“ポスト白鵬”時代を担うのは? 11月場所で輝く力士たち

飯塚さき

平戸海、充実した稽古で才能開花か

猛稽古で知られる境川部屋で、実力者の兄弟子たちと日々充実した稽古を重ねる平戸海(写真左)。新十両に昇進した今場所では、持ち味であるスピードを発揮し、印象的な勝ち星を挙げている 【写真は共同】

 21歳の若手が、新十両として奮闘している。猛稽古で知られる境川部屋に所属する平戸海だ。中学卒業とともに角界入り。5年半の年月をかけて、念願の関取昇進を果たした。

 彼の武器は、鋭い立ち合いと迫力あるスピード相撲だ。今場所は、同じく新十両の朝乃若と初日で対戦し、立ち合いから当たってそのまま土俵外に押し出す速攻相撲で相手を圧倒。3日目には、再十両で好調の荒篤山に対し、相手の突っ張りを下からあてがいながら前に出て下すなど、持ち味を存分に発揮している。

 長崎県出身の平戸海。今回の11月場所はご当地場所だ。地元での新十両お披露目となり、会場では連日大きな拍手をもらっている。そんな地元のファンからの応援も、彼の背中を大きく後押ししているに違いない。

 同部屋には、先場所準優勝の妙義龍や、熊本県出身で同じくご当地力士の佐田の海など、実力者がそろう。力のある兄弟子たちと、日々充実した稽古ができているのだろう、若手らしく元気な相撲を見せている。現在まで苦戦を強いられてはいるものの、地道に重ねてきた稽古場での努力を開花させ、初めての十両の土俵でさらなる白星を重ねることができるか。若い力が試されている。

大きな可能性秘めた21歳・北の若

埼玉栄高では高校横綱に輝くなどアマ時代の実績十分の北の若(写真右)。21歳と年齢も若く、189センチの長身を生かした気迫あふれる相撲は多くの可能性を秘める 【写真は共同】

 最後にあえて幕下以下の力士をここに紹介するならば、今場所はこの人だろう。東幕下3枚目。精悍(せいかん)な顔つきの北の若だ。自身最高位で臨む土俵で、連日白星を挙げている。

 先の平戸海と同い年の21歳。相撲の名門・埼玉栄高校時代は、3年次に高校横綱に輝いた。ほかにも、高校総体団体優勝、国体個人・団体優勝など、数々の輝かしい成績を残した相撲エリートである。卒業後、理事長率いる八角部屋に入門。もうすぐ3年が経つ。

 彼の持ち味は、189センチの長身を生かした相撲。突いてよし組んでよしの力士である。今場所も、気迫あふれる相撲で4勝1敗。ここから勝ち上がるためには、自分の型を決めて磨いていく必要もあるだろうが、多くの可能性を秘める彼には、制限せずにいいところをすべて伸ばしていってほしいと思う。

 今場所は、中日で十両の東白龍を下して勝ち越し。初の十両戦を制し、来場所での新十両昇進の可能性も見えてきた。昇進については、上から落ちてくる力士の人数や、自分より上位力士の成績などが大きく左右するため、本人としてはなるべく多くの星を挙げ、その可能性を最大にして場所を終えたいところだ。関取になれば、きっと人気力士の一人に仲間入りすることだろう。
 今場所もあっという間に折り返し地点。各力士の今後の勝敗も、優勝争いもまだまだわからない。「白鵬ロス」が叫ばれる一方、多くの力士に活躍のチャンスがあるともいえる。今場所を制するのは誰だろうか。また、力をつけて未来の角界の担い手となるのは誰だろうか。

 コロナ禍の日本に勇気と希望を届けてくれる大相撲。今年最後の本場所で奮闘する力士たちの姿を、最後まで目に焼きつけようと思う。

2/2ページ

著者プロフィール

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)、スポーツ庁広報ウェブマガジン『Deportare』などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント