細い子が多いチームでキック力とドリブルを身につける方法を教えて

サカイク

【サカイク編集部】

まだまだ顔を上げてドリブルするのが苦手な年代なのと、細身の子が多くキック力がない。U-8年代で筋トレは早いと思っているけど、練習の中でドリブルやキック力を身につけるトレーニングがあれば教えてほしい。とご相談をいただきました。

これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、ドリブルとキック力両方を向上させる方法をアドバイスします。
<お父さんコーチからの質問>

指導しているチームはU-8なので、まずはボールの扱いや個人技を習得させるべきかなと思っているのですが、まだまだ顔を上げてドリブルすることが苦手な年代です。

また、細身の子が多くてキック力も他のチームより弱い気がします。筋トレはまだ早い気がするのですが、強いキックを蹴られるようになるにはどんな練習をすればいいでしょうか。

ドリブルが上手になる練習方法とキック力をつける練習方法を教えて下さい。


<池上さんのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

8歳以下なので、小学2年生ですね。

ドリブルがうまくなる(特に顔を上げてドリブル)方法、キック力をつける練習はないか?という質問です。

結論から先に申し上げると、そのどちらも「試合形式」の練習を取り入れることが最も重要です。

■日本はもっと対人メニューを増やす必要がある

私がさまざまな本に書いているように、日本はコーンドリブルなどのクローズドスキルが多すぎます。コーンドリブルを絶対しないでとは言いませんが、試合形式や2対1、3対2といったオープンスキルといわれる対人メニューをもっと増やす必要があると思っています。

そのことを、今も実践しています。

この12月から、大阪府内の私が住む地元の町で無料のスクールを始めました。小学生、中学生が同じフィールドでサッカーをします。

先日は、小学校2年生の女の子が初めて私のスクールにやってきました。2対1を小学2年生の女子二人と中学生の女子にやってもらいました。

中学生とその初めてきた2年生の子が組んでいるときに、私はプレーを止めました。ボールを持っている中学生と、2年生の間に守備の子がいて、2年生はボール見えていない状態でした。

「あなたは、どこに行ったら、パスがもらえるかな?」

そう問いかけると、その子はすぐに守備の子が死角にならない、ボールがもらえるところに移動しました。

そのあとは、自分が中学生にパスすると、ボールが見えるところに動き始めたのです。もちろんその時々で中学生の子がうまく声をかけてくれたからできた部分もあります。ただ、その子は「ボールをもらうためには、邪魔をされない場所に自分が動くんだ」という基本的な概念をそこで学んでいました。

まずは、見て、どこに動いたらいいかを判断していました。逆に、自分がボールを保持すると、守備の子に遮断されない「方向」を探して、その方向に動いてくれた中学生にパスをする。

それを続けていくと、キックの技術は上がるし、ボールコントロールの技術も上がります。相手にパスをしなきゃ、パスを通したいと思うから、コントロールの技術も上がります。パス一本が確実な成功体験になる。そうすると、自分もうれしいし、コーチや一緒に組んでいる仲間にも「ナイスパス」と褒められる。ミニゲームになれば、それをすることでゴールも生まれてすごくうれしい。

つまり、「パスを通したい」という欲求が、スキルを伸ばすわけです。

試合形式やオープンスキルの練習には、そういった意味のあることをぜひ知っておいてください。

■「まずはボールの扱いや個人技」という考え方がそもそも間違っている

私はこのように試合形式でどんどんトレーニングしてもらいますが、異なる実践をしている方が多いです。

「8歳以下なので、まずはボールの扱いや個人技を習得させるべきですよね」とみなさんおっしゃいます。まず、ここから違います。このように考えてしまうと、どうしてもドリルが多くなります。

それよりも、3対3の試合の中で攻撃するゴールが2つある。それだけで前を見るスキルが養われます。

「こっちが空いてるよ!」と子どもたちも言い出します。ボール持ちながらというかコントロールする技術を養いながら、顔を上げるスキルも同時に磨けるのでより実践的です。試合の中でそんなものをすべて覚えていくわけです。

ただし、言っておかなくてはいけないのは、私がここで話している「試合」は「大会」ではありません。あくまでゲーム形式のトレーニングです。そのなかでできないことはたくさん出てきます。たくさん試合をしながら、技術を伸ばしていくことができます。

小学生、中学生を見ていると、練習でできるプレーが、試合でできません。それはつまり、技術を伸ばすための試合が少なすぎるのです。

どのチームも驚くほどたくさん大会には参加しています。でも、そこでの試合はいつも勝ち負けに注視してしまいがちです。普段はドリルトレーニングばかりしているため、試合になるとできません。

■練習の成果を試合で出すための教え方とは

大会に行って、「顔を上げて見なさい」「よく見てパスしろ」「考えて動け」といった声がベンチから飛びますが、顔を上げて見るための実践練習を多くのチームがしていません。下を向いてドリブルするドリルトレーニングばかりやっていては無理なのです。

ゲームには、パスをする、シュートを打つといったサッカーに必要な要素が、当然ではありますが全部入っています。

パスを出すときに「正確に出すにはどうしたらいいのかな?」と問えば、子どもたちは味方を探すために顔を上げるようになります。

ドリブルで突進してしまう子には、「どうして? こっちこんなに空いているよ。見た?ドリブルしているとときに」と伝えます。

一方で、最近はよく勉強するコーチも出てきたので、普段から試合形式で練習するチームも多くなりました。そういうチームの子どもは、大会でも練習と同じことができます。練習で試合をしているからです。
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ジュニアサッカーの保護者向け情報サイト「サカイク」。「自分で考えるサッカーを子どもたちに。」をテーマに、サッカーと教育に関する幅広い専門情報をお届けします。

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