早大フィギュア 島田と西山がダブル表彰台! 川畑ら女子も東日本の舞台へ

チーム・協会

【早稲田スポーツ新聞会】

東京選手権大会 10月2日 東京・ダイドードリンコアイスアリーナ
【早稲田スポーツ新聞会】記事 吉本朱里、濱嶋彩加、水平櫻子、及川知世 写真 吉本朱里

ショートプログラム(SP)から1日空け、10月2日に行われたフリースケーティング(FS)。女子FSでは3人が東日本選手権に駒を進めた。男子FSでは島田が優勝、西山が3位となり、早大勢の活躍が目立つ試合となった。

★早大女子3人で東日本の舞台への切符を掴む(女子FS)

 シニア女子FS、SP21位から巻き返しを狙う木南沙良(人通2=東京・日大一)が登場。銀盤によく映える華やかな和風の衣装を身にまとった木南による、『SAYURI』の演技が始まった。練習で何度も確認していた3回転+2回転の連続ジャンプは、加点が付く出来栄えで着氷。2本目の3回転フリップは両足で降りてしまい、ダウングレードの評価となってしまうが、木南はミスを引きずらない。続く2本の単独ジャンプを決めると、手の動かし方まで工夫されたスピンや、重みのあるゆったりとした曲調に合わせたステップで和の世界観を広げていく。和太鼓の音が鳴り響き、プログラムの雰囲気がガラリと変わると、残るジャンプは3本。演技終盤ながらスピードを保ったまま勢いよく助走に入り、単独の2回転アクセル、連続ジャンプを全て着氷した。曲の盛り上がりに合わせて力強さを増すスケートで、上品さと迫力感が共存する木南の『SAYURI』を存分に表現。曲が鳴り止むタイミングで最後のポーズをとると、はにかむような笑顔がこぼれた。SPの涙とは一転、満面の笑みでリンクを後にし、コーチとハイタッチを交わした。得点は81・25点。FSのみの得点では、24人中12位につけ、総合では15位となった。ジュニア1年目以降、東日本選手権への切符を手にできておらず、「ブロック大会に恐怖心があった」という木南。それでもこの日は「怖気付くのではなくやってきた練習をただ披露する」という強い気持ちで演技を披露。無事、念願の東日本選手権への道が開けた。

FSで演技する木南 【早稲田スポーツ新聞会】

 SP16位でFSに進んだ馬場はるあ(社3=東京・駒場学園)は第2グループに登場。腕まで装飾が施された、赤と黒のクールな衣装に身を包み、披露するプログラムは『Never Go Back / My Immortal 』。繊細で重厚なピアノ曲を表現するSPとは異なる世界観を持ったプログラムだ。直前まで演技の流れを念入りに確認し、少し緊張した面持ちでゆっくりとポジションについた。曲が始まると、最初のモーションから指先まで使った力強い表現で、見ている人を曲の世界観に引き込む。冒頭、2回転ルッツは成功するも、その後の3回転ジャンプを連続で失敗してしまい、不安な滑り出しとなった。しかし、中盤の2回転アクセルや、連続ジャンプを着氷。回転不足はあったものの見事立て直し、そのまま曲が盛り上がるにつれて馬場の演技も完成されていく。感情が滑りに乗ったステップと、丁寧なスピンで美しい演技を披露。最後の表情までしっかりと演じ切り、演技終了後には笑顔も見られた。大会の際には「緊張する」と以前から語っていた馬場だが、今回の演技では切り替えの早さと気持ちの強さが感じられた。FSの得点は77・91点、総合得点は119・84点となった。SPから2つ順位を上げて最終順位14位で終え、東日本選手権への出場権を勝ち取った馬場。滑り込んできたプログラムにはまだ伸びしろがある。SPとFS、共に最高の演技をするため、シーズン終盤まで磨きをかけていく。

FSで演技する馬場 【早稲田スポーツ新聞会】

 SP後に「最後まで集中力を切らさず滑り切りたい」と意気込んだ川畑は、昨シーズンのワインレッドの衣装から一新、深いブルーの衣装で登場。冒頭の3回転ルッツは回転不足となるが、その後の2回転アクセルはきれいに着氷。続く前半のジャンプは回転抜けなどのミスはあったが、プログラムの世界観をそのままに演技をする。後半、2回転アクセル+2回転トウループ、2回転ルッツでは着氷に乱れがあったが転倒せずに耐える。「滑り切るので精一杯になってしまった」と語ったものの、失敗を引きずることなく、スケールの大きなダイナミックなスケートで演技を続けた。最後はヴァイオリンの音色に合わせたエレガントな表現やステップを披露し、勢いのある滑りで氷上を駆け抜け、フィニッシュ。ジャンプの調子が整わない中、最後まで笑顔で演じ切った。FSの得点は77・43点、SPと合わせた順位は12位となり、東日本選手権への切符を掴んだ。試合後のインタビューでは、「昨シーズンできていたことがほとんどできていない状態で試合に出場するのは、すごく緊張したし、少し怖さも感じていた」と今大会についての思いをあらわにした。それでも「試合に出てFSを滑り切ることができたことが間違いなく自分にとっては成果になったので、今後に繋がったと思う」と話した川畑が、これからどのような滑りを見せるのか、注目だ。

FSで演技する川畑 【早稲田スポーツ新聞会】

★島田V、西山3位!廣田も次戦に繋がる演技を披露(男子FS)

 今大会最後の競技となった男子FS。その第1グループに、赤と青のラインが特徴的な衣装を身につけて、SP19位の廣田聖幸(スポ2=千葉・東邦大東邦)が登場した。心なしか固い表情でリンク中央に向かい、『ロケットマン』の音楽に乗ってゆっくりと滑り出す。予定構成に入っていた3回転ジャンプは回避し、冒頭のジャンプは単独の2回転フリップと2回転ルッツ。回転不足やエッジエラーと判定されるも、なんとか着氷。スピンやステップでも動きは少し固く、レベルの取りこぼしがあったが、音に合わせて丁寧に滑り、慎重にエレメンツをこなしていく。しかし、演技中盤の3回転サルコウでは転倒。演技全体を通してジャンプの抜けや着氷の乱れが見られ、クリーンなジャンプは少なかった。それでも最後には3回転トーループからの連続ジャンプに果敢に挑戦し、着氷。プログラムの最後までベストを尽くし、『ロケットマン』を演じ切った廣田。演技後は少し悔しげな表情を見せながらリンクを降り、キスアンドクライではコーチの言葉に耳を傾けて何度もうなずく様子が見られた。得点はFSが73・09点、SPとの合計が114・78点。19位で大会を終えた。ジャンプのミスが響き、得点を伸ばすことはできなかったが、最後のジャンプでは根性を見せた。まだシーズンは始まったばかり。東日本選手権への出場も決まっている。成長を続ける廣田は今大会を足掛かりとし、さらに洗練されたプログラムを見せてくれるだろう。​​

FSで演技する廣田 【早稲田スポーツ新聞会】

 SP3位、表彰台圏内でFSを迎えた西山は、今季初戦で着用していたブラックの衣装ではなく、ブラウンのグラデーションの新衣装をまとい、穏やかな表情でスタートポジションについた。プログラムは『Anthem / New World Symphony』。演技冒頭、滑らかな2回転アクセルを決め、続く3連続ジャンプも、わずかに乱れるも着氷。その後はジャンプの抜けやオーバーターンなどの乱れはあったものの、決まったジャンプは着氷時の姿勢や流れまで美しいものだった。後半、見せ場のコレオシークエンスでは、確実なエッジワークから繰り出される西山らしい美しいスケーティングを存分に披露。指先まで神経が行き届いている所作や豊かな動きで、最初から最後まで表現力あふれる演技を見せた。笑顔で演技を終えると、お辞儀をしてからリンクを後にした。FSの得点は136・28点、総合得点は210・64点で3位。キスアンドクライでは手を上げて喜ぶ姿が見られた。多くの選手が3回転アクセルや4回転ジャンプに挑む中、西山はそれらの高難度ジャンプをまだ構成に入れていない。それでも「アイスダンスで培ったエッジワーク」を存分に見せ、演技構成点は島田に次ぐ2位。見事3位表彰台をつかんだ。試合後、西山にとってシングル最後となるシーズンについて、「幸先の良いスタートが切れたと思っているので、すごく嬉しい。また、今回の結果を自信に繋げて、東日本、そして、全日本選手権に出場できたら嬉しい」と意気込んだ。約1カ月前の東京夏季大会と比べてジャンプも表現も仕上がってきている。シングル最後のシーズン、これからどのような「シングルスケーター・西山真瑚」としての滑りを見せるのか、楽しみだ。​​

FSで演技する西山 【早稲田スポーツ新聞会】

 前々日のSPを1位で折り返した島田。FSのプログラムは、昨季から継続のプログラム、『City Lights』。一息吐いてスタートのポジションにつくと悲しい調べの音楽が流れ、今年の島田高志郎の『City Lights』が始まる。「最初のジャンプにいく前に考えすぎてしまった」と冒頭の4回転トーループでは転倒。続く4回転サルコウでも回転が抜けてしまう。その後の3回転アクセルでは、着氷が乱れたがなんとか3回転トーループをつけ、予定に無かったコンビネーションにした。中盤のステップシークエンスでは、コミカルな動きも織り交ぜつつもどこか甘さも感じられるような振り付けで、大人なチャップリンを演じていく。持ち前の表現力は今季も健在だ。後半に入り、曲が壮大になるコレオシークエンスでも、長い手足を存分に生かし、リンクを大きく使って、リンクを自分の色に染め上げていく。終盤の3回転アクセルも堪え、最後のジャンプシークエンスも着氷。最後はスピンで演技を締めくくった。昨季からの継続ながら、衣装や髪型が変わり、また新たな顔を見せた島田の『City Lights』。高難度のジャンプが入らなかったが、全体トップの演技構成点をマークし、わずかな差で逃げ切り総合1位。満足のいく演技とはならなかったようだが、1位という成績で東京選手権を終えた。長年日本のトップで活躍しながら、常に、より良い演技、より自分らしいプログラムを追求し続けてきた島田。大会での成績などの明確な目標も作るつもりだが、今季も根底にはずっと変わらず、「良い演技をする」というものがある。ポスト五輪シーズンとなり、上の世代も引退するなど、新たなフェーズを迎えた日本フィギュア界で今季島田がどのように輝きを増していくのか、注目だ。

FSで演技する島田 【早稲田スポーツ新聞会】

 2日間にかけて行われたシニアの競技。課題が残る演技も多かったが、伸びしろは大きく、確実に今後へと繋がっていく試合となったはずだ。早大フィギュア部門の選手たちは、ここから東日本学生選手権、東日本選手権を始めとする大会に出場する。今大会での経験を糧にして、さらなる飛躍を目指していく。

結果

▽女子総合

川畑和愛
SP 9位 48・04点
FS 15位 77・43点
総合 12位 125・47点

馬場はるあ
SP 16位 41・93点
FS 14位 77・91点
総合 14位 119・84点

木南沙良
SP 21位 38・33点
FS 12位 81・25点
総合 15位 119・58点


▽男子総合

島田高志郎
SP 1位 89・90点
FS 2位 143・93点
総合 1位 233・83点

西山真瑚
SP 3位 74・36点
FS 4位 136・28点
総合 3位 210・64点

廣田聖幸
SP 19位 41・69点
FS 19位 73・09点
総合 19位 114・78点

コメント

▽女子

川畑和愛(社3=沖縄・N)

――FSを振り返っていかがですか

 とても緊張していました。予定の構成では3回転ジャンプを3本入れていたのですが、滑り切るので精一杯になってしまいました。ただ、試合に出てFSを滑り切ることができたことも間違いなく自分にとっては成果なので今後に繋がったと思っています。

――ファンの方からの「おかえり」といったコメントが多く見られました。復帰戦となった今大会全体を振り返っていかがですか

 あたたかい言葉をたくさんいただいたことにとても感謝しています。昨シーズンできていたことがほとんどできていない状態で試合に出場するのは、すごく緊張しましたし、少し怖さも感じていました。なので、コメントを目にしたときはすごく嬉しかったです。

――早大女子3人での東日本進出となりました。東日本選手権に向けて、意気込みをお願いします

 全員がそれぞれのできることを出し切れると良いなと思っています。



木南沙良(人通2=東京・日大一)

――FSでは笑顔で演技を終えられました。演技を振り返っていかがですか

 夏の試合で決まるようになった3回転トーループを、FSでは2本降りることができ、練習通りの演技ができたことが嬉しかったです。

――悔しい結果となったSP後、1日空けてのFSでしたが、どのような気持ちで演技に臨みましたか

 ジュニアの1年目以降、東日本選手権に進めていなかったので、SPでは足が震えるほど緊張してしまい、また同じ失敗をしてしまったと後悔しました。FSに進むことができたので、怖気付くのではなく、やってきた練習をただ披露しようという気持ちで演技しました。

――東日本選手権への出場が決まりました。意気込みをお願いします

 シニアになって初めての東日本選手権に向けて、自信を持って試合に臨めるように約1カ月また練習を頑張ります。



▽男子

島田高志郎(人通3=岡山・就実)

※Zoom囲み取材から抜粋

――FSの演技を振り返っていかがですか

 またジャンプを決められなかったので、もう次だとまだまだチャンスはあると思っています。ここぞという時に力を発揮できるメンタルを練習から積み重ねて、試合で発揮できるようにしたいなと思います。

――どこがうまくいかなかったのか教えてください

 SPから6分間練習まで調子が良かったのですが、最初のジャンプにいく前に考えすぎてしまったことです。何も考えずに飛べるまで練習を積んで、できることが当たり前にならないといけないなと思っていたので、改めて感じる結果となりました。

――今大会での収穫と課題などはありましたか

 SPでの挑戦やFSで4回転ジャンプを3本やろうとしたのですが、結局情けない自分を克服していけるようにということが課題であり、克服できた時には自分の理想とする演技ができると思っているので、辛抱強く待っていたいなと思っています。

――今シーズンの目標を教えてください

 明確な目標を作ろうと思っているのですが、根底にあるのは良い演技をするぞという意気込みです。もちろん全日本選手権で良い演技をして4大陸選手権での代表選手を狙っていきたいですし、その為には4回転は3本必要だと思っているので、まず強い自分を保てるような練習を積んでいきたいなと思います。



西山真瑚(人通3=東京・目黒日大)

※Zoom囲み取材から抜粋

――FSの結果についてどう思いますか

 考えていなかった結果だったので、驚きしかないです。でも、すごく嬉しいです。

――FSの演技を振り返っていかがですか

 SPも練習でやってきたことが本番でちゃんと実になったのかなというふうに思ったので、素直に練習してきてよかったなと思います。

――練習はどう取り組んでいましたか

 ジャンプが苦手で、緊張すると慌てて跳びがちだったので、プログラムの中で落ち着いて跳べるようにという風に意識しながら練習してきました。

――シングル最後のシーズンでこのようなスタートを切れたことについてどう思いますか

 幸先の良いスタートが切れたと思っているので、すごく嬉しいです。今回の結果を自信に繋げて、東日本選手権、そして、全日本選手権に出場できたら良いなと思っています。

――そこではどんな演技がしたいですか

 シングルスケーターの「西山真瑚」という存在がいたっていう風にファンの方々に認知していただけるように今後の大会で演技したいと思います。
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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