イングランドの丘陵地帯を走るレース! ご当地トレランに当日エントリーで参加してみた

南井正弘

想像以上に厳しい……!

 レースの申し込みは前述の通り、ホテルのロビーに設けられた受付で6ポンド(約852円)を払うのみ。公式サイトにはレインジャケットやレインパンツ以外にコンパスや地図、エマージェンシーシートetc.の持参が義務付けられていたが、受付ではレインジャケットのチェックだけ。スタート地点に向かうとゼッケンを付けたランナーがコースを入念にウォームアップしている。体形や装備を見るとかなりレベルが高そう。

 号砲一発スタートすると、ランナーは一斉に登り坂を駆け上がる。路面は轍になった箇所も多く、何度も足を取られる。柔らかい路面と岩が混じっており、前日の湖水地方と同じく、かなり走りにくい。途中小川のある湿地帯もコースとなっており、早い段階でシューズ内部に浸水してかなり不快な状態となった。

 のんびり走って高台からきれいな景色の写真を撮っていると「私たちは棄権したランナーを回収するために最後部を走るスイーパーです。体調は大丈夫ですか?」と声を掛けられ、このときに初めて自分の後ろには数人しかいないことに気付く。それからは「とにかくビリにならないように!」を心掛けてペースアップする。しかしながら長年フェルランニングに慣れ親しんでいる地元のランナーは泥んこの路面を軽快に駆け巡り、なかなか追い越すことは難しい。10kmのコース中何か所か素晴らしい風景の場所もあったが、スタート前に想像していたよりもかなり厳しいコース設定のために、あまり景色を楽しむ余裕はなかったが、「フェルランニングとは何か?」という一端は感じることができた。

 最終的に途中の激坂の上りなどで5人のランナーを抜いて281人中276番でゴール。公式タイムは1時間34分52秒であった。完走証や完走メダルetc.はなかったが、6ポンドの参加費だから致し方ないところ。逆に言えば、日本でもこんな感じで気軽に参加できるトレイルレースが増えたら、トレイルランニングがもっと盛り上がるだろうと思った。

不整地を走るランニングにも種類はいろいろ

ぬかるんだ路面ではinov-8のグリップ性の高さは大きなアドバンテージとなる。それだけに着用率は50%を超えていた。 【写真提供:南井正弘】

 そして、このレースを走り終えてもうひとつ思ったのは、「不整地を走るランニングにもいろいろな種類があるなぁ」ということ。オレゴン州ポートランドのフォレストパークや自分がホームコースとしている青梅の鉄道公園周辺は、トレイルといっても踏み固められていて、ある程度スピードを出して走りやすい。一方で今回走った丘陵地は路面がぬかるんでいるところが多いし、凸凹なので地元ランナー以外はスピードを出すのは難しい。そして路面の柔らかさを考えるとシューズには長めのスタッドが不可欠だ。それゆえ今大会のシューズの着用率は地元イングランドのブランドであるinov-8(イノヴェイト)が50%を超えていた。

路面はかなり柔軟なので、シューズに関してはスタッドの長いアウトソールのタイプが不可欠となる。筆者はinov-8のX CRAW 275で走ったが、グリップ性も高く、ある程度の衝撃吸収性もあり、走りやすかった。ただし接地面積が小さいから、濡れた岩の上などはスリッピーになることもあるから注意が必要で、地元ランナーは一目でその岩に着地してよいかどうかを長年の経験で判断できるというから驚きだ。 【写真提供:南井正弘】

レース当日、スタート時は冷蔵庫の中のようで気温はかなり低かったが、上級ランナーはシングレットと短いショーツの組み合わせがポピュラーだった。これぞイングリッシュスタイル! 【写真提供:南井正弘】

今回、281名の完走者中女性ランナーは66名。占有率は23.48%だから想像よりも低い気がした。 【写真提供:南井正弘】

公式タイム1時間34分52秒で無事ゴール。正直言うとここまでキツイとは思わなかったが、ゴール後は大きな満足感が湧いてきた。 【写真提供:南井正弘】

2/2ページ

著者プロフィール

フリージャーナリスト。1966年愛知県西尾市生まれ。スポーツブランドのプロダクト担当として10年勤務後、ライターに転身。スポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズを得意分野とし、『フイナム』『日経トレンディネット』『グッズプレス』『モノマガジン』をはじめとしたウェブ媒体、雑誌で執筆活動を行う。ほぼ毎日のランニングを欠かさず、ランニングギアに特化したムック『Runners Pulse』の編集長も務める

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント