山本昌氏が語る中日・荒木の秘話 転機は「雨の日のブルペン」にあった?
チームが黄金期を迎えた時、2人は左腕エースと不動の二塁手として何度も優勝へ導いた 【写真は共同】
今回は荒木と長年チームメートとして親交を深めていた山本昌氏に取材。ドラゴンズひと筋、通算219勝を挙げた“レジェンド”に、荒木という選手の価値について語ってもらった。
2000本目は「らしいヒット」
お互い「マサヒロ」つながりで親しくしているのもありまして。どちらかというと「ピッチャーはピッチャーと、野手は野手と」が仲良くなることが多いですけど、荒木選手に関しては私になついてきてくれました。2000本打ってくれたときは、やっぱりうれしかったですよね。
実は、達成の前日に荒木選手にメールを送ったんです。「頑張れよ、明日しゃべってるからね」と。そうしたら、「頑張ります」と返事がきました。達成してからは忙しいでしょうからね。その日は星野仙一さん(東北楽天副会長)と放送席に入る予定だったので、「星野さんもいるよ」と付け加えておきました。星野さんが来てしゃべっている時に達成するのは、強運だと思います。打席を迎えるたびに放送席から降りてきてくれてね。そう考えると「幸せ者だな」と思いますね。
「カッコ良く」なった構えでレギュラーへ
6月3日の楽天戦で通算2000安打を達成した荒木。この日、山本昌氏も放送席からその雄姿を見守った 【写真は共同】
私達ピッチャーというのは、構えを見て「あれっ」ってバッターの“雰囲気”を感じるのですが、荒木選手にはその「あれっ」というのがあったんですよ。「カッコ良くなったな、打ちそうになってるな」と。その年からレギュラーを奪ったんですよね。荒木選手とも「そんなことがあったね」と話した記憶がありますが、僕は当時、素直に「良い構えになったじゃん」と伝えただけ。長年投げてた勘だったんですかね。
また、守備面になりますが、スローイングに関して聞かれることもありました。特に自主トレやキャンプの時期に「僕の今年の投げ方はどうですか?」と。投げることの動きに関しては見ることができますので、「こうした方がいいんじゃないか」と教えたりしました。肩は抜群に強いわけじゃないですから、強いボールを投げるために彼は聞いてきたのです。このようなやり取りが、私が50歳近く、彼もベテランの域に入ったときまでありましたね。