堀江翔太の日本代表への想い 「桜のジャージに袖を通すたび、様々なものが胸の中で立ち上がる」
【【写真】Miho Watanabe】
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トンプソンについて聞くと、堀江は顔の前で右手を左右に振った。「いやいや、あの人だからできるんですよ! あの年齢までできるかどうかは、いまの僕には想像できないですね」
想像ができないと言うのも、当然のことかもしれない。アジア初となる自国開催のW杯へ向けて、堀江は自らの熱量すべてを注ぎ込んでいくはずだからだ。
1987年から開催されているラグビーW杯に、日本代表はすべて出場してきた。しかし、プール戦と呼ばれるグループリーグを突破したことは一度もない。アイルランド、スコットランド、ロシア、サモアとのプールAで2位以内を確保し、ベスト8へ進出することは日本ラグビー界の悲願である。3大会連続出場を目ざす堀江にとっても、絶対に辿り着かなければならない約束の場所と言ってもいい。
「全試合勝って上へ行くイメージはできています。この相手には負けそうやなとかは全然思わなくて、自信を持って自分たちのラグビーをできれば」
【【写真】Miho Watanabe】
「あくまでも僕の主観ですが、11年大会では本当の意味での自信を持てていなかった。でも、いまは違います。15年大会を経て、選手たちはどんな相手にも自信を持って戦うことができているし、練習から高いモチベーションで取り組んでいます」
堀江自身は昨年9月に右足首を痛め、同11月に手術へ踏み切った。実戦復帰は3月で、4月下旬にはサンウルブズに招集され、26日の試合で途中出場を果たす。「ケガはもう大丈夫です、全然大丈夫です。いまのところは何もないので、このまま順調に行ってくれれば」と話していたように、5月3日と12日にはスーパーラグビーに2試合連続で先発出場した。さらに、日本代表候補が集まるウルフパックでも実戦を積み、ゲーム感覚を磨いている。
「僕が頑張ることは日本代表のためにも家族のためにもなり、応援してくれている人たちのためにもなる。ラグビー選手ができることって、そこやと思うんです。テレビに出てW杯を宣伝するとかいうよりは、どれだけラグビーをプレーしている姿を見せられるかだと思うので。そこをメインに僕はやっていきたい、と思っています」
日本代表としてのキャップ数は、歴代10位タイの「58」を数える。試合前の国歌斉唱は、堀江にとって大切な儀式だ。
【【写真】Miho Watanabe】
桜のジャージに袖を通すたびに、責任、自覚、闘志、誇りといったものが胸のなかで立ち上がる。ピッチに立つことが許されるのは15人だけであり、その15人のプレーで日本代表に評価が下されるのだ。感奮興起しないはずがない。
「日本代表って文字どおり日本という国を代表することで、その選手がしょうもないことやったら、代表に選ばれていない選手にすごく申し訳ない。代表というプライドは毎試合残して戦わなきゃいけないし、残すというはピッチに刻むというかね。観てくれている人たちが『頑張れ』とか『日本代表、やるな』って思えるような試合をしないといけない。ラグビーに携わっている人たちの代表として、日本という国の代表として、すべてを賭けてやらなあかんと僕はいつも思っています」
堀江が定位置とするフッカーのポジションでは、27歳の庭井祐輔、25歳の坂手淳史、24歳の堀越康介ら(※)が代表入りを射程圏内とする。
「若い選手がグイグイ来ていて、いいフッカーはたくさんいます。それはすごく刺激になっています」と堀江は話す。もちろん、後輩たちにポジションを譲るつもりはない。
「代表としては最後かもしれないので、ここからすべてを賭けてやりたい、と思っています」
※年齢は取材当時の年齢
【文章】戸塚啓
【写真】Miho Watanabe
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