オコエが停滞ムードの楽天を変えるか 3年目も「気合いMAX」で突っ走る!

松山ようこ

周囲を巻き込む愉快なやり取り

オープン戦では本盗を決めるなど、走塁面は変わらず高いクオリティを発揮 【写真は共同】

 春季キャンプで、こんなことがあった。

 清水雅治・外野守備走塁コーチのもと、外野陣が走塁練習をしていた。本番さながらに、スライディングの練習を重ねていた。そのうちにオコエが、どんどん助走の距離を増やし、ダイナミックに走り出したのだ。

 あまりに豪快でベースタッチの手が届かなかった。清水コーチもツッコミを入れる。「触ってないぞ!」。すると、すかさずオコエも「セーフです!」と大げさに身振りをして言い返す。挙げ句、今度はすぐ次にスライディングした3歳年上の田中和基を見て、「ほら、今の触ってない! アウト!」と先輩をスケープゴートにしようとした。

 取材していたカメラマンたちも含めて、その場は大盛り上がり。そこでカメラマンたちも連写した画像を差し出して、即席で「写真判定」に協力しはじめた。結果は、オコエは「アウト」で、田中は「セーフ」。そんな愉快なやり取りが何度かあった。

 後で本人に言うと、恥ずかしそうに「いや、あれは楽しくやろうと。冗談も兼ねてですよ」とオコエ。監督やコーチから、普段もたくさん“怒られて”いるのだろう。ふざけて見られないよう、取り繕っているさまがいじらしかった。

2年前からの猛練習が形に

 彼が野球に真剣に取り組んでいるのは、こちらも重々承知している。

 ルーキーイヤーの一昨年は、春季キャンプから、手が血だらけになるほど何個もマメを潰しながら、猛烈にバッティング練習を重ねた。2年目の昨年は、そうして前年からバットを振りすぎたことが原因で、右手薬指のじん帯損傷を負った。前半戦は離脱を余儀なくされたが、猛練習の成果か後半戦から41試合に出場し、打率3割を残している。

 そして今季は、兄貴分のルシアノ・フェルナンドとグアムでみっちり自主トレに励んでからのキャンプイン。トレーナーやバッティングピッチャーも連れて、みっちり走り込みと打撃練習に励んだ。

 確かに今もとんでもない球に手を出したり、チーム打撃には足りない部分は見え隠れしたりするが、そうした猛練習の成果は着実に現れつつある。そもそも、ほんの2年前はキャンプで打球が前に飛ばないほど、木製バットの対応に苦労していたのが、信じられない吸収率と努力で急成長を遂げているのだ。

「まだまだ」と監督に求められているのは期待の裏返し。チームは現在3カードを終えて2勝7敗と、苦戦を強いられている。それでも、野球を全身で楽しんでいるように、ダイナミックに打って走って守るオコエから目が離せないし、今後もチームを押し上げるような活躍をする気がしてならない。

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。翻訳者・ライター。スポーツやエンターテインメントの分野でWebコンテンツや字幕制作をはじめ、関連ニュース、企業資料などを翻訳。2012年からライターとしても活動をはじめ、J SPORTSで東北楽天ゴールデンイーグルスやMLBを担当。その他、『プロ野球ai』『Slugger』『ダ・ヴィンチニュース』『ホウドウキョク』などで企画・寄稿。2018年よりアイスクロス・ダウンヒルの世界大会Red Bull Crashed Iceの全レースを取材。小学館PR月刊誌『本の窓』にて、新しい挑戦を続けるアスリートの独占インタビュー記事「アスリートの新しいカタチ」を連載中。

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