山本昌氏が語る中日・荒木の秘話 転機は「雨の日のブルペン」にあった?

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チームが黄金期を迎えた時、2人は左腕エースと不動の二塁手として何度も優勝へ導いた 【写真は共同】

 中日・荒木雅博は40歳を迎える今季も第一線でプレー。不惑になってもなお、全力疾走を続け、跳ぶようなヘッドスライディングでチームを鼓舞。二塁手としての守備範囲の広さも健在で、バッティングでは通算2000安打をマークしたのが記憶に新しい。

 今回は荒木と長年チームメートとして親交を深めていた山本昌氏に取材。ドラゴンズひと筋、通算219勝を挙げた“レジェンド”に、荒木という選手の価値について語ってもらった。

2000本目は「らしいヒット」

 荒木選手の2000安打達成の瞬間は、テレビ解説のため放送席で見ていました。目の当たりにして感じたのは、「荒木らしいヒットだな」と。止めたようなスイングでライト前へ飛びましたね。球場の雰囲気が、荒木選手にヒットを打たせようとすごく感じました。第1打席のときから感じましたね。「ああ、きょうはもう出るな」と。早めに出て良かったんじゃないですか。

 お互い「マサヒロ」つながりで親しくしているのもありまして。どちらかというと「ピッチャーはピッチャーと、野手は野手と」が仲良くなることが多いですけど、荒木選手に関しては私になついてきてくれました。2000本打ってくれたときは、やっぱりうれしかったですよね。

 実は、達成の前日に荒木選手にメールを送ったんです。「頑張れよ、明日しゃべってるからね」と。そうしたら、「頑張ります」と返事がきました。達成してからは忙しいでしょうからね。その日は星野仙一さん(東北楽天副会長)と放送席に入る予定だったので、「星野さんもいるよ」と付け加えておきました。星野さんが来てしゃべっている時に達成するのは、強運だと思います。打席を迎えるたびに放送席から降りてきてくれてね。そう考えると「幸せ者だな」と思いますね。

「カッコ良く」なった構えでレギュラーへ

6月3日の楽天戦で通算2000安打を達成した荒木。この日、山本昌氏も放送席からその雄姿を見守った 【写真は共同】

 荒木選手とのエピソードで思い出すのは、沖縄キャンプでのブルペンでの出来事です。当時、彼は4、5年目あたりの若手でした。雨の日でしたが、ピッチャーの生のボールを見たかったのでしょう、「バッターボックス入っていいですか?」って来て、パッと構えたときに一目で「カッコ良くなった」と思ったんです。

 私達ピッチャーというのは、構えを見て「あれっ」ってバッターの“雰囲気”を感じるのですが、荒木選手にはその「あれっ」というのがあったんですよ。「カッコ良くなったな、打ちそうになってるな」と。その年からレギュラーを奪ったんですよね。荒木選手とも「そんなことがあったね」と話した記憶がありますが、僕は当時、素直に「良い構えになったじゃん」と伝えただけ。長年投げてた勘だったんですかね。

 また、守備面になりますが、スローイングに関して聞かれることもありました。特に自主トレやキャンプの時期に「僕の今年の投げ方はどうですか?」と。投げることの動きに関しては見ることができますので、「こうした方がいいんじゃないか」と教えたりしました。肩は抜群に強いわけじゃないですから、強いボールを投げるために彼は聞いてきたのです。このようなやり取りが、私が50歳近く、彼もベテランの域に入ったときまでありましたね。

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