“バレンティンキラー”が語る現役生活 「あっという間の9年間でした」

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バレンティンには「恐怖を感じながら投げていた」

宿敵バレンティンとの対戦には、神経をすり減らした。近年は安打を浴びる場面もあり、今季は7月17日に一発を浴びた 【写真=BBM】

 外国人スラッガーとの相性がよく、強打者にぶつけられた。なかでも“キラーぶり”を発揮したのがヤクルトの「60発男」だった。凡打が積み重なるなかで、いつしか2人の間には、不思議な空気感が生まれていた。

──中継ぎで投げる中でバレンティン選手という存在が登場します。初対戦の12年から20打数無安打と完璧に抑え込みました。

 17年に初ヒットを打たれたのはよく覚えています。「あっ、止まった」と思いましたから(笑)。

──終始、外角のスライダーに合っていなかった印象です。

 でも、ずっとスライダーばかり投げるわけにもいかず、インハイの真っすぐはスタンドまで運ばれるんじゃないか……と恐怖を感じながら投げていました。彼が打席に立ったときの威圧感はすごかった。正直なところ、シーズン60発打つ男の相手がなんで俺なの? と思いながら投げていました。

──2人だけの空気感もあったように見えました。

 1度やりとりをしたことがあるんです。試合前にウオーミングアップをしていると、バレンティン選手とミレッジ選手が歩いてきて、ミレッジ選手が通訳を介して「こいつカガのことが大嫌いって言ってるぞ」と話しかけてきたんです。そしたらバレンティン選手も「何で俺のときにいつも投げるんだ。もう投げないでくれ!」と冗談を言ってきた。自分も「それは俺が決めていることじゃない。こっちだって投げたくないよ!」と会話したことがありました。でも、外国人、右打者を抑えることが自分の仕事でしたから。

──13年はバレンティン選手を7打数0安打、ほかにもブランコ選手(対戦時は中日)もよく抑えていました。

 最近でいえば、ビシエド選手(中日)とも相性がよかったように思います。外国人スラッガーに対しては、スライダーの“奥行き感”が有効でした。真っすぐに対して、ふわっと来る感じ。それとインコースの真っすぐとの組み合わせが効果的だったんだと思います。しかし年々、その“奥行き感”が薄れて、打たれ始めました。

──対戦の多くがクリーンアップとタフなポジションでした。

 おなかはいつも痛かったです(笑)。投げ終わったあとに「ぎゅー」となって、いつか胃に穴が開くんじゃないかと思ってました。

──引退セレモニーでは、バレンティン選手からメッセージが送られました。

 まさかですよね。シーズン中にもかかわらず、よくコメントをくれたなと感激しました。本当にありがたかったです。

──引退後はどうされる予定ですか。将来のビジョンなどを教えてください。

 球団職員(野球振興部・スクール事業部)として新たなスタートを切り、子どもたちの野球に携わる予定です。現役のときに後輩の姿を見て「この選手はもっとこうしたら伸びるのにな……」と感じることがよくあったんです。そうしたアドバイスを送る中で、「加賀さんから言われたことやってみたら、よかったです」と言われると、すごくうれしかったんですよね。自分の中では指導というか、選手の力になる仕事に就きたいなと。ゆくゆくは球団の中で、そうした方向に進んでいきたいなと思っています。

取材・構成=滝川和臣、写真=福地和男(インタビュー)、BBM

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