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飛距離は元プロの恩師も太鼓判――慶大・岩見雅紀はアマ屈指の長距離砲

清水岳志 2017年5月26日 12:45

冷静に見極めて１浪で慶大入学

「努力した分だけ飛ぶわけじゃない。それは親から授かったもの。血筋にも感謝です」と今の自分のアピールポイントについて感謝を口にした【スポーツナビ】

　体格のように豪快な人間かと思ったが、声が小さくなる時があるし、質問には間をおいてきちんと言葉を選んで答える時がある。その時、置かれた境遇の中で立ち止まって冷静になって見極めてきた。

　滋賀県の名門、比叡山高校から慶大に１浪しての入学だった。

「高校３年の夏が終わって野球を続けたいなと。大学でやるならプロを目指したい。慶応の練習会にきて環境もよくて、神宮球場でやれる。素晴らしい選手もいて、ここにかけてダメなら野球も辞めよう」と覚悟を決めた。ただ、現役では落ちてしまう。「他の大学は受かったんですが、もしプロに行けない場合、浪人した方が納得できるだろうと」。２年目に見事、ＡＯ入試で合格を果たす。プロへの道はこうしてつながった。

　小さい頃にこんなエピソードもある。命名は実は、長宜だった。今と同じ、『まさき』と読むが、なかなかそうは読んでもらえない。日常生活に支障がある、と今の雅紀に中学に進級する段階で変えたそうだ。大きな転機になっていることは想像がつく。「勢いや乗りで決めることはないです。じっくり考えて選びます」。

　長打力は持って生まれたもので、自らが得たものではないこともわきまえている。「努力した分だけ飛ぶわけじゃない。それは親から授かったもの。血筋にも感謝です」。

プロ１本で恩返しを―ー

現役時代は五輪代表、プロでは近鉄でプレー、指導者としても都市対抗３度の優勝を誇る慶大・大久保監督。岩見について飛距離は「見てきた中でナンバーワン」と評価するが、プロで生きていくためには「速い真っ直ぐへの対応」を課題に挙げた【スポーツナビ】

　１年生では腰を痛めたりでリーグ戦出場はなし。「カーブマシンを空振りするほどダメでした」。そんなタイミングで大久保監督が就任する。「ただ飛ばすというだけの僕を引き上げてくれた監督に出会えて運が良かった。また横尾（俊建／元慶大主将・現日本ハム）さんに気に入られたり、僕が頑張ったんではなくて、周りの人に良くしてもらった」。

　野球部のホームページに記された信条。「懸情流水受恩刻石」――誰かに与えた情けの見返りは期待するな。受けた恩は一生忘れずに感謝しろ。親や、野球仲間から受けたものをどう返すか。

「プロ一本で考えてます。飛距離を評価してくれるところがあれば。恩返しにつながればいいなと思います」。

プロで生きていくためには速球の対応

「飛距離を評価してくれるところがあれば」と進路はプロ１本に絞る。ただ、５月に行われる早慶戦で優勝に導く一打を打てるか!? 【写真提供：慶應スポーツ新聞会】

　大久保監督は背中を押す。「最初はボールとバットが数十センチ離れていた。それを２０センチ、１０センチと詰めていって、今は当たればスタンドイン。上達するには他人の２倍、３倍かかるところがあるが、速い真っ直ぐを打ち返せるようになれば、プロでも生き残っていくはず。部訓（練習ハ不可能ヲ可能ニスル）ほどやってないでしょ（笑）。２４時間、野球漬けのプロならなお、伸びしろがある」。

　歩みは時間がかかってもいいのではないか。

「大谷藤浪世代？　向こうはスーパースターで、こっちは同じステージにも上がってない。頭の片隅にもない」

　背番号「１３」はメジャー通算６９６本塁打の強打者アレックス・ロドリゲス（愛称Ａ・ロッド）がヤンキース時代に付けていた背番号だ。ふと見たテレビのメジャー・リーグ中継でＡ・ロッドが豪快なホームランを打ったそうだ。あんなホームランをプロの舞台で打ちたい。