「イップス」になりやすい人とは?イチローも経験、克服に掛かった時間は?

ココカラネクスト

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野球界で「イップス」という言葉をよく耳にするようになってきた。

イップスとは、精神面や心理的原因もしくは何らかの理由で、これまでできていた思い通りの動作ができなくなる障害。現役プロ選手にも多数存在する。

一塁方向にわざわざ走って下からボールをトスする投手

投手でいえば、制球難が治らずに悩む阪神・藤浪選手を思い浮かべる人は多いだろう。打者に向かって投げられないケースと、けん制球やバント処理などフィールディングだけ症状が出る選手がいる。

よく見る場面として、ピッチャーゴロを捕球後、一塁に投げず、一塁方向にわざわざ走って下からボールをトスする投手。全員ではないが、イップスの典型例だ。

捕手に向かって全力投球することを常にしている投手は、一塁送球など、力を抜いて投げる動作の加減が難しくなる。1982年、阪神小林繁が敬遠しようと投げた球が大暴投になり、サヨナラ負けを喫したことがあった。沢村賞を2度獲得したトップクラスの技術を持つ投手でも発症してしまうのがイップスだ。

イチローもイップスの経験が?

捕手や内野手では、近い距離で正確なコントロールを求められる送球動作時にイップスになるケースが多い。悪送球が続けば、外野手にコンバートされやすい。遠投ではほとんどイップスにならない。内野手で入団した田口壮、内川聖一らはスローイングの不安が少なくなった外野手転向をきっかけにブレークした。

実は、マリナーズ・イチローにもイップスの経験があった。16年、テレビ番組のインタビューで、投手から野手転向した理由について語っている。

「僕らの高校時代は1年生がゴミで、2年生が人間、3年生が神様っていう位置付け。ゴミが神様に投げる。先輩たちに投げられなくなり、2年春からイップスになったんです。僕の野球人生で一番のスランプでしたね。投げることって、当時一番自信があったものですからね。オリックス入団5年後の97年まで続きました。日本一(96年)になった時、僕まだイップスでしたから。苦しかったですね〜」

元日本ハム投手の野球評論家、岩本勉氏は

まわりからは簡単に見える近距離のキャッチボールでワンバウンドしたり、ボールが大きくそれて制球できなくなる。プロ選手であれば屈辱的で、致命的欠陥と思ってしまいがち。イップスの自覚があっても、わざわざ公表する現役選手はほとんどいない。

自身も苦しめられたという元日本ハム投手の野球評論家、岩本勉氏は「(右手の人差し指と中指を揃えて、親指にちょんちょんとつける仕草をして)『お前、持ってるやろ?』って聞いて、このサインでイップスかどうかを確認するんです」。ネガティブな言葉を出す自体、敬遠される風潮があった。

広辞苑に「イップス」が新登場

現役で奮闘するイチローの告白で、風向きが変わりつつある。昨年、10年ぶりに改訂された広辞苑に「イップス」が新登場したように、広く認知されるようになった。

もともとはゴルフ用語。1930年前後に活躍したプロゴルファーのトミー・アーマーが思うようなパットができずに苦しんだのが始まり。「子犬がほえる」意味の英語yipが語源といわれる。ゴルフ、野球などスポーツ界から広がり、今や音楽やビジネスの世界でも使われている。

イップスは誰にでも起こる可能性があり、恥ずかしいことではない。真面目で責任感の強い人、練習を頑張りすぎる人がなりやすいといわれる。

原因も治療法も人それぞれだが、早期に同僚や指導者、専門医に打ち明け、理解と協力を得て対策を考え、復調した選手は多い。

何より、イチローほどのスーパースターでもイップスになるという事実は、壁にぶつかり乗り越えようとする人たちの背中を押すメッセージになった。

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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