卓球団体戦、日本は男女ともにメダル王手「ダブルスが鍵を握る」と倉嶋洋介は助言

C-NAPS編集部

団体戦のシングルスとダブルスで2勝した戸上

シングルス、ダブルスで2勝を挙げるなど日本の勝利に貢献した戸上。大舞台での経験によって一皮むけた印象だ 【写真は共同】

 張本選手が林昀儒選手とのエース対決に敗れたことで、戸上選手はシングルスで絶対に落とせない試合を戦いました。そんな緊迫感があるゲームでしたが、戸上選手のプレーぶりは非常に良かったと思います。戸上選手の調子が悪い時は、ガンガン攻めすぎて試合をコントロールできなくなりがちです。ただ、今日は攻める時に確実に点数を取り、相手のミスを誘いながら、我慢強いプレーができていました。そうしたプレーができている時は、戸上選手も世界ランキング一桁台に入るレベルだと思います。

 (戸上選手は)本当に攻撃力はあるんですが、そこに重きを置きすぎて戦い方のバランスが悪くなってしまうことがあるんですよね。強引に行き過ぎてミスしてしまい、自らペースを乱してしまうこともあります。そうなると負けパターンになりがちです。団体戦のシングルスでは攻めていたし、相手に攻め込まれても我慢してチャンスを待つなど、強引なプレーはあまりありませんでした。

 シングルスを経験して、一皮むけたかなという印象があります。ダブルスに加えて、シングルスでも戸上選手が計算できるようになれば、日本の総合力はまた上がるはずです。男子の準決勝に関しては五分五分か日本が少し有利だと思っています。張本選手も調子がいいので、ラリーに持ち込める展開になればシングルスで2勝できると予想しています。準決勝に勝てば、メダル確定なのでこのチャンスをものにしたいですね。

強いタイを完封した女子もメダルへ視界は良好

ダブルスでペアを組む早田(左)と平野。2人の連携も試合を経るごとによくなっている 【写真は共同】

 女子の勝利に関しては順当ではあったものの、手ごわいタイ相手にもっと苦戦はすると思っていました。それが、オールストレート勝ちを収めたことには驚きでした。早田ひな選手(日本生命)と平野美宇選手(木下グループ)のコンビネーションも試合を経るごとに格段によくなっています。

 早田選手は負傷している左前腕の影響もあり、フォアハンドでいく機会が多かったように思います。ダブルスで早田選手のフォアを打てれば、高い確率で決められますね。バックよりもしっかり動いてフォアハンドで打つ意識が高いので、決定率は上がってきています。また、早田選手のフォアを活かすために、平野選手がいいサーブを出したり、いいコースに打ったりして上手く連携しています。

 平野選手はシングルスの時もそうですが、フォアハンドもバックハンドもよく、体が動いている印象でした。パートナーがチャンスメイクして、もう一方が強打できるパターンが確立できていたので、次に向けても期待が持てると思います。

 また、シングルスで登場した張本美和選手(木下グループ)は、非常に強かったのですが、まだ試運転の印象でした。16歳と若いものの、会場の雰囲気を味わいながら、卓球台の感覚を探りながら、自分の調子を見極めながら試合をしていた印象です。その中でも鋭いカウンターはありましたが。次の準決勝に向けてもう一段階ギアを上げてくれそうな期待感がありました。

 美和選手はすごく落ち着いていて、例えるなら静かなる「青い炎」のイメージです。一方、兄である智和選手は燃え盛る「赤い炎」ですかね。きょうだいでもすごく対照的だと思います。美和選手は勝ち上がった先に待つ中国戦へのピーキングを意識しているようにも感じます。

 女子団体の準決勝の相手は、インド対ドイツの勝者です。ドイツはエースの離脱などでチーム力が下がってきているので、インドが上がってくるのではないかと予想します。インドには、異質ラバーという野球でいうナックル系の変化の返しをするラバーの使い手が3人いますが、日本はその対策をしっかり練っています。なのでどちらが勝ち上がってきたとしても、決勝への切符を勝ち取ってくれると信じています。

倉嶋洋介(くらしま・ようすけ)

【本人提供】

名門・明治大学を卒業後、協和発酵に入団。全日本選手権では2001年大会で混合ダブルス優勝、02年、04年、05年大会では男子ダブルス優勝の実績を残す。現役引退後の07年から母校・明治大学のコーチに就任し、水谷隼選手らを指導。10年には卓球男子日本代表のコーチを務め、12年には監督に就任した。16年のリオデジャネイロ五輪では日本男子卓球界初の五輪銀メダルをもたらし、東京五輪でも団体銅メダルを獲得。現在はTリーグの強豪・木下マイスター東京の監督を務めている。

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著者プロフィール

ビジネスとユーザーを有意的な形で結びつける、“コンテキスト思考”のコンテンツマーケティングを提供するプロフェッショナル集団。“コンテンツ傾倒”によって情報が氾濫し、差別化不全が顕在化している昨今において、コンテンツの背景にあるストーリーやメッセージ、コンセプトを重視。前後関係や文脈を意味するコンテキストを意識したコンテンツの提供に本質的な価値を見いだしている。

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