ラジオ実況アナ対談で見えた中継の裏側 プロの矜持、伝説実況、選手の素顔…

オグマナオト

大谷翔平から何を聞き出すか、取材前のルーティーンは?

野球実況2年目の山田弥希寿アナ 【提供:文化放送】

 スタジアムの実況席に座り、目の前で起きたことを再現する実況アナウンサーのお仕事。ただ、実況席に座るまでの過程にもプロとしてのこだわりが見え隠れする。実際、アナウンサーの放送前ルーティーンなんてなかなか知る機会がないだけに貴重だ。

とにかく大変! と二人が口をそろえたのが日々の資料作り。デジタル化がこれだけ進んだ現代においても、実況アナの資料作りは1軍試合ほぼすべての試合のデータを手書きし、資料を切って貼って……という昔ながらのアナログ仕様。20代の山田アナでもそこに大差はない。その地道な努力がなければ、とっさの状況で数字やエピソードがすっと出てこないからだ。

 そして、実況当日を迎えても、すぐにマイクの前に座るわけではない。コロナ禍の今こそ多少事情は違うが、以前であればプレーボール4時間前には現場に入り、選手やコーチを捕まえてのインタビュー。ここで聞き出したエピソードが実際に放送に反映されることは多いという。

 煙山アナが例に挙げたのは、東京ヤクルト・石川雅規とのエピソード。思うように結果が出なかったある年、煙山アナは石川から、「左バッターのインコースに投げ込めないと飯が食えなくなる。当てちゃったらごめんなさい、ぐらいの気持ちで行きます!」という決死の覚悟の言葉を引き出す。そしてその言葉を放送で紹介したその日、見事に復活した石川の姿を実況することができたという。

 そして、もうひとりは北海道日本ハム時代の大谷翔平。どんな質問を投げかけても反応が鈍かった大谷選手が急にテンションを変えて熱く語りだした質問とはなにか? 実に「大谷らしい」といえるエピソードだ。

 一方の山田アナ。コロナ禍での実況デビューのため、なかなか放送前の選手取材ができない、という今の放送事情も踏まえた悩みも明かしてくれたが、そんななかでも熱心な対応をしてくれたのが、4日に球団生え抜きでは初となる2000本安打を達成したミスター・ライオンズ、栗山巧。オンラインでのインタビューでも取材相手を気にかける紳士ぶりは、「だからこそ20年ずっと愛されてきたんだ」と実感できる逸話であるのは間違いない。

実況アナウンサーの醍醐味

 それぞれの「ベスト実況」「ワースト実況」、ニッポン放送と文化放送の歴代名物アナが残してきた「伝説の実況舞台裏」など、今回の対談では実況アナならではのさまざまなエピソードで盛り上がりを見せた。

 2人が担当した試合以外でも、文化放送であれば、斉藤一美アナウンサーによる号泣実況。ニッポン放送であれば、深澤弘アナウンサーが長嶋茂雄引退試合で披露した「背番号3が泣いています。ジャンボスタンドも泣いています」というラジオ実況だからこその詞的な名実況秘話。さらには、2007年日本シリーズでの中日・山井大介&岩瀬仁紀が成し遂げたパーフェクトリレーでの日本一達成の際に関根潤三さんが放った名解説など、野球ファン、ラジオファンであれば語り草となっている名シーンの逸話が次々と紹介される。

 こうした逸話を通して改めて気づかされたのは、ラジオ実況では映像がないからこそ、伝えるものをアナウンサー自身が選択できる、というテレビの野球中継にはない視点だ。

 球場の様子や天気を伝えてもよし。ファンの様子を伝えてもよし。今、ボールがどこにあるのかを伝えてもよし。そこに実況アナウンサーの醍醐味が詰まっている、と2人は同意する。最近であれば、メジャーリーグ中継における「大谷翔平カメラ」の存在が話題だが、そういった「独自視点」をずっと昔からやってきたのがラジオの野球中継なのだ。

このように、アナウンサーによって取捨選択された情報が言葉として再構築され、野球ファンやリスナーのもとに届く……つまり、言葉による再構築(re-creation)が野球ファンにとってたまらない娯楽(recreation)になる、という奥深さを改めて痛感できる時間となった。

ニッポン放送ショウアップナイター(PR)

【提供:ニッポン放送】

放送開始から『55周年』を迎えた「ニッポン放送ショウアップナイター」。
その記念となる一年に「55!!(GoGo!!)みんなのプロ野球」をシーズンキャッチとし、『55周年特別広報大使』に松井秀喜さんを迎え、55の特別企画を実施中。リスナーの皆さんから頂いた質問に松井秀喜さんがニューヨークから回答するスペシャルインタビューを8/31(火)から9/8(木)まで連日放送中です。

8/31(火)からは「天下分け目の2週間! 激闘セ・リーグ、全部やる!ニッポン放送ショウアップナイター」と題して優勝争いを繰り広げる巨人・ヤクルト・阪神の試合を連日お届け。

期間中は、連日リスナーの皆様に、中継試合の展開を予想して頂く『クイズトリプルチャンス』のプレゼントがボリュームアップ。8/31(火)〜9/9(木)は『賞金1万円』が、さらに週末の10(金)〜12(日)の3日間は『大幅アップした賞金』が毎日3名様に当たります。

9/11(土)「ヤクルト×DeNA戦」にはスペシャルゲストに大のヤクルトファン・三宅裕司さんが神宮球場に生登場です。

火〜金曜 17:30〜/土・日曜 17:40〜(9/11(土)は17:30〜)試合終了まで完全実況生中継

文化放送ライオンズナイター(PR)

【提供:文化放送】

2021年、ライオンズナイターは40年目を迎えました。1982年の放送開始当初からライオンズ応援中継を謳い、とことんライオンズに偏って放送してきたライオンズナイター。40年目の今年も惑わず、ライオンズ熱烈応援でお送りしています。

今季はカード初戦に辻発彦監督、水曜日には2000安打を目指す栗山巧選手のインタビューをオンエア。過去には秋山翔吾選手や源田壮亮選手などのインタビューも放送してきました。
試合直前に何を語るのか!? 熱い実況、緻密な情報に加え、選手の生の声も必聴です。

5回裏終了時には「ライオンズナイター40年の軌跡」と題し、懐かしの名場面も放送中。ライオンズ一筋40年分の価値を、あなたの耳で感じてください。

9月7日からのスペシャルウィークは栗山選手の直筆サイン入りレプリカユニフォームをプレゼント! 10日は放送席にますだおかだの岡田圭右さんが乱入予定!? にぎやかにお送りします。
ペナントレースも終盤戦! パ・リーグの熱い戦いは文化放送ライオンズナイターで!

毎週火曜日から金曜日 17:55〜21:00(延長あり)

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著者プロフィール

昭和52年、福島県生まれ。『ざっくり甲子園100年100ネタ』や『大人も知らない! ? スポーツの実は…』、『スポーツ伝説超百科』シリーズ、『Leo the footballのしゃべくりサッカー部』シリーズなど、スポーツ書籍の執筆や構成を務める。また、『週プレ』『昭和40年男』『野球太郎』等の雑誌での記事執筆やインタビュー、テレビ朝日『報道ステーション・スポーツコーナー』やニッポン放送『スポーツ伝説』などテレビ・ラジオ・YouTubeのスポーツ番組での構成作家も担当。水島新司漫画研究家としてもメディア出演多数。

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