25%を超える得票率を集めた山田陽翔(近江)は、金光大阪戦で10三振を奪い1失点完投した【写真は共同】
投手では山田陽翔(近江)が25%を超える得票率を集め、宮城誇南(浦和学院)が続く結果となった。山田は昨年夏の甲子園でも2年生ながら全試合に登板してチームのベスト4進出にも大きく貢献しており、今大会に出場している投手ではナンバーワンの実績を誇る。秋は故障で登板を回避したが、京都国際の辞退による急遽の出場となったことを感じさせないピッチングを見せている。常時140キロを超えるストレートはもちろんだが、カットボール、フォークの変化球も高レベル。勝負所でギアを上げることができ、試合を作る能力も高い。またフィールディングなど投げる以外のプレーも見事だ。今大会を代表する投手であることは間違いなく、高い得票率も納得である。一方の宮城も今大会で一気に評価を上げた。ストレートは130キロ台前半が多いものの、数字以上に速く見え、コントロールも安定している。完成度の高さは、高校球界トップクラスと言えるだろう。
松尾(大阪桐蔭)は打力もさることながらセカンドまで1.8秒台で投げる強肩も特筆すべき点(写真は2021年夏の甲子園)
捕手で50%近いダントツの得票率をマークしたのが松尾汐恩(大阪桐蔭)だ。1回戦はノーヒットに終わるなどバッティングは厳しいマークに苦しんだ部分もあったが、2.0秒を切れば強肩と言われるイニング間のセカンド送球では度々1.8秒台を記録するなど、そのスローイングは圧倒的なものがあった。準々決勝では試合途中から中学時代に守っていたショートに回り、見事なフットワークも見せた。
体重100キロを超える巨漢ながら柔らかいスイングで左右に打ち分ける器用さも佐倉侠史朗(九州国際大付)の武器【写真は共同】
内野手で接戦となったのがファーストとサードだ。ファーストは大会前に最大の注目を集めていた佐々木麟太郎(花巻東)が初戦で完璧に抑え込まれたが、同じ2年生の佐倉侠史朗(九州国際大付)と真鍋慧(広陵)の激しい争いとなり、わずかに佐倉が上回った。体重100キロを超える巨漢ながらパワーだけでなくスイングの柔らかさもあり、チャンスの場面では左方向に軽打を放つなど器用な面もアピールした。ホームランこそ出なかったが、軽く振っているようでも打球の速さは申し分ない。今後も佐々木、真鍋とともに高校球界を沸かせるスラッガーとして注目だ。サードは伊藤櫂人(大阪桐蔭)が八谷晟歩(浦和学院)をわずかに上回った。どちらもフルスイングが持ち味の強打者だが、捉えた時の長打力と守備の安定感ではやはり伊藤が一枚上という印象を受ける。準々決勝の市和歌山戦で大会史上初となる1イニング2本塁打を記録し、長い選抜の歴史に名を刻む活躍だった。
セカンドの守備力も高い星子天真(大阪桐蔭)は、しぶとさとパンチ力を兼ね備えた打撃が持ち味【写真は共同】
一方の二遊間を見てみると、セカンドは星子天真(大阪桐蔭)、ショートは金田優太(浦和学院)が高い得票率を集めて選出された。星子は下位打線ながらしぶとさとパンチ力を兼ね備えた打撃が光り、セカンドの守備でも度々軽快なプレーを見せた。プレーはもちろんだが、チームを指揮する西谷浩一監督も「天性のリーダーシップがある選手」とコメントしており、周囲の選手に積極的に声をかけるなど、能力の高い選手たちをまとめていた点も評価できるだろう。金田は強打が魅力の大型ショートで、2回戦の和歌山東戦では打った瞬間に分かるホームランも放っている。シャープな振り出しで広角に鋭い当たりを放ち、確実性も高い。ショートの守備は少し不安定な部分があり、今後のレベルアップが必要だが、投手としても140キロ近いスピードをマークするなど強肩も魅力だ。
黒田義信(九州国際大付)はスピードに強打を兼ね備えており、リードオフマンとしての役割を十二分に果たした【写真は共同】
外野手は海老根優大(大阪桐蔭)、内海優太(広陵)、黒田義信(九州国際大付)の3人が高い得票率を集めた。海老根は強肩強打に俊足も備えており、攻守にわたってチームに貢献。内海は2回戦で香西一希(九州国際大付)の巧みな投球に苦しんだものの、1回戦では痛烈な当たりで3安打を放った。黒田は抜群のスピードに強打も兼ね備えており、トップバッターとして見事な活躍を見せている。また惜しくも4番目の得票率となったものの、谷口勇人(大阪桐蔭)も2番打者とは思えない打撃を見せており、今大会目立った選手の1人である。
トータルで見るとやはり勝ち進んだ大阪桐蔭と浦和学院の選手が多かったが、九州国際大付も多くの選手が高い得票率を記録しており、個々の能力の高さをよく反映している。今大会は不調に終わった捕手兼投手の野田海人が復調してくれば、夏も上位進出を狙えるチームになりそうだ。
(解説:西尾典文)