指導者が陥りがちなコーンドリブルの落とし穴

サカイク

【サカイク編集部】

個人技指導のスペシャリストとして知られるフリーのプロサッカーコーチ・三木利章さん。ドリブル練習を行う際に指導者が気をつけなければいけないポイントについてお聞きしましした。

■コーンドリブルと試合でのドリブルは別モノ

三木さん流のコーンドリブルはあくまで、身体を思い通りに動かすための「動き創り」を身に付けるためのもの。フェイントなどの、いわゆるドリブルテクニックを向上させるためのトレーニングではありません。 試合でのドリブルは、相手の動きとスペースの広さ、ゴールの方向など、様々な状況に左右されるもので、コーンが動かないコーンドリブルとはまったく別モノだと三木さんは考えています。

「試合でドリブルを行うときは、スペースが狭ければ、ボールを前後左右のどこに運ぶか、キープの仕方やボールの置き方、置き場所などを意識しなければいけません。逆にスペースがある場合は、突破という選択肢が有効となります。そうした実戦に必要な感覚や判断力は、実際に相手やスペースがないと身に付かないのです」

「フェイントを身に付けるためにコーンドリブルをするチームがあれば、僕のように動き創りのためにコーンドリブルをするチームがあっても良いと考えています。どちらが正解ということはない。ただ、指導者がどこにトレーニングの主眼を置くかが大事です」と三木さんは話します。

■ 何のためにやるのか を明確にしたトレーニングを

三木さんのコーンドリブルの主眼は「動き創り」。

そのため、他のチームでよく見られる「顔を上げよう」という指示をすることはありません。フィジカルトレーニングの一環という考えなので、顔を上げて周囲を見ることよりも、より速くドリブルをするために足元のコーンを見ることのほうが優先されるからです。しかし、2対2のトレーニングをする場合は、相手や周囲の状況を見る必要があるため、選手には顔を上げてドリブルすることを求めます。 「このトレーニングは何のためにするのか?」ということを、常に頭に置いて取り組んでいるのです。

「コーンドリブルは、そうした目的を見落としがちになる」と三木さんは指摘します。

「定型のコーンドリブルをただこなすだけだと、選手も指導者も型ばかりを意識してしまい、全員に同じボールの持ち方を求めるようになってしまいます。しかし、選手の利き足や体格によって、一番動きやすいボールの持ち方は変わってきますし、実際の試合では、常に同じ状況や理想とするシチュエーションが起きるとは限りません。何のためのコーンドリブルなのかを、しっかり意識してトレーニングすることが重要です」

■指導者が考えるべきドリルトレーニングの組み立て

三木さん流のコーンドリブルでは、目的に応じて、コーンの広さや置き方、距離などの細部まで狙いが込められています。例えば、トップスピードのドリブルを練習させたいのであれば、スタートからゴールまでのコーンの距離を短めに設定したり、インターバルをおいたりします。距離を長くとると、疲れてスピードが落ちてしまい、本来のトレーニングの目的である「トップスピードでのドリブル」が実行できないからです。コーンドリブルのようなドリル形式のトレーニングでも、このように目的や意識を明確にすることによって、選手の成長度合いは大きく変わるはずです。

コーンドリブルという クローズドスキル(外的要因によって左右されない自分のペースで行える技能) を、いかにサッカーのプレーに活きる オープンスキル(外的要因によって左右され変化する状況で使える技能) へと繋げる事が出来るか、それを指導者が明確にしてトレーニングを組み立てることが大切だと、三木さんは語ります。

サッカーの指導にはチームによってさまざまな方法があり、三木さんのように「動き創り」のためにドリブルトレーニングを行う方もいれば、技やボールタッチを身に付けるために行う方もいるでしょう。どちらが正解ということはありません。この機会に、いま行っているトレーニングを通じて、選手に何を学んでほしいのか、その答えをあらためて考えてみてはいかがでしょうか。
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ジュニアサッカーの保護者向け情報サイト「サカイク」。「自分で考えるサッカーを子どもたちに。」をテーマに、サッカーと教育に関する幅広い専門情報をお届けします。

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