未成熟なサウジアラビアは課題が山積み わずか1年で3人目の監督と挑むW杯
アジアの中では最も恵まれた組み分けだが……
開催国ロシアと同組のサウジアラビア。アル・サハラウィ(写真)らセンターラインのメンバーは固まっている 【Getty Images】
本大会では開催国ロシアと同じグループAに入っており、そのロシアと開幕戦を行う。さらに南米の強豪ウルグアイ、リバプールで得点を量産中のモハメド・サラーを擁するエジプトと戦うスケジュールだ。アジアの5カ国の中では最も恵まれた組分けだが、3戦全敗もありうる。極端に守備的な戦いをピッツィ監督が選択すれば、協会から不満が飛び出しかねないが、少なくとも現実を見て、奇跡を起こすためのプランニングを選択していくしかないだろう。
ピッツィ監督はファン・マルバイク時代の「4−2−3−1」を踏襲しそうだ。ベルギー戦の前半と後半でGKを交代するなど、限られた時間の中で選手をテストして正GKを見極めようとしているが、オサマ・ハウサウィ、オマル・ハウサウィのセンターバック(CB)コンビ、運動量豊富なボランチのアブドゥラー・オタイフ、司令塔のタイシール・アル・ジャッサム、1トップのモハンマド・アル・サハラウィといったセンターラインは固まっており、左右のサイドバックとサイドアタッカーも充実している。
充実していると言っても、それはアジアレベルでの話だ。昨年のAFCチャンピオンズリーグで浦和レッズとファイナルを戦ったアル・ヒラルのメンバーが約半数を占め、アル・アハリの選手も多い構成だが、インターナショナルの経験が不足しすぎている。個々の局面での能力はそこまで低くないが、中盤のインテンシティー(プレー強度)が高い試合で素早い攻守の切り替わりやプレッシャーにかかるとベルギー戦のように全体が間延びし、ゴール前でCBコンビの“Wハウサウィ”が体を張るしかなくなる状況に陥りやすい。
実情から考えれば、躍進の可能性は低い
実情を考えれば、サウジアラビアの躍進の可能性は低いが…… 【Getty Images】
前半は自陣で守備を固めて、うまくボールを奪えれば前線にロングボールを入れて一発のカウンターを狙う。相手に疲労が見えてきた後半の時間帯に、スピードのあるアタッカーを投入して、前半よりは厚みを加えた攻撃で点を取りにいく。その中で、いい位置でのFKを獲得できれば大きな得点チャンスになる。サウジアラビアの選手はボールの持ち方が独特であり、相手が強引に奪いに行こうとすると、うまく倒れてファウルをもらいやすい。そうした強みも駆使して、何とか得点を狙っていきたい。
もともとポテンシャルが高くない上に、予選後の監督交代で組織的な熟成も他の参加国より低い。そうした実情から考えればサウジアラビアの躍進は考えにくい。何が起こるか分からないのがW杯ではあるが、ピッツィ監督は非常に難しい采配を迫られそうだ。