イチロー流 球児へ

イチロー流 球児へ「メンタル編」

バーチャル高校野球

「導いてくれる人は誰なのか」

「苦労して習得するから人の厚みが出る」

 球児の質問「投手でピンチになると頭が真っ白になる。対処法を教えてください」

 そういうこと、よくあるよね。頭が真っ白になるのは仕方がないけど、それを相手に悟られないようにしたいね。やせ我慢でもいいから、立ち居振る舞いは堂々とする。そういう状況は相手だって怖いんだから。

 日々の練習では自分なりに頑張る、それを重ねていくことがとにかく大事。

ピンチのときは「相手も同じ」と考える 【バーチャル高校野球】

 今はどこの学校も、監督やコーチが厳しく指導できなくなっていると耳にするんだけど、そうなると誰が導いてくれるのか。高校生が自分で自分を導くのは難しいけど、結局自分しかいない。酷なことだけど、そんな時代だから自分を律して厳しくできる人間と、自分に甘い人間とではどんどん差が出てくる。でも、チーム内で信頼関係が築けていたら厳しいことを言い合えるでしょ。そういう関係が築けたチームや組織は必ず強くなる。

マネジャーとも会話した 【バーチャル高校野球】

 みんなが高校野球で完全燃焼しようと思っているのなら、いま自分を追い込まなかったら後悔するよ。もちろん最後の夏は頑張ってほしいし、できればいい結果を残してほしい。でももっと大事なことは、次のステップに進んだ時にこの高校野球の2年半が支えになったと言える、そんな時間を過ごすこと。頑張った経験は支えになる。その上で目標が達成できたら最高だよね。

ボールの握り方を実演した 【バーチャル高校野球】

 野球をしているとよく分かると思うけど、簡単にうまくなる魔法のようなものはないからね。積み重ねてものにするしかない。それで得た経験、技術が役に立つ。簡単に手に入ったら、人としての厚みや言葉の重みは備わらない。苦労して習得するから先の人生にも生きるんだよ。野球はチームスポーツだけど個人としても結果を出さないと試合に出られない。いろんな要素が含まれている競技だから、社会に出てから役に立つことがたくさんある。野球部で経験した自信や悔しさが、その後の人生の支えになるような時間を過ごしてほしいね。(構成・山口裕起)

イチローさんと高校野球

 イチローさんは2019年3月に現役を引退し、20年に高校生や大学生への指導に必要な「学生野球資格」を回復しました。
 20年秋に行った講演では、次のように語っています。
 「高校野球は『野球』をやっている。大リーグは『コンテスト』なんです。どこまで飛ばせるかとか。野球とは言えない。高校野球にはそれが詰まっているんです。めちゃくちゃ面白い」
 「僕はプロ入り前の野球にすごい興味がある。高校野球とか学生野球の指導者には、そんなにプロ経験者はいません。野球人としてこれから(野球界に)何かお返しできたらと思っています」
 球児への指導は、20年12月の智弁和歌山を皮切りに、21年は国学院久我山(東京)、千葉明徳、高松商(香川)、22年は新宿(東京)、富士(静岡)、23年は旭川東(北海道)、宮古(沖縄)と、これまでに8校を訪れました。
 21年までの訪問先は学校側の要望や部員からの手紙をきっかけに、決めていました。
 新宿と富士については、ともに地域の小学生らを対象に野球の普及にも熱心に取り組んでおり、その活動に関心を持ったイチローさん自ら、訪問を決めました。
 また、21年からは女子チームの強化プログラムの一環として、女子高校生の選抜チームと自身が率いる草野球チームとの試合を開いている。
 イチローさんは「今後もそれぞれのスタンスで野球に取り組んでいる高校生たちと一緒に野球をやってみたい」と話しています。

イチローさんの歩み

 イチロー(本名:鈴木一朗=すずき・いちろう)
 1973年10月22日、愛知県生まれ。愛工大名電高(愛知)から91年秋のドラフト4位でオリックスに入団し、94年から7年連続で首位打者を獲得した。
 1月に阪神大震災が起きた95年は「がんばろうKOBE」を合言葉にリーグ優勝、翌96年は日本一に大きく貢献した。
 2000年オフにポスティングシステムを利用して大リーグのマリナーズに移籍し、01年に首位打者、盗塁王を獲得してア・リーグMVPに。04年に262安打で大リーグのシーズン最多安打記録を84年ぶりに更新。01年から10年連続シーズン200安打。
 12年途中からヤンキース、15年からマーリンズでプレーした。16年には大リーグ史上30人目、日本選手では初となる通算3000安打を達成した。18年にマリナーズに復帰し、19年3月に引退。右投げ左打ち。

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著者プロフィール

高校野球を動画やニュースでいつでもどこでも楽しめるサービスとして、2015 年に朝日新聞社と朝日放送株式会社(現朝日放送テレビ株式会社)が共同で開始。全国高校野球選手権大会をはじめ、全国高校女子硬式野球選手権大会や明治神宮野球大会などのライブ配信を実施しています。

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