村中恭兵は新球団・琉球で自分と向き合う「僕らしいストレートを取り戻したい」

前田恵

沖縄でじっくりと体を整え、技術を磨く

誕生したばかりの琉球ブルーオーシャンズで、「僕の技術や考え方を伝えたい」と意気込む 【写真提供:琉球ブルーオーシャンズ】

――ABLのシーズン終了後、今年2月に琉球ブルーオーシャンズへの入団が決定しました。

 オーストラリアから帰国後、正式に琉球球団からオファーがあり、契約しました。2月14日に記者会見を行い、実際にチームに合流するまで3週間ほどあったんですが、ABLで少し投げ疲れていたので、休養に当てました。

――琉球は沖縄初のプロ野球チームです。どのリーグにも所属せずにNPB入りを目指すという、初の試みが注目されています。このチームを選んだ理由を教えてください。

 実は独立リーグの球団からもオファーがありました。独立リーグの試合数は年間で70程度ですが、琉球は土日だけ。でも、今の僕にとって大切なことは、コンディションを整えて勝負できる体を作ることと、技術を磨くこと。試合よりもこれらを優先したかったので、琉球の方がいいのかなと思いました。

 また、誕生したばかりの球団なので、若い選手に僕の技術や考え方を伝えて、プラスにしてもらえたらいいなと思ったのも、琉球を選んだ理由のひとつです。

――チームは現在、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、活動を休止しています。活動休止前に、試合で投げることはできましたか? また、現在はどのように練習をしていますか?

 2月29日の巨人三軍戦と3月17日の社会人・沖縄電力戦の2試合に登板しました。巨人戦は2イニング投げたんですが、1失点しました。休み明けで準備不足でしたね。沖縄電力戦は3イニングを無失点に抑えました。

 練習は、ウエイトトレーニングや広場でキャッチボールなどをしています。昨年、戦力外通告を受けてからのトレーニングは、強化よりもメンテナンスの意味合いが強かったんですが、今は純粋に体を強くするトレーニングが主体です。

最終目標は「NPBに復帰すること」

ヤクルト時代には、2度の二桁勝利をマーク。かつての球威を取り戻せるか 【写真は共同】

――選手としての今後の目標を教えてください。

 最終目標は、NPBに復帰することです。自分の実力と、これまでやってきたことを出し切ることができるようにしっかり練習を積み重ね、試合に臨み、あとは評価を待つだけです。

――今の村中投手を突き動かしているのは、「まだできる」「やり残したことがある」という思いでしょうか?

 そうですね。年齢に関係なく「まだできる」という思いと、「納得できるストレートを投げたい」という思いです。腰を痛める前、ヤクルトで先発だった頃は、“自信のある真っすぐ”を投げることができた。それをなんとか取り戻したいです。

――“自信のある真っすぐ”を投げていた頃のベストゲームを教えてください。

 11年、巨人とのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第1戦、第3戦で投げたときですね。あの年はケガもあって、シーズン中はあまり良くなかったんですが、CSの2試合はリリーフで出て1球1球、すごく気持ちのこもった球を投げることができました。神宮のファンの大声援に後押しされたこともあって、とても印象的な試合です。その前年(10年)に11勝を挙げて、自信がついてきたシーズンだったので、あのまま行ければというところで、腰を痛めてしまいました。

――冒頭でも仰っていましたが、手術に踏み切ったことで光が見えてきた格好ですね。

 手術前後で、足の痛みや痺(しび)れが全く違うんです。この状態でしっかり投げられたら、どういう球が行くんだろうという楽しみがあります。ただ、その前にごまかしながら投げてしまったことでフォームが崩れてしまったので、今はそこを作り直しています。と言っても、過去の自分を追い求めるのではなく、今の自分にベストなフォームを模索しています。

――チームは活動休止中ですが、その間も村中投手にとってはいい時間になりそうですね。

 そうですね。今は自分の体を作り、自分と向き合う時間だと思っています。僕の唯一のとりえは、“諦めの悪いこと”なんです。普通だったら「もう無理」と思うところで踏ん張れるし、逆境に強いタイプだと思います。

 今、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、誰もが大変な日々を送っていると思いますが、ここをなんとか乗り越えるだけでなく、むしろこの時間を利用してやるというくらいの強い気持ちで努力していきたいです。僕らしい真っすぐを取り戻すことができれば最高ですが、後悔なく、沖縄での野球を全力で全うしたいと思います。

(企画構成:株式会社スリーライト)

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著者プロフィール

1963年、兵庫県神戸市生まれ。上智大学在学中の85、86年、川崎球場でグラウンドガールを務める。卒業後、ベースボール・マガジン社で野球誌編集記者。91年シーズン限りで退社し、フリーライターに。野球、サッカーなど各種スポーツのほか、旅行、教育、犬関係も執筆。著書に『母たちのプロ野球』(中央公論新社)、『野球酒場』(ベースボール・マガジン社)ほか。編集協力に野村克也著『野村克也からの手紙』(ベースボール・マガジン社)ほか。豪州プロ野球リーグABLの取材歴は20年を超え、昨季よりABL公認でABL Japan公式サイト(http://abl-japan.com)を運営中。

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