新体操の“肥後もっこす”稲木李菜子 「どんな時も笑顔で」目指す東京五輪

椎名桂子

2020年の初詣で祈願した「どんな時も笑顔で」

フェアリージャパンでも屈指の技術力をもつ稲木 【赤坂直人/スポーツナビ】

 稲木は2019年の年末から2020年にかけての年末年始を熊本で過ごした。現在は、八代市に転居しトマト農家をやっているという実家では、トマトの箱詰めを手伝い、ジュニア時代を過ごしたみどり新体操クラブ恒例の初詣ランニングにも参加した。

 そこで稲木は、「どんな時も笑顔で頑張れるように」と祈願した。

 そして、今のところ、その願いは叶えられている。

 熊本での公開練習の際、練習終盤になって疲れが出てきたのか稲木にミスが続いたとき、山口留奈コーチは竹中との交代を指示。主力メンバーから外れた稲木は、隣のフロアで練習していたサブチームで、それまで竹中がやっていたポジションに入り、練習を続けることになった。地元・熊本での公開練習だ。「外される姿」を一番見せたくない場所だったと思う。それでも稲木は笑顔で練習を続けた。必死で明るく振る舞い、ネガティブな自分を押し殺していた。

 急に松原のポジションに入ることになり、ミスを連発した清瀬での公開練習でも、笑顔は絶やさなかった。そんな稲木を周りのメンバーたちが気遣い、リードしてチームを盛り立てた。メンバー内でも屈指の技術力をもつ稲木が委縮することなく力を発揮すること。松原を欠くことになったいま、それがチーム全体にとって必要だとメンバーたちもわかっているのだ。

 3月に予定されているイタリアでの親善試合、4月から始まるワールドカップシリーズ。いずれも五輪でのメダル獲得に向けて、「今年も日本は強い!」と印象づけることが求められる大切な試合だ(編注:日本体操協会は2月26日、コロナウイルス感染症の政府方針等勘案し、イタリアへの派遣中止を決めた)。

 ロンドン、リオと2大会連続で五輪を経験している松原抜きで、そこを乗り切らなければならなくなったフェアリージャパンにとってはここが正念場。そして、稲木にとっては大きなチャンスでもある。

 東京五輪に向けて、肥後もっこす・稲木の「妥協なき頑張り」に期待したい。

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著者プロフィール

1961年、熊本県生まれ。駒澤大学文学部卒業。出産後、主に育児雑誌・女性誌を中心にフリーライターとして活動。1998年より新体操の魅力に引き込まれ、日本のチャイルドからトップまでを見つめ続ける。2002年には新体操応援サイトを開設、2007年には100万アクセスを記録。2004年よりスポーツナビで新体操関係のニュース、コラムを執筆。 新体操の魅力を伝えるチャンスを常に求め続けている。

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