書籍連載『THE RISE 偉大さの追求、若き日のコービー・ブライアント』

高校のチームメイトにも練習中から容赦なし 今も語り継がれる“コービー伝説”の数々

ダブドリ編集部

親友がチームから去っても二週間気づかず

 それ以来、コービーがシュワルツを『追いかけた』かどうかは、伝説として語られることになった。「追いかけてはいないよ」とイーガンは言った。

「真実の方がいい話だ。コービーはただあいつに腹を立てていただけだ。ロビーがベンチの一番端の控え選手だろうと関係なかったんだ」。

 トリートマン曰く、その日の練習の残り75分間、コービーはずっとシュワルツから目を離さなかった。その晩、トリートマンは帰宅途中、運転しながらその日目撃したことを思い返していた。単なるスクリメージでの無意味な敗戦だと、他の人なら誰もが思うようなことに対するコービーの激しいリアクション。信号で停車すると、その出来事が意味することに気づいた。彼の偉大さはそこなんだ。他の人間との違いはそれなんだ。

「他の選手たちはちょっとビビっていたと思う」とトリートマンは言った。

 彼らがそう感じる理由はあったかもしれないが、チームメイトたちがコービーの闘争心でさえ手に負えないとなると、ローマ・カトリック高校をどう相手にするというのだろうか? セント・アンソニー高校は? もしくは地区と州のプレーオフで出会うであろうチェスター高校はどうだ? あるいは、逆にコービーがなんとかしてくれると信じて自信過剰になってしまったら? ダウナーはそこかしこに落とし穴の可能性を見た。その落とし穴の中には、チームを改善しようとする目的から生まれたものもあった。

 エイシーズが全体的に選手の層を厚くしたことで、マット・マトコフがロスター入りできるかが危うくなっていた。良識的に考えてコーチ陣がマトコフをチームに残すことができなかった場合、コービーがどういう反応をするかをダウナーは懸念した。

「あいつをどうしたらいいと思う?」とダウナーはイーガンに尋ねた。「このチームでプレーさせるわけにはいかないけれど、あいつはコービーの親友だ」。

「チームから外せばいい」とイーガンは答えた。「コービーは二週間は気づかないはずだ」。

 結局、ダウナーが外す前にマトコフは自らチームを去った。二週間後、練習を見渡したコービーは尋ねた。「マトコフはどうしたんだ?」。

書籍紹介

【写真提供:ダブドリ】

 父ジョーからはバスケットボールを、母パムからは規律を学んだコービー・ブライアントは、幼い頃からコート上でその才能を輝かせていた。しかし、13歳でイタリアからフィラデルフィアに戻ったコービーは、バスケットボールという競技だけでなく、逆カルチャーショックやイタリアから来たよそ者というレッテルとも戦うことになってしまうのだった……。

 本書はNBAレジェンド、コービー・ブライアントがフィラデルフィアで州大会優勝を成し遂げ、レイカーズに入団するまでの軌跡を描いています。コート上の話だけでなく、アメリカの黒人文化や社会構造、また大学リクルートの過程などさまざまな要素が若きコービーに影響を与える様が綿密に描かれているファン必携の一冊です。

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著者プロフィール

異例の超ロングインタビューで選手や関係者の本音に迫るバスケ本シリーズ『ダブドリ』。「バスケで『より道』しませんか?」のキャッチコピー通り、プロからストリート、選手からコレクターまでバスケに関わる全ての人がインタビュー対象。TOKYO DIMEオーナーで現役Bリーガーの岡田優介氏による人生相談『ちょっと聞いてよ岡田先生』など、コラムも多数収載。

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