スパイラルスイングで外力を取り入れる プロのスイング、ここを真似すべし!【H・ステンソン編】

吉田洋一郎

【Getty Images】

不惑を迎えても衰えない飛距離

 日本では今季、石川遼が出場する米国男子ゴルフツアー最終戦として注目されたウィンダム選手権(8月17日〜20日)。優勝は41歳のヘンリック・ステンソン(スウェーデン)だった。

 ステンソンは今季序盤は好調だったものの、その後調子を落としてマスターズ、全米オープンと予選落ち。今季はここまで優勝がなかった。

 昨年、不惑を迎えた年にメジャー初優勝となる全英オープンを制したステンソンだが、彼の武器は3番ウッドで300ヤードを飛ばす衰えない飛距離だ。

 一般的に年齢を重ねると筋力が衰え、体が硬くなり飛距離は落ちる。これはプロでもアマチュアでも一緒。しかしステンソンの場合は、筋力や柔軟性に頼ったスイングをしていないため、飛距離が落ちることはない。

 スイング中に発生するエネルギーは主に「内力=自分の筋力」によって作り出す力と、「外力=重力や反動の力」によって作り出す力に分けることができる。ステンソンの場合、外力を非常にうまく利用することで、若手選手に勝るとも劣らない飛距離を出し続けることができているのだ。

筋力に頼らないスイング方法

 ステンソンはピート・コーウェンというコーチに師事しており、コーウェンはこの外力を利用した「スパイラルスイング」という理論を提唱している。

「ゴルフのスイングはワインのコルクを抜くように、下から上に螺旋状(スパイラル)にエネルギーが伝わっていくのがベスト」というのが、コーウェンの主張だ。

 今回はスイングが安定しないゴルファー向けに、筋力に頼らない、スパイラルスイングの取り入れ方を紹介しよう。



 ステンソンはスイングの始動時に、手元を目標方向に動かすフォワードプレスの動きを入れる。反動をつけて始動をスムーズにする意図があるが、この手の動きに加えて左足を踏み込むのが特徴だ。

 始動時に左足を踏み込むと、その反動を地面側から受けることができる。これが先ほど挙げた外力(反動の力)を使った動きだ。始動がスムーズになり、リズムが一定になることに加え、動き始めから下半身リードの動きが崩れないため、手打ちになる可能性が限りなく低い。

 ステンソンは飛距離に加えパーオン率でも上位につけるが、この正確性は手を含めた上半身の動きを限りなく制御した結果によって得られているものだ。

右サイドへの過度なスウェーに注意

 アマチュアがこの左足を踏み込む始動を行った際に出やすいミスが、右サイドへの過度なスウェーだ。「左足を踏む」意識を持つと、最初は目標方向に体重をかける動きになりがちだ。そうなると反動の力は右側にかかって、体をゆする動きになってしまう。

 あくまでも左足でエネルギーをかける方向は地面側で、目標方向ではない事を注意してもらいたい。

 テークバックで腰を右にスライドさせるのではなく、体の中心の軸を意識し下から上に力が伝わるようにするのがポイントだ。スパイラルスイングではエネルギーの方向は左から右への横移動ではなく、下から上への縦の移動だということを頭に入れておけば、実践できるだろう。

 レッスンで「手ではなく、体でクラブを上げる感覚で!」と指導を受けたことがある人は、多いのではないだろうか。なんとも漠然としたフレーズだが、ステンソンのように始動で左足の踏み込みを行うことで、この感覚を得ることができるだろう。

※この記事は2017年8月30日にスポーツナビで配信した記事を再掲載したものです
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著者プロフィール

シングルプレーヤーを目標達成に導くゴルフスイングコンサルタント。世界で最も有名なゴルフインストラクター、デビッド・レッドベターから世界一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。毎年数回ゴルフ先進国アメリカやヨーロッパに渡り、PGAツアー選手を指導する一流インストラクターに直接学ぶなど、心技体のゴルフ最新理論に関する情報収集と研究活動を行っている。実際に教えを受けた著名ゴルフインストラクターの数は100名を超える。監修した書籍「ゴルフのきほん」は30,000部のロングセラー。ゴルフ雑誌、スポーツ新聞にて連載を3つ持ち、世界のゴルフティーチングに関する情報発信を行っている

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