DeNA・今永に何が起きているのか? 「早く状態を戻して取り返したい」

日比野恭三

「レベルの低いところでもがいている」

「苦しんだ中でも何か光るものを見つけ出せれば」と再浮上を誓う 【(C)YDB】

「何でなのか……。正直、肩の状態には何の問題もないし、フォームに関しての不安もないんです。なので、毎回、『そんなに調子は悪くなかった』というコメントになるんですけど、そこが自分の中でいちばん歯がゆいというか。調子が悪くて打たれたんだったら、『ここがこうだったな』『次回はこうしよう』と納得できる。でもいまは、それがどこなのかわかっていないという、すごくレベルの低いところでもがいている。かなりレベルの低いところで野球をやってしまっている。ほんとに……情けないですね」

 春季キャンプの期間中、今永は「周りのいろんな人たちを観察したり話を聞いたりして自分に取り込んでいきたい」と話していた。「自分が絶不調になった時に『あの人があんなことを言ってたな』ということを思い出して、それを実践できたらいい」と。苦境に立つ現在も、周囲の声にヒントを探っているという。

「三上(朋也)さんとは結構そういう話をします。『お前のいい時は、もっとこういう感じだったよな』って言ってもらったり。石田(健大)さんや東(克樹)なんかに聞いてみることもありますし、そこで得たヒントをキャッチボールで試してみたり、ブルペンでトライしてみたり。ここ最近はずっとそういうことをやってみているんですけど、自分の感覚にカチッとはまるものがなかなか見つけ出せていない。頭で先に考えてから動こうと思っても、体って固まってしまいますよね。だから、頭じゃなくて体が勝手に反応するようなものになってこないと厳しいのかなと思います。もっと体が、全力で出力をボーンと出せるようになっていかないと」

答えらしきものは見えてきている

 1軍登録抹消後、好転のきっかけを模索してきて、一つの答えらしきものは見えてきている。

「やっぱり『出力』の部分ですね。スピードを追い求めているわけじゃないですけど、球速は一つのバロメータではあるので。あとは、その出力にブレーキをかけられる下半身の安定性。ぼくは(踏み出す)右足がいつもぶれたりするからコントロールもぶれる。出力を出すことと、受け止める側の足がポイントになってくるんじゃないかと思っています」

 パワーカーブなど、変化球の引き出しを増やす取り組みをしてきたが、「いまはそれ以前の問題。まずはいつでもカウントを取れるまっすぐを取り戻さないと」と今永は語った。

 まだ5月。長いシーズンは始まったばかりだ。アレックス・ラミレス監督が常々口にするように「どう終わるかが大事」でもある。

「終わった時のことはあまり考えられないですけど……1軍の試合に迷惑をかけてしまっているので、早く状態を取り戻して、何とか取り返したいという気持ちはあります。そのうえで終わった時に、この期間がいい期間だったと振り返れるように、苦しんだ中でも何か光るものを見つけ出せればいいなと思います。まずはしっかりとファームで結果を出して、やっと次は1軍という段階のピッチャーなので。そこを目指してやっていきます」

 今シーズン序盤のDeNAは、若手先発陣の踏ん張りがチームを支えてきた。昨シーズンの勝ち頭、今永の復帰は優勝戦線浮上への足掛かりになると期待されていた。それだけに、結果の伴わない現状に対する不甲斐なさは募るばかりだろう。

 背番号21が再び1軍のマウンドに帰ってくるのはいつになるのか、依然としてメドは立っていない。だが次こそは、ミットめがけて糸を引く、あのストレートを見せてほしいと願っている。

(取材協力:横浜DeNAベイスターズ)

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著者プロフィール

1981年、宮崎県生まれ。2010年より『Number』編集部の所属となり、同誌の編集および執筆に従事。6年間の在籍を経て2016年、フリーに。野球やボクシングを中心とした各種競技、またスポーツビジネスを中心的なフィールドとして活動中。

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