ガトリンへのブーイングはなぜ起きたのか ドーピング以外の問題も?

及川彩子

ドーピングは悪だが、ガトリンだけに非難が

両親と優勝の喜びを分かち合うガトリン。レースを終えた息子を、父はしっかりと抱きしめた 【写真:ロイター/アフロ】

 ガトリンは2度処分を受けている。ドーピングはスポーツを滅ぼす可能性があり、認めてはいけないものだ。本来は8年間の処分期間だったにもかかわらず、反ドーピング機関に調査協力することで4年間に短縮してもらったことも、「卑怯者」というレッテルを貼られる要因になっている。
 確かに卑怯だし、ドーピングをしたことも許してはいけない。ただ、なぜ処分が解けた2010年ではなく、7年も経った今、蒸し返すのだろうか。12年のロンドン五輪の時にたたけばよかったのではないか、と思う。
 結局、今回はボルト最終章にあたって、メディアが「伝説の英雄ボルトvs.悪役ガトリン」という筋書きを書き、観客をエキストラとして雇ったストーリーのような、そんな印象操作があったことは否めない。

 もう一つ、強く感じるのは、おのおのはどうドーピングに向き合うかだ。

 メディアやファンはガトリンだけを悪役にして責めるのではなく、ドーピングで処分を受けた選手全員に同じ態度をとってほしい。ガトリンはアウト、ほかの選手はセーフという考えではなく、一貫性を持つことも必要だ。大会やマラソンなどの主催者も同様で、もしドーピングに断固反対するのであれば、処分を受けた選手や関係者を招待するのをやめるべきではないだろうか。

 今回のガトリンへのブーイング事象は、我々に再び「ドーピングに対して考える機会」を与えてくれたように思う。一つの報道を信じるのではなく、自ら調べたり、考えたりする機会を持ってほしいと思う。

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著者プロフィール

米国、ニューヨーク在住スポーツライター。五輪スポーツを中心に取材活動を行っている。(Twitter: @AyakoOikawa)

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