猛牛軍団のセットアッパーは19歳 山本由伸が思い描く未来とは!?

ベースボール・タイムズ

短時間で磨き上げたカットボール

セットアッパーとしてのやりがいを感じながらも、将来的には先発としての活躍を思い描く(山本は写真右) 【写真は共同】

 150キロを超えるフォーシームに、140台前半のスプリットを持つ本格派である山本が、「Meal Pitch」のカットボールを如何にして手にしたのか……。事の発端は自らの投球を「楽にしたい」という一念からだった。

 昨季、1軍での先発マウンドを経験したが、どうしても球数がかさんでしまい、その影響で5回を乗り切るのが精一杯という状況が続いていた。ファームでは空振りが取れた真っすぐやフォークも1軍レベルの打者はファウルで逃げる術を持っている。自然と、力投派の山本のスタミナは投球数とともに疲弊していく。

「球数を減らしながら、打たせてアウトを稼ぐボール。肩やひじへの負担の少ない球ということでカットボールに辿り着きました。昨年の12月頃からですね。普段のキャッチボールや遠投でも、カットの握りで放ったりして。最初は、しっくりこなかったのですが、この春の宮崎キャンプあたりから、次第に感覚を掴み始めてきたんです。今では、本当にこのボールに助けられています」

 彼の言葉を信じるならば、山本を一段上のステージに押し上げたカットボールは、意外にも短時間で習得に至ったことになる。

大切にしたい先発への思い

 そして今、山本の傍には同じ10代でリリーバーデビューを果たした平井正史投手コーチがいる。

「本当によくやってくれていますよ。ただ、僕も若い時に感じたことなのですが、シーズンは長いということ。まだ、山本の場合は、シーズンを通して1軍で過ごした経験がない。今でまだ、折り返し近辺ですからね。ここから夏場をどう乗り切るのか……。そこもまた大きなテーマでもあるわけです。あと、本当に優勝やAクラスを争う、しびれるような試合で、彼本来のパフォーマンスが示せるかどうか」

 かつてチームを優勝に導いたその道の大先輩は、山本の働きに目を細める。高卒2年目の若さに若干の不安を抱きながらも、その能力には大きな期待を込めつつ、太鼓判を押す。

「まぁ、気持ちの強さも彼のウリですからね。厳しいポジションですが、全うして欲しいですね。あいつの持つ能力や可能性はまだまだこんなものじゃないですよ」

 若き“8回の男”に、自らが思い描く“行く末”について聞いてみた。

「もちろん、今与えられたポジションはとても大切な場所であり、やり甲斐を感じないはずはありません。でも、やっぱり最終的には先発投手としてマウンドに上りたいという気持ちは持っています。僕の中でこの思いは大切にしたい。そのためにも今、与えられている役割を果たしながら経験を積んで、自分の持ち球の精度を上げて行かないといけない」

 若者の目指すステージは、まだまだ先の高みにあるようだ。無限のポテンシャルを有する19歳のセットアッパーが今、最も心を砕いていることは何なのか――。

 彼の答えはこうだ。

「気持ちも、疲れも、次の登板に持ち越さないこと。つまりは心身の切り替えですよ」

 そう笑った屈託のない笑顔こそ、20歳を前にした若者が見せる、それだった。

(大前一樹/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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