグや女子フットサルで少しずつ拡散されているこの活動の狙いはなにか。率先してこの投稿をスタートしたフウガドールすみだのキャプテン・田口元気と、フウガドールすみだレディースの18歳・玉川華帆に、選手とスポンサーとの関係、そしてSNSの活用方法など、一味違った角度で話を聞いた。

サプライヤーは、毎日、肌で感じられるスポンサー

──今日は、最近よく見かける「#ThanksRespect」というハッシュタグのことから教えてください。スポンサー企業紹介やお礼を伝えるツイートをされていますが、どういった活動なのでしょうか?

田口 始まりは、Fリーグと一緒にフットサル界の価値向上について意見交換をした際のことでした。フットサルは、先人が築き上げてくれたおかげで今の環境があり、徐々にサポートしてくださる企業、サプライヤーが増えました。サポートしてくださる感謝の想いを胸に戦う選手はすごく多いのですが、一方で、その気持ちを表現できる機会はあまりありません。すでに出来上がった環境に入ってきた選手からすると、当たり前に感じてしまうこともあります。ですから、これから改めて目に見える形で感謝を伝えるアクションをしていこうと話したことがきっかけでした。

玉川 女子の場合は、今シーズンの新しいウェアをいただいた際に、かっちゃん(勝俣里穗)が写真を撮ろうと言って、それを彼女がSNSに率先してアップしてくれて、みんなで便乗しました。

田口 小さな行動だと思うけど、感謝の気持ちをフランクに伝えられたらいいなと。フウガでは、スポンサー企業の方と対談をしたり、一緒に企画をつくって形にすることなどもしているのですが、社員さんとつながれる経験はすごく貴重なんです。お互いに親近感がわいて、すごく良い関係を築けます。そういう試みをもっと広げていこうと話をしていて、まずはフウガドールすみだでやってみようとスタートしました。

玉川 ハッシュタグをつけて投稿することで、小さなアクションから大きなムーブメントをつくれたらいいですよね。男女を問わず、競技を問わず、広がったらうれしいですね。

田口 そうそう。たとえば、スポンサー企業にありがとうを伝える手段として、試合に勝つとかは当たり前じゃないですか。でも、改まって感謝を伝えようとすると重くなってしまう。しっかりやらないといけないと考えると、それが足枷になってしまい表現できなくなるので、もっとフランクに気持ちを伝えられたらいいなと。母の日や父の日に、両親にありがとうと伝えるような感覚でやってみようというのが、僕らの狙いですね。

──玉川選手は、すみだレディースに加入して2年目。すでに女子Fリーグという環境が整備されたところからトップカテゴリーに入ってきました。スポンサーはどんな存在でしょうか?

玉川 実は、まだきちんと考えられていないんです……。

──たとえば、クラブのスポンサー企業をすべて答えられたり……?

玉川 たくさんありすぎて、すべては答えられません。すみません。

田口 長くプレーしている選手でも、それはなかなか言えないですよね。

玉川 そうなんですね。最初の頃は、スポンサー企業さんに、日頃の感謝をどうやって返したらいいかもわからなかったですし、正直、深く考えることができていませんでした。むしろ、率直にどうしてスポンサーを引き受けてくれたんだろうと疑問に思うこともありました。でも、スタッフの方や、以前から所属している選手に、スポンサー企業にどんなことをしていただいているかを聞いて、すごく助けられていることを知りました。

──選手は、スポンサー企業から受ける恩恵をリアルに感じる機会が少ないのでしょうか?

田口 そうかもしれません。ただ、コロナ禍で考える時間が増えたこともあり、自分がプレーできることにありがたみを感じて、それを表現する選手が増えたと思います。自分がプレーできている環境や給料がどこから出ているのか、そうしたものに敏感になってきたのかなと思っています。

──スポンサーとの関わり方も、ただお金を出してもらうだけではなく、一緒に新しい価値を生み出そうとか、おもしろいことを仕掛けようとすることも増えましたよね。そうした変化自体に価値を感じます。

玉川 たとえば、今日来ているのは「sfida」を手がける株式会社イミオさんの事務所ですが、フウガドールすみだの男子と女子のサプライヤーをしてくださっています。フウガに入るまで、sfidaのことは知っていても、身に着けることはありませんでした。クラブに入って初めて着用したんです。そうしたら、素直にデザインがすごくかわいいなって。派手すぎない派手さがあり、それが着やすさにつながっています。サイズ感も好きです。ダボっとしていないからシルエットもかっこいい。水色の練習着、とてもお気に入りです!

田口 うん。好みはいろいろあるけど、みんなで着ると一体感があるよね。男子はチーター柄で、すごく派手だから、ベテラン陣はたじろいでいた人もいますけど(笑)。でも、まとまって着るとすごくかっこいい。さりげなく目立つというか。僕はsfidaに個人でサポートしていただいて7年以上が経ちますが、この数年は特に、日常でもすごく使いやすいデザインが多いです。普段、身に着けても、ちょっと違いを出せる。そういう意図が、ユニフォームや練習着にも反映されている。僕らからすると、サプライヤーさんは毎日、肌で感じることができるスポンサー。

玉川 数年前まで、女子の練習技着はバラバラだったんですよね。Fリーグに入ってから統一されたと聞きました。だから、先程の「当たり前じゃない」って、そういうことなのかなって。

田口 僕は、長年所属してきて、それをより感じますし、スポンサーとのつながりも密になってきています。

──選手とスポンサーとでつながれる感覚はいいですよね。

田口 今回、ハッシュタグ企画を始めて感じたのですが、普段は対面でも2対1とか1対1ですけど、SNSはより多くの人に拡散されますよね。そうしたなかで、スポンサー企業の社員さんからリプライをいただくことがあるんです。これはいいな、と。応援していただいていることをより実感します。普段からその方が応援してくれていることは知っていますが、相手がリアルに見えるから、スポンサーさんを身近に感じられる。すごく良い関係だと思っています。

【本田好伸】

──たとえば「sfida」にも作り手の方や広報さんなど、さまざまな人がいますよね。

田口 そうです。今シーズンから、僕が勤めている会社がスポンサーになったのですが、社内の雰囲気の変化をすごく感じます。みんな、フウガのことを気にしていて、会社の名前が少しでも露出されているだけで、社員の方はすごく喜んでいますし、モチベーションも高まるし、クラブの一員になったような感覚があります。

玉川 そうやって実感できるのはいいですよね。私は、身近にスポンサーを感じることが少なかったので……。

──今、サプライヤー企業に来ていますよ。

玉川 そうですね! ちょっと緊張します……でも、敷居が高くないかもしれないです。

田口 僕は、以前からイミオのオフィスにふらっと訪問したりします。そういうリアルな関係構築と同時に、SNSは今の時代にすごくマッチしていますね。ハードルが下がるから、選手も取り組みやすいし、それで盛り上がりをつくって、スポンサーさんと喜びを分かち合えたらいいなと。

SNSは、自分のブランディングとしても重要なツール

──玉川さんの周囲では、SNSをどのように活用していますか?

玉川 使っている選手も、そうではない選手もいます。私たちは「SNSネイティブ」と言われる世代ですけど、若いからといって全員が積極的なわけではないかもしれないですね。私は、TwitterとInstagramをよく使います。Facebookはやっていないです。TikTokは、やっていないですけどよく見ています(笑)。

田口 TikTokは、可能性をすごく感じますね。(矢澤)大夢とかは、自身のセービングをアップロードしていて、踊りではない方法ですが、すごくニーズがあるなと。踊りはちょっと、僕も苦手ですけど(苦笑)、SNSの力を改めて感じているので、チームでやってみようかな……。

玉川 どうしてTikTokやらないんですか?

田口 自分のブランディングとして、やらないと決めていましたが、風向きが変わってきたので、ちゃんとやろうかなと。僕らの世代は、試行錯誤しながら取り組んでいますね。

──たしかに、アラサー以降の世代にとって、SNSは「考えながら使うもの」ですよね。

田口 そうそう。SNSは自己発信のために使えるツールですよね。

──玉川さんが、「なんか難しいことを言っている」という顔をされています……。

玉川 大人だなって(笑)。

田口 ははは(笑)。でも、自分をどう見せるかは大事だと思う。これは、選手が監督に対する印象付けも含めて。女子日本代表の木暮賢一郎監督と、フウガドールすみだレディースの北隅智宙監督からは、求められるものが違いますよね。だから、選手がどう振る舞って、どう表現するのかはすごく大事。強い、速い、うまいだけではなく、監督のオーダーにどう応えられるかは、長くプレーするためには重要ではないかと思います。選手を9年目間続けてきて、今最近やっとそう思えるようになりました。

玉川 すごいです。

田口 以前から、自分がこうありたいから、こう見せたいということをすごく意識していたのですが、それがフットサルでもめちゃくちゃ重要だなと。日本代表合宿に行って、選手のオーラが違うと感じるのですが、それはみんなブランドがあるから。自分の表現方法を確立しているなと感じます。

玉川 なるほど、勉強になります!

玉川華帆が推す、W杯を目指すアラの選手は……

──すみだでは、トップチームとレディースチームの交流などはありますか?

玉川 たまにトップの選手が練習に来てくれますね。コジータさん(岸将太)はよく、ゴレイロをしてくれます。レディースのゴレイラがケガをしてしまったときに、練習に入ってくれたり。

田口 ケガをして回復してきたときに交ぜてもらうことがありますね。強度がちょうどいいので、僕も行ったことがあります。あとは、レディースの選手はトップの試合運営を手伝ってくれているので、そこでの関わりがあります。

玉川 でも、トップの選手は、名前はもちろん知っていますけど、それほど関わりはなくて。試合は見てます。ユニフォームを着て、ABEMAで応援しています。コメントは恥ずかしいので……。

田口 うれしいね!

玉川 全日本選手権決勝は、浜松に見に行きました! 男子のフットサルは普通に見ますね。

【本田好伸】

──では、今シーズン、玉川選手が推しているのは……?

玉川 実は、推しがいるんです!

──あれ……今日一番テンションが上がっていますけど……。

玉川 加藤未渚実選手です!

田口 (え、俺じゃないんだ)

──田口選手ではないんですね。

玉川 あ(笑)。

──加藤選手の、どんなところが?

玉川 左利きの選手は、自分にないものをもっているのでひかれますね。

田口 左利きはたくさんいるよね。なんでカツ(中田秀人)じゃないの?

玉川 中学生のとき、初めて見に行ったFリーグが大阪の試合でした。最初は、外国人選手に目を奪われていたのですが、何年か見ていたら、加藤未渚実選手、かっこいい!って思うようになりました。

──では、すみだでは?

玉川 甘利斗亜選手です!

田口 やっぱり左利きなんだね(笑)。未渚実と、顔の系統も似ているかも……?

玉川 田口選手もかっこいいですよ。

田口 もういいから(笑)。

玉川 あの、この話は使わないですよね?

──いえ、むしろメインの話かもしれません(苦笑)。というわけで、最後に今シーズンの意気込みを聞かせてください。

田口 強引に締めましたね(笑)。

玉川 昨シーズンは、チーム内で「いたの?」みたいにいじられるくらい影が薄かったので、存在感を出したいです。もっと堂々と、積極的に、たくさん点を取って、チームに貢献したいと思います。

──ポジションはアラですよね。今シーズンはいけそうですか?

玉川 新しい選手も入ってきて、違った戦いができると思うのですごく楽しみにしています。

──男子は、ガリンシャ選手が抜け、そして監督が代わりました。

田口 いろんな意味で試されるシーズンになると思います。チームの仕上がりは良いですが、どのように結果につながるのか、僕らも楽しみです。誰が主役になるのか、どんな立ち位置になるのか。須賀(雄大)さんとは180度違う監督の下でどうなるか。客観的に見て、今年のすみだはおもしろいと思います。

──どんなところが?

田口 今までのフウガじゃないというか、誰も想像できないと思います。荻窪監督は、Fリーグで初めて指揮を執りますし、その意味で、何をする監督かわからないですよね。想像できないことがおもしろいです。

──どんな監督ですか?

田口 余白が多いです。選手が考える比重が高いですね。監督が引き出しをたくさん見せてくれるから、そこから選手が何を選ぶのか。システマチックではなく、フリーな要素が多いですね。

──だからこそ、選手の選択によって掛け合わせがどうなるかわからない。

田口 そうです。だからどんなフウガになるのか楽しみです。

──田口選手は、W杯出場も目指しています。

田口 そうですね。でも、だから頑張るというより、フウガでどう戦うかのほうが今の自分には大きい。その先に日本代表があればうれしいですし、たくさんの人に応援してもらっているのでがんばります。自分の立ち位置が厳しいことは理解しているので、そこを突き破る活躍ができたら、チームにとっても大きいですからね。

──今日はありがとうございました。

玉川 すごく緊張しましたが、ありがとうございました!
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