パ新人王を争う2人の若鷹、その特徴は? 攝津正氏「周りを気にしないで」とエール
高橋とは対照的な甲斐野
ただ「ストレートがシュート回転しているので、決め球のフォークや変化球の質は今後もっと重要になってきます。先発であれば調子の悪い球をあえて遊び球として使うこともありますが、中継ぎは15球前後で1イニングを投げるので基本的に(調子の)いい球だけを投げます。選択肢の幅という観点で、球種は増えた方が楽になりますよ。さらに上に行こうとするなら、そういう変化も必要だと思います」とアドバイスを送った。
(映像:パーソル パ・リーグTV)
また、甲斐野の特徴としてはフィールディングの良さも挙げられる。「投げ終わってからの形が比較的ちゃんとしているので、フィールディングの安定につながっているのかなと。僕はあまり得意ではありませんでしたが……。甲斐野投手は、身体をコンパクトに使っていますね。投げ方も外回りしていませんし、(高校時代の)野手としての経験が生かされていると思います」。続けて、「フィールディングは中継ぎ投手の重要な要素です。1点も与えられないピンチの場面だと、自分の守備も使える投手はベンチの安心感にもつながるので」とも言及した。
5月9日の楽天戦、サヨナラ打を浴びた甲斐野(左奥)の肩に手を乗せてかばう松田宣 【写真は共同】
しかし、1年目からうまくその切り替えができていたわけではない。甲斐野は5月、楽天戦に登板3試合連続で失点し、3試合目ではサヨナラ打も浴びたが、攝津氏も「僕も同じ(1年目の)5月が苦しい時期でした」と振り返る。「(5月は)自分のペース配分や相手の傾向が分かってきて、それを踏まえてやっていきますが、本当に成績が上がらない。何とか抑えて自信を取り戻すという感じでした」。5月9日の楽天戦、銀次からサヨナラ打を浴びた甲斐野に松田宣浩が寄り添う姿は印象的だったが、攝津氏も「(苦しい時期は)チームの先輩から声をかけてもらったり、ご飯に連れて行ってもらったりした」そうだ。
一方で、守護神の森唯斗が故障で離脱した6月から7月にかけては、逆にその苦しい時期を乗り越えた甲斐野が代役を務めた。甲斐野にとっては大抜てきであり、その間に8セーブを挙げているが、森にとっては危機感を煽られる起用だったことは間違いない。「ホークスはそういうチーム。競争があるから、モチベーションにもつながると思います」と攝津氏が思い返す通り、ソフトバンクの選手層の厚さ、フットワークの軽さとともに、その中で繰り広げられる定位置争いの厳しさがよく表れた出来事でもあった。
【動画】THE FUTURE PLAYER 甲斐野央
(映像:パーソル パ・リーグTV)
すでに常勝軍団の主戦としてフル回転するふたりの右腕は、現状、覇権奪還への道筋のみを見据えているところだろう。決して油断はできないレギュラーシーズンの佳境。変わらぬチームへの貢献の先に、一生に一度の名誉が待っている。
構成:「パ・リーグインサイト」馬塲呉葉