ロッテ種市 失敗と向き合い生きる21歳の春

千葉ロッテマリーンズ
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【千葉ロッテマリーンズ 種市篤暉投手】

 「失敗をすることは大きなチャンスでもあるのだよ」。種市篤暉投手はその言葉にハッとさせられ、自分を見直した。それは1月に行った福岡での自主トレの事。昨年からホークスの千賀滉大投手の下で行っているトレーニングに今年はソフトボールの上野由岐子投手も参加をした。日本ソフトボール界のレジェンドは、種市ら若手選手が集う合同自主トレの場で人生哲学を熱く語ってくれた。

 「ボクはどうしても失敗をしたらダメ、嫌だと考えていた。去年は8勝したけど、ずっと負けるのを怖がりながら投げている部分があった。失敗をしたら二軍に落とされるのではないかとビビっていた。上野さんは失敗をすることは大事だと言ってくれた。考え方を変えないとダメだなと思いました」

 プロ4年目の種市はまだ21歳だ。昨年、8勝2敗と大きく飛躍。背番号も「63」から「16」と出世を果たした。それでも、どこか自信を持てずにいた。失敗を恐れる自分がいた。そんな姿勢を見透かされていたのだろうか。今年の自主トレで初めて出会った上野は失敗をする大切さを語り続けてくれた。誰もが知る成功者の言葉はスッと種市の胸の中に入り込んできた。振り返ると失敗を恐れながらマウンドに向かう自分がいた。それが決して良い心構えではないことは客観的に自己分析するとすぐに分かった。

 「若い時にしか失敗は出来ない。だから失敗をしまくればいい。年を重ねてからは、なかなかそうはいかないからね。若いうちの特権。失敗を重ねて、どうすれば成功をするのかを考えて、自分を作っていけばいい」

 自主トレ先ではフォーム分析のために映像を見る時間に重点が置かれている。上野は映像を見ながら語りかけてくれた。超一流アスリートから直接、貴重な話を聞きながら、気が付いた事があった。それは、この貴重な出会いもまた失敗がもたらしたものであるということ。一昨年、6試合に先発をして4敗。プロ初勝利を挙げることが出来ずに井口資仁監督から監督室で二軍落ちを通告されると一目はばからず、悔し涙を流した。その時に努力を重ねて一軍で長い期間、活躍できる投手になることを誓った。そして同じタイプの投手として憧れるホークスのエース・千賀に教えを乞う事を考えた。縁もゆかりもない他球団の絶対的エース。今までの内気な種市なら、断られるに決まっているとそんな発想は浮かばなかっただろう。しかし、悔しさを胸に秘めた若者は積極的に動いた。関係者を通じて快諾をもらい、1月の自主トレは実現した。

 「こうやって千賀さんの下で自主トレが出来るのも、今年、その自主トレで上野さんと出会って、色々な貴重な話を聞かせてもらえたのも2年前に失敗をしたから。あの年に、もしプロ初勝利を挙げていたら、今の出会いはなかったと思う。人生で大事なのは成功体験ばかりではない。悔しさや辛い思いが、いい事に繋がっているのだとつくづく思いました」

 今年の種市はエース格としての期待をかけられている。井口監督は「エースになっていく投手。日本球界に誇れる球を投げる」と強い信頼を寄せる。失敗と向き合い、恐れない姿勢を身につけた若者は本物のエースへの階段を昇ろうとしている。もちろん、これからも挫折は待っているだろう。しかしそのたびに強くなる。成長をする。まだ若い。21歳の春である。青春真っただ中。その先には栄光が待っている。

千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章
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