自信にまつわる「結果予期」「効力予期」とは?スポーツ心理学的に解説!

ココカラネクスト

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 皆さんは、周りの仲間や指導者に「自信を持て」と言われどうしたら良いのか分からないと悩んだことはありませんか?さらには「やればできる」という感覚が持てず、無力感に苛まれるなどの悩みはありませんでしたか?

 もしかすると今回紹介する「結果予期」、「効力予期」を理解することによって解決の糸口が見つかるかもしれません。アスリートにとって大切な自己効力感を養う2つの要素についてスポーツ心理学的な観点から解説していきます。

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結果予期・効力予期とは?

結果予期・効力予期とは、カナダ出身でスタンフォード大学の心理学者、アルバート・バンデューラ博士によって提唱された、自己効力感(やればできると思える感覚)を司る機能の事です。

アルバート・バンデューラ博士によると結果予期 (outcome expectation) は、特定の行動を実行した場合、特定の結果が得られる信念と定義されています。対して効力予期 (efficacy expectation) は、特定の行動を実行する能力があると思えるかどうかという個人の信念です。

スポーツ心理学的な観点から見てみると、結果予期は、タスクを行えば目標達成できるという「結果」に対しての信念を表し、効力予期は、結果予期に対してその結果を達成するために「行動」を遂行出来ると感じる信念となります。

実際にスポーツで例えると、結果予期は「この練習を行うと大会で優勝する事ができる」と思う信念。効力予期は「優勝という結果を達成するまでの練習を実行する能力がある」と思う信念とスポーツ心理学的には例える事が出来ます。

似て異なる結果予期と効力予期
結果予期と効力予期は互いに近い概念のように感じますが、全く異なるものです。

アスリートが、「この練習をすれば、大会でのパフォーマンスを最大限に高める事ができる。」(結果予期)というメンタル的な信念があったとしても、大会でのパフォーマンスを高めるための「練習」があまりにハードなため、「自分には遂行できる能力が無い」と感じる場合(効力予期)、そのアスリートは練習に打ち込むことは困難になるでしょう。

このように、人は自己効力感を高めるためには、「結果予期」と「効力予期」の両方が高い状態でパフォーマンスの向上として機能していきますが、どちらか一方でも低い状態では、モチベーションが下がり行動力低下の原因となります。

実際の心理研究

前述のスタンフォード大学の心理学者、アルバート・バンデューラ博士が行った重度の恐怖症を抱える患者に対して行った研究によると、結果予期と効力予期を含む全体的に高い自己効力感を持ち合わせる患者は、低い患者に比べ、恐怖症克服に対する行動力が高く、与えられたタスクに対する成功確率も、患者が持つ結果予期と効力予期の強さに相関していたようです。

つまり、結果予期、効力予期の両方を兼ね備える人は、遂行能力も上昇し実際のパフォーマンス上昇にも繋がると言えそうです。

結果予期と効力予期を司る4つの要素

他にもアルバート・バンデューラ博士の論文によると「結果予期」と「効力予期」は、下記4つの要素によって構成されると示されています。つまり、これらをコントロールすることによって自己効力感全体を高める事が可能となり得ます。

達成経験
過去に何かをやり遂げた経験など

代理経験
他人の成功体験や失敗談を見たり聞いたりすること

言葉による説得
励ましの言葉をかけられたり、セルフトークを行うなど

生理学的・感情の変化
緊張による心拍数の上昇やリラックスによるメンタルの安堵感など

アスリートの応用例

結果予期
アスリートの応用例を考えてみましょう。まずは、結果予期を高める事が重要です。

「この練習は、本当に自分の目標(金メダルやチームの優勝など)をもたらすだろうか。」

「このトレーニングであのライバルに勝つことができるのか。」

など自分の現時点での練習を書き出すなどをして、それらが目標としている結果をもたらすと信じる事ができるか「自問自答」することが大切です。結果への確固たる信念を持つことができた時、結果予期が高まりモチベーションの向上や維持に繋がるでしょう。

効力予期
対して効力予期は、前述の4つの要素を踏まえて考える事が大切です。以下に要点と例を挙げます。

・達成経験
過去に自分が困難を乗り越えた経験や目標達成できた経験を思い出す。

・代理経験
先ほどと同様の重度の恐怖症を抱える患者に対して行った研究では、他人が恐怖症克服に立ち向かっているのを見ているだけでも、「結果予期」と「効力予期」が高まった事が示唆されています。そのため、「自分が尊敬するアスリートがどのように壁を乗り越えたのか」などの自分のモチベーションを刺激してくれるような本や動画に触れてみましょう。

・言葉による説得
自分にポジティブな言葉を投げかける、またはチームメイトの効力予期が低下していると感じる場合も同様にポジティブな言葉をかけてあげる。
・生理学的・感情の変化
リフレーミングの技術を使う。緊張すると体が硬くなり、メンタル的にも失敗への不安が襲ってきます。そこで心拍数の上昇をネガティブな状況と解釈せず、「この身体の変化はエキサイティングな状況への準備である」とポジティブに解釈しリフレーミングしてみましょう。是非参考にしてみてください。

参考文献:
Self-Efficacy: Toward a Unifying Theory of Behavioral Change – Resources • SuSanA

[文:スポーツメンタルコーチ鈴木颯人のメンタルコラム]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会
代表理事 鈴木颯人
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著者プロフィール

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