100mはケンブリッジ、桐生の9秒台決着も “異例”の日本選手権に懸ける思いとは

宝田将志

調整不足だった小池も「改善傾向」に

調整不足により今季はまだ本来の力を発揮できていない小池。日本選手権には照準を合わせて来られるか 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 日本歴代2位タイ9秒98の自己記録を持つ小池祐貴(住友電工)は、まだ本調子ではない。今季のベストは福井で出した10秒19(追い風1.0メートル)。国内の短距離レースは8月から急遽、再開したが、「もう少し先だと見ていた」(臼井淳一コーチ)ことも現状と無関係ではない。小池も五輪の参加標準記録をすでに突破しており、焦る必要がないのは確かだ。

 8月23日のゴールデングランプリ(東京・国立競技場)の際は「出力不足」が課題だと自己分析した。そして2週間後の富士北麓ワールドトライアルでは「シーズンに入っても『シーズンの体』にならないのは初めて」と戸惑いながらも「改善傾向にある。スピード、出力に体が段々慣れてきたので、ウエイトトレーニングで戻して日本選手権で一発合わせていければ」と語っていた。どう心技体を組み立て直すかが、来季にも生きる貴重な経験となる。

 山縣亮太(セイコー)はコンディションが上がらず、ゴールデングランプリは10秒42(向かい風0.3メートル)で予選落ち。その後は試合への出場を見合わせ、日本選手権に合わせている。関係者によると、5〜6月に一度、非常に好調な時期を迎え、その後、反動でコンディションが下降したという。

 10月18日の田島直人記念(山口・維新みらいふスタジアム)への出場も予定しており、日本選手権との2大会で自己記録となる悲願の9秒台を狙う形となりそうだ。昨季は腰痛に気胸、右足首の靱帯断裂と満足に走れなかっただけに、良いイメージをつかんで五輪シーズンにつなげたい(※編注:9月29日夕方に右膝の違和感及び痛みにより日本選手権と田島直人記念の欠場が発表された)。

 例年は、春のシーズンインから6月の日本選手権に向けて徐々に状態を上げていき、日本一になって代表に選ばれる―これが全員に共通する流れだった。それがコロナ禍によって、シーズンに入ってからの状態もアプローチもまちまちという、逆に興味深い状況になっている。東京五輪の男子100メートルの代表枠は「3」。新潟での彼らの走り、レース後の表情やコメントは、10カ月後の東京五輪に続く“第一章”だ。

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著者プロフィール

1977年、千葉県生まれ。産経新聞運動部記者。陸上、体操など五輪競技を担当。著書に『四継 2016リオ五輪、彼らの真実』(文藝春秋) Twitter:@takarada_sports

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