連載:アスリートのビクトリーロード

鳥海連志(車いすバスケットボール)が語る金メダルへの道 「本当に負けず嫌いなんです」

宮崎恵理
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提供:味の素株式会社

フィジカルのために「110パーセント」の食事量を目指す

大学進学を機に一人暮らしを始めてから、食に対する意識が変わった 【写真:松尾憲二郎/アフロスポーツ】

松田 食事や体作りについても聞かせてください。日本体育大学に進学してから一人暮らしを始めたんですよね。

鳥海 はい。食事への意識が変わったのは一人暮らしを始めてからですね。高校までは実家で暮らしていて、母が料理を作ってくれて、出してもらったものを食べていました。一人暮らしだと、何を作るか、どういう栄養を取るか、タイミングはどうするか、それら全てを自分で管理しなくてはいけないので、やはり意識が変わりました。

松田 栄養面でのアドバイスや商品提供など味の素さんのサポートがあると聞いていますが、自炊はしていますか?

鳥海 「Cook Do®」をよく使います。

松田 何よりです(笑)。3食作っているんですか?

鳥海 夜はクラブチームのメンバーと一緒に外食することが多いのですが、家にいる時間はなるべく作るようにしています。

松田 僕はほぼ自炊をしないので、練習をしながら食事を作っているアスリートは本当にすごいと思います。世界の舞台に立って、食事や栄養管理の必要性を感じたのかな。一番気をつけていることは?

鳥海 「110パーセント」です。お腹がいっぱいな状態を100パーセントとして、そこから10パーセント増量すること。フィジカル的にもこれから上げていかなきゃいけないので、しっかり食べることを意識しています。

松田 おお、僕なんてどんどん太っていっちゃうから60パーセントくらいにしないといけないのに。うらやましい(笑)。食べる内容は意識している?

鳥海 合宿中はバイキング形式なので、できるだけ多くの食材で、栄養バランスを取ることを意識しています。そのうえで、110パーセント。あと、僕は食べるのが遅いんですよね。(合宿では)食事の時間も決まっているので、練習が終わったら早く着替えて、早く準備して、早くご飯を食べて、というところも心がけています。

松田 それだけしっかり食事をとって練習していたら、体は変わってきたんじゃないですか?

鳥海 リオ2016パラリンピックの頃と比べて、5キロ増えました。

松田 筋量で5キロはすごい! プレーも変わりましたか?

鳥海 海外の選手に比べると体重が軽いので、吹っ飛ばされてしまうことが多かったんですけれど、最近はそれほど当たり負けしなくなってきました。もちろん技術が上がってきたこともあるので、単純に体重だけではないのですが、そこは実感します。

松田 いわゆる「補食」はどう活用していますか。

鳥海 「アミノバイタル®」を練習の前後に摂っています。あとは、遠征に行く際はフライトの機内が乾燥していて体調のケアが難しいので、そういうときに「アミノバイタル®」プロを飲んでいます。

コミュニケーションがいいプレーにつながっていく

日々の成長が実感できる日本代表での活動が「楽しい」という鳥海 【Getty Images】

松田 体作りと同時に、メンタルトレーニングもしていると聞きました。どんなことをやっているんですか?

鳥海 毎日、自分が感じた“感情”を振り返って、ノートやパソコンに記録しています。例えばファウルじゃないと思ったのに、審判に笛を吹かれてしまってイライラしてしまったとします。その後、その感情を次のプレーにどうつなげていったかについて、記録しておくんです。

松田 データとして残しているんだ。効果は感じますか?

鳥海 気持ちが切り替えられるようになりました。

松田 団体競技では重要ですね。水泳は1つのレースで完結するので、1レースのなかで一喜一憂することってあまりないんですよ。

鳥海 松田さんに、ぜひお聞きしたいことがあるんです。大きな大会で、メダルが懸かった試合前の感情はどんな風にコントロールしているのですか?

松田 鳥海選手はどういう感じですか?

鳥海 自分が思っていることと、コートに立つメンバー、ベンチにいるメンバーの「共通意識」がないと、いいプレーは生まれない。だから、自分はコミュニケーションを多く取るように心がけています。人間観察というか、周りの感情の動き、雰囲気を感じることが、いい試合の入り方につながると感じているんです。

松田 うん。それでいいんじゃないかな。僕は、リオ2016オリンピックのリレーの時は32歳で、一緒に泳ぐ3人は10歳くらい若かった。1人は金メダル経験がありましたが、他の2人はメダルを取ったことがなかったので、この2人をどうケアしていくかをすごく意識していました。彼らが考えている「本当はこうしたい」という言語化されていない部分が、話をしているなかでぽろっと出てくる瞬間があるんです。それに、話し合うことで緊張がまぎれますよね。自分とだけ向き合っていると「どうしよう、どうしよう」と視野が狭くなってしまう。今、手応えを感じているその入り方で、すごくいいんじゃないかと思います。

鳥海 ありがとうございます。試合前だけでなく、選手ミーティングを開いたり、キャプテンが各部屋を回って何か悩んでいないか、どんな感情かを探りに来てくれたりもするんです。世界選手権のときにも、そういうコミュニケーションは心強かったですね。

松田 僕も代表チームでキャプテンをやった時に、みんなの話を聞くことを心がけていました。たとえば、悩みが練習場所やスケジュールのように変えられる可能性があるものなら、チームスタッフに掛け合って改善していける。そういうことでチームとしてのまとまりは出てくるんですよね。ディスカッションして、どんどんお互いに言い合って、いいチームを作っていったら、もっともっと強くなるんじゃないかなと感じました。

鳥海 そうですね。自分は今、本当にいろいろな経験を通じて、楽しみながら日本代表の合宿や遠征ができているなって思います。

この日が初対面だった2人だが、対談後は打ち解けた雰囲気に 【写真:松尾憲二郎/アフロスポーツ】

松田 あらためて、東京2020パラリンピックに向けた目標は?

鳥海 金メダルを目標にしています。本当は、そういうことを言葉にするのはあまり好きじゃないんです。でも、そこを目標にしているからこそ、「金メダルを取ります」と言っていかなければいけないと思っていますし、口にしたことで、日ごろの意識や競技に懸ける思いにつながっていく。ぶれずにいきたいなと思います。

松田 期待しています。頑張ってください!

(文中敬称略)

鳥海連志(ちょうかい・れんし)

【写真:松尾憲二郎/アフロスポーツ】

1999年2月2日生まれ。長崎県出身。地元・佐世保WBC(車いすバスケットボールクラブ)で競技を始める。リオ2016パラリンピックに、日本選手団の最年少である17歳7カ月で出場した。当時17歳で日本代表の最年少メンバーとしてプレーした。大会後、長崎県立大崎高等学校を卒業し、日本体育大学への入学を機に上京。以降はパラ神奈川SCに所属し、日本代表チームでも引き続き主力メンバーとして活躍している。金メダル獲得を目指す東京2020パラリンピックでも大きな期待が集まる。

松田丈志(まつだ・たけし)

【坂本清】

宮崎県延岡市出身。4歳で地元・東海(とうみ)スイミングクラブに入会し水泳を始める。北京2008オリンピックにて200mバタフライで銅メダルを獲得。この活躍が認められて宮崎県民栄誉賞と延岡市民栄誉賞を受賞。ロンドン2012オリンピックでは200mバタフライで銅メダル、400mメドレーリレーで銀メダルを獲得。リオ2016オリンピックで800メートルリレーのアンカーとして銅メダルを手にしたのち引退。現在は、コメンテーターなど幅広いジャンルで活躍。味の素(株)の栄養プログラム「勝ち飯®」アンバサダーという一面も。

【味の素(株)】

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著者プロフィール

東京生まれ。マリンスポーツ専門誌を発行する出版社で、ウインドサーフィン専門誌の編集部勤務を経て、フリーランスライターに。雑誌・書籍などの編集・執筆にたずさわる。得意分野はバレーボール(インドア、ビーチとも)、スキー(特にフリースタイル系)、フィットネス、健康関連。また、パラリンピックなどの障害者スポーツでも取材活動中。日本スポーツプレス協会会員、国際スポーツプレス協会会員。著書に『心眼で射止めた金メダル』『希望をくれた人』。

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