【水戸】私の「ミッション・ビジョン・バリュー」第2回:細川淳矢選手『水戸に関わる全ての人のために』
【ⓒMITOHOLLYHOCK】
を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。
多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。
その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。
ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針
原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。
17名の選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
第2回目は細川淳矢選手です。
(取材・構成 佐藤拓也)
【ⓒMITOHOLLYHOCK】
「昨年からスタンス面談を行っていました。昨年は個人として何を大事にするかということの話をしていたのですが、今年は社会に対して何をもたらしていきたいかという趣旨で、昨年よりも枠を広げた内容の面談を行いました」
Q.30代中盤になって、サッカー選手である意義も変わってきて、自分の価値を見直したという感じでしょうか?
「年齢を重ねるにつれて感じることは多くなりましたし、クラブの歴史を知るにつれて、いろいろ感じることが増えています。面談を通して、そういった自分の中の考えがまとまったことはすごくよかったと感じています」
Q.MVVを作成することによって、自身の中の変化はありましたか?
「昨年の自分のMVVを見るたびにすごくモチベーションになりました。メンタルが落ちている時には『俺はこういうことを大事にしているから、ちゃんとやらなきゃ』と思えました。そこで見直すことで緩みが消えることがありました。言葉で残していると、自分が大切にしていることを思い出しやすく、気を引き締めることができるんです」
【Mission】
「昨年は『関わった人全員とともに感動を味わうために』という言葉でした。それとほぼ一緒だと思っています。アマゾンプライムやNetflixで海外のスポーツチームの1年を追ったようなコンテンツがあるじゃないですか。それを見て、ああいうチームになったらうれしいと思うんですよ。水戸の街を海外のサッカーチームのホームタウンのように盛り上げたい。日曜日の試合で駅から行列ができて、みんなが青いユニフォームを着て、飲食しながらスタジアムに向かう姿っていいですよね。水戸の市民が盛り上がる要因が水戸ホーリーホックになったらすごくうれしいですし、最高のことですよね。そういう雰囲気ができると、街全体が明るくなると思うんですよ。水戸ホーリーホックをそういう存在にしていきたい。水戸の街のシンボルになって、市民の生活の基盤になるような存在になりたい。なので、こういう言葉になりました」
Q.J1昇格争いを繰り広げた昨季終盤は大きな盛り上がりを作ることができました。
「あの経験は大きかったですね。あの空気感こそ、みんなで作る感動だと思いましたし、自分がサッカーをやっているすべてだと感じました。ああいう雰囲気を毎試合作りたいと思いますし、あれ以上のことを想像すると、すごくテンションが上がります」
Q.町が盛り上がるために大事なのは結果でしょうか? それとも地域貢献活動でしょうか?
「最近、『ノーサイドゲーム』というラグビーのドラマを見たのですが、すごく感じることがあったんです。主役となるチームは経営規模が小さく、ファンを増やすためにまずボランティア活動を行っていたんです。でも、選手の中で『ラグビーで結果を出すことが大事だから、ボランティアをせずに練習をやろう』という意見が出たり、本当にリアルなやり取りが描かれていたんです。両方とも決して間違っていないと思うんですよ。でも、個人的にボランティア活動をするにしても、する時の考えが大事だなと思うんです。選手が活動に参加する意義は大きい。フロントスタッフがいろいろ考えた上で企画したイベントや活動に参加させてもらうのですが、その時に選手がただ参加すればいいと思っているようでは効果はないと思っています。選手が何のために参加するのかを理解した上で参加しないと意味がない。イベントに参加する時、集まった人の中の1人でもいいからファンになってもらえるように接することが大事だと思っています。ただのサッカー選手として参加するのではなく、人として好きになってもらえるように振る舞うことが大事。選手同士でそういった話をして、一人でも多くの選手に賛同してもらうことが大事だと考えています。そういうことの積み重ねによって、街は盛り上がっていくと思うんです。サッカーの結果も大事ですし、そういった活動も大事。全部大事なんだと思っています。結果が一番分かりやすく盛り上がれる要素だとは思いますが、結果が出なくても応援してくれる人を増やすことも大事だと思います」
【Vision】
「自粛中に世界に向けて貧困を減らすための発信をしていた人の記事を見たんです。すごくカッコいいと思いました。でも、日本全体や世界を見るのは、自分にはちょっと大きすぎるなと。今自分が『水戸の街を』と言っているのは、水戸ホーリーホックの選手だからであって、他のチームの選手だったら、その街を盛り上げたいと思っていると思います。今、その街に住む人たちが『盛り上げたい』と思って活動すれば、全国的に活気が出ると思うんですよ。それが日本全体や世界に広がっていくなと。そのためにまず水戸の街を盛り上げることに全力を注ごうと思うようになりました」
【Value】
「今までも考えてはいましたが、言葉にしたのははじめての経験でした。たとえば、『人の心を打つようなプレー』に関してはサポーターへの思いが込められています。アウェイに来てくれるサポーターは、みんなお金を使ってきてくれているわけなんですよね。あるサポーターは本当にホーリーホックが大好きで、バイトをしたお金のほとんどをホーリーホックのために費やしてくれていると。アウェイに前乗りして、現地で日雇いのバイトをする人もいるという話を聞いたこともあります。それほどまでして、応援してくれる人たちの前で不甲斐ないプレーはできないなと思うんですよ。そういうことを感じることによって、人の心を打つようなプレーをすることを心掛けるようになりましたし、自分のプレーから何か伝わればいいなと思ってサッカーするようになりました。その思いから、この言葉が導き出されました」
Q.「ピッチ上で絶対的な存在として君臨する」ということは?
「誰よりも声を出したり、誰よりも体を張ったり、誰よりも勝利に飢えていたり、そういうプレーや言動をしている時は集中できていて、人の心を打つようなプレーを生みやすいので、この言葉を選びました」
Q.『誰よりも練習へ真剣に取り組む』というのは細川選手の根幹にある言葉ですね。
「サポーターが応援したくなる選手って、こういう選手なんだと思います。サポーターに向けてだけでなく、チームメイトにもそう思ってもらいたい。自分が日々真剣に練習をして、声を出して雰囲気をよくしていれば、みんなも練習に打ち込めると思うし、自分という存在に何かを感じてくれるかもしれない。そして自分が試合に出続けて勝利に貢献できる選手になれれば、自分の姿勢が正解だと思ってくれる選手が出てくると思う。だから、自分がそうやっていい選手になって、周りの選手に『誰よりも練習へ真剣に取り組む』選手はいい選手になれるんだということを証明したいと思っています」
Q.『自分の身体と対話し、コンディションを保つ』というのは過密日程の今季は本当に大事なことですよね。
「その大切さを身に沁みて感じています。毎年、その年齢って経験したことがないんですよね。今まで通りのことをそのまま行ってもうまくいかないとこともあるんです。常にコンディション作りは1年生としてはじめないといけないと思っています。これからもサッカー選手を長く続けたいと思っているので、そのためにも毎年『自分の身体と対話し、コンディションを保つ』ことが大事になると思っています」
【スローガン】
「間違いなく、水戸に長くいるからこそ知ったり、感じたりすることがあります。Jリーグ参入前後に関わった人たちの話を聞いて、本当に壮絶な戦いを経て、今の水戸ホーリーホックがあるんだなということが知ることができました。本当にクラブのために苦労した人がたくさんいたんですよね。それこそ、(本間)幸司さんや(冨田)大介さんが歴史を知っていて、本当に大変な時期に助けてくれた人たちのことを僕らに伝えてくれるんです。そういう話を聞くと、その人たちの思いを持って戦わないといけないと思いますし、その人たちの多くはもうクラブとは関りがないかもしれませんが、どこかでつながっていると思っています。そういう人たちが抱いた夢を背負って、今の僕らは戦わないといけないとすごく感じるんです。そういったことを知ったことによって、愛着というより、使命感を持つようになりましたよね」
Q.「関わる人」には「関わった人」も含まれているのですね。
「そうですね。一番根幹にいるのは、水戸ホーリーホックを作った方々だと思っています。その人たちがなぜこのクラブを作ったのかを知ることは選手にとってすごく大事だと思います。そういう人たちの思いを汲んで、僕らは戦っていかないといけない。本当に多くの人の支えがあって、水戸ホーリーホックは存在しているんです。支えてくれる人たち、支えてくれた人たちのために、戦っていくことが大事だと思っています」
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