カーリング五輪出場国ランキング 混合ダブルス編

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 2月2日に、北京五輪のカーリング混合ダブルスが他の種目に先がけて開幕する。日本は昨年12月に行われた世界最終予選を戦った末、惜しくも出場権を逃したが、出場10チームの戦力はどうなっているのか。

 日本選手権3連覇を果たしたコンサドーレのスキップで、混合ダブルスでは世界選手権にも出場した松村雄太選手と、2018年の平昌五輪に出場した山口剛史選手(SC軽井沢)の2人が、各チームの戦力を分析。全10カ国を6つの項目別(各項目10点満点)で採点し、合計得点でランキング化した。

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寸評

松村氏が特に高く評価しているのが、スウェーデンとノルウェーの2カ国だ(写真は平昌五輪のもの)【写真:ロイター/アフロ】

 前回の平昌大会から正式種目に採用された混合ダブルスですが、各エンド、最初から置いてあるガードストーンの裏にカム・アラウンドというショットで自分たちの石を隠す展開がベースになってきます。

 その過程で石を隠しきれなかったり、ハウス(円)の中が自分たちに不利な形で混み合うと、主に男性選手の早いランバック(ガードストーンを撃ってハウスの中に飛ばすショット)で形を変えたり壊したりして、女子選手のヒット系のショットで点にする。そんなエンド構成になることが多いですね。

 そのセオリーで考えるとランバックの技術が群を抜いているオスカー・エリクソン選手、どんなラストロックが残っても決め切れるアルミダ・デ・ヴァル選手、スウェーデンのこのペアが一番、金メダルに近いチームかと思います。

 昨年の世界選手権に出場した際のショット率は、デ・ヴァル選手が87%、エリクソン選手が89%、ペア合計で88%と参加20カ国でベストの数字をたたき出しました。準決勝こそ敗退しましたが、見ていた限り大きなミスは1度だけ。そこにうまくつけ込まれて惜敗した印象です。

 スウェーデンに勝ったノルウェーの同大会のショット率は女性のクリスティン・スカスリエン選手が80%、男性のマグヌス・ネードレゴッテン選手が86%、チームで83%とスウェーデンを下回っているのですが、それでもほとんどの試合で主導権を握っていました。

 対戦した感触としては、石同士の距離感であったりアングルを作るのが本当にうまいです。カーリングでは「石の積み方」なんていう表現をするのですが、相手の石につけるフリーズというショットも、のちに撃たれても簡単に出ていかないポイントにしっかり置いてくる。世界選手権では参加チーム最高の23回のスチールを記録しつつ、被スチールもこれもベストの2という数字を残していますが、これはそれらのディティールを突き詰めた結果だと思います。前述のスウェーデンとの試合もそうですが、とにかく戦い慣れている。おそらく世界一のミックスダブルス巧者ではないでしょうか。ツアーランキング最上位は伊達ではありません。

前回の平昌五輪で金メダルを獲得したカナダ。「カーリング偏差値が異常に高い」と分析している(写真は平昌五輪のもの)【写真:ロイター/アフロ】

 スウェーデン、ノルウェーの他にプレーオフ進出の有力候補は、イギリスとカナダですね。

 イギリスはいま、世界でもっとも旬な選手のひとり、ブルース・マウアット選手の活躍に期待がかかります。彼は4人制も出場するスキップですからアイスの曲がり幅、ウェイト(ストーンの速さ)の指示がやはり的確で、テイク(石を出すショット)の石の動きのイメージも明確にできている。ペアを組むジェニファー・ドッズ選手も投げやすそうです。不安があるとすればマウアット選手のスイープ面ですが、ドッズ選手は非常に良いスイーパーなのでそこまで大きなマイナスはなさそうです。

 カナダのレイチェル・ホーマン選手、ジョン・モリス選手はそれぞれカーラーとして申し分ない技術と実績を持った選手です。ただ、新型コロナウイルスの影響でカナダはミックスダブルスの五輪トライアルができず、会議の席で戦績などを理由にこのペアが選出された経緯があります。今季はほとんど一緒に氷上で練習できていないのではないでしょうか。試合勘という部分が本番でどう転ぶか。とはいえ、カーリング偏差値が異常に高いカナダのトップ選手のペアですから、それでも勝ってしまう気もします。

 カーリング偏差値という点ではスイスにも注目しています。ヨーロッパの列強のひとつであり、平昌五輪で銀メダルを獲得し、2021年の世界選手権でも5位に入るなど安定して上位にいる、ジェニー・ペレ選手、マーティン・リオス選手のペア。ミックスダブルスは4人制と違い、ショット選択やアイスの情報などをたった二人で共有しないといけません。そこで重要なのは外からの目、つまりコーチの存在です。

 世界選手権ではタイムアウトの回数と、タイムアウト明けのショット率というスタッツが出るのですが、スイスは10回のタイムアウトをとって直後のショット率が90%という素晴らしい成果を上げています。タイムアウトは劣勢の時にコーチのアドバイスを仰ぐ大切な時間でもあり、リフレッシュ、リスタートの意味合いも強いので、明けのショットをしっかり決めるとその後のゲームはとても楽になります。

 ちなみにイギリスも8回のタイムアウトで明けのショット率で同じく90%を記録しています。イギリスのコーチも世界選手権2度の金メダル、ソチ五輪でも銀メダルに輝いたデヴィット・マードック選手という名カーラーで、ベン・アフレック似の43歳のイケオジです。コーチを含めたベンチワークとカーリング偏差値といった、国力的な部分も注目すると、観戦がより面白くなるかもしれません。

 そういう意味ではオーストラリアはちょっと不運だったかもしれません。カナダのモリス選手がナショナルコーチとして12月の最終予選(オランダ・レーワルデン)にも帯同し、見事に本大会初出場を決めたのに、いざ本番で選手として取られてしまうとは……。誰も悪くはないけれど、気の毒です。一方でコーチと大舞台で対戦できるわけですから、それはちょっと羨ましくもあります。

 アメリカとイタリアに関しては男子のクリス・プライス選手、アモス・モザネル選手は4人制で結果を出している選手ですので、大崩れはしないと思います。ただ、チェコとしてカーリング競技初出場となるズザナ・パウロヴァ選手とトマス・ポール選手の夫婦ペアや、ほとんど情報のない中国の范蘇圓選手と凌智選手ペアも含め、このレベルで結果を残すとなるとアイスリーディングなのか戦い方なのかが、相当マッチしないとタフなラウンドロビン(総当たりの予選)になると思います。

 いずれにしてもスウェーデン、ノルウェー、イギリス、カナダの4強にスイスがどうからんでくるのか。あるいはアメリカとイタリアまでチャンスはあるのか。そして上位候補のチームは、決勝まで見据えた戦い方ができるのかが鍵になってくると思います。

【プロフィール】
松村雄太(まつむら・ゆうた/北海道コンサドーレ札幌)
2019年-21年日本選手権3連覇を果たしたコンサドーレのスキップ。21年日本ミックスダブルス選手権優勝。

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