ロッテ・井口「もっと野球専用球場を」 21年の知見から求めるボールパーク化

週刊ベースボールONLINE

NPBで17年、MLBで4年の豊富な経験から球場を語る井口 【写真=BBM】

 今季でプロ21年目を迎える千葉ロッテ・井口資仁はアマチュア時代を含めたその長いキャリアの中で、数え切れないほど多くの球場でプレーしてきた。その中には、MLBで過ごした4年間も含まれる。球界最年長野手が感じてきたそれぞれの球場での思い出、そして、これからの球場に求めるものとは――。

フィールドに施される数々の工夫

 現役のNPB選手の中で、この男ほど“球場”を語るのにふさわしい選手はいないだろう。福岡ダイエー(現福岡ソフトバンク)から始まったプロキャリアは、アメリカン・リーグのホワイトソックス、ナショナル・リーグのパドレス、フィリーズを経て、ロッテにたどり着いた。MLBの両リーグ、NPBの交流戦を含めれば、あまたの球場でプレーしてきたことになる。球場とともに胸に刻まれた思い出から、MLBとNPBの球場の違いを肌で知るがゆえに、未来の球場に求めるものまで、すべてを語り尽くしてくれた。

――アマチュア時代を含め、これまで数多くの球場でプレーされてきましたが、思い出に残っている球場と問われると、どの球場になるのでしょうか。

 ファンとしてはアメリカで言えばフェンウェイ・パーク(レッドソックスの本拠地)とか、リグリー・フィールド(カブスの本拠地)といった伝統ある球場が面白いのかもしれないですけど、選手としては自分が本拠地としてプレーした球場になりますね。その中でもホワイトソックスの球場(ギャランティード・レート・フィールド、当時はUSセルラー・フィールド)。グラウンドキーパーの方と一緒に話し合いながら、自分の守りやすいようにフィールドをつくってくれていたので、そういう意味では思い出がありますね。

――2005年シーズン、ホワイトソックスに二塁手として移籍しました。最初に感じたメジャーの球場のイメージはいかがでしたか。

 もちろんやっぱり天然芝ですし、どういうゴロが飛んでくるのかな、というのはありましたね。でも、開幕の前日にアリゾナから帰ってきて、すぐに開幕戦だったので。球場で練習したっていう記憶がない。いきなり本番で。これがアメリカか、みたいな(笑)。ただ、最初からすごく守りやすかったですけどね。

――グラウンドキーパーの方と話し合いながら一緒にフィールドをつくるというのは、具体的にどういったことなのでしょう。

 選手によっても、ポジションによっても、水のまき方一つも違うんですよ。芝の長さのカットだったり。そういうことをすべて選手に声を掛けて意見を聞きながらやってくれるんです。ほかにもフィールドの中に工夫をしていく。例えば、「三塁線はセーフティーバントをしたら戻ってくるようにしてあるから」とか。見た目では分からないけど、芝の微妙なカットで転がすと切れないようにしてあったりする。もちろん、そのことをホーム側の選手たちだけ分かっているから、ホームアドバンテージになる。そういうのがフィールドの中に隠されているんですよ。

――対戦相手や試合ごとに計算してフィールドをつくっていく。

 そうなんです。当時のヤンキースやレッドソックスとか強打者ぞろいのチームとやるときは打球の勢いがそがれるように芝を長くして、簡単には内野の間を抜けないようにしたり。足を使ってくるチームのときは、一塁付近の土を柔らかくして走りにくくしたり。さっきの水のまき方にしても、「今日はもしかしたら雨が降るかもしれないから、少な目にまいておくね」とか、グラウンドキーパーの方がいろいろな工夫をしていましたね。

意外と守るのが難しい日本の人工芝

ホワイトソックス時代はグラウンドキーパーと話し合いながら、守りやすいフィールドをつくり上げた 【Getty Images】

――井口選手としてはどういうグラウンドが好みだったのですか。

 まずは硬さですね。僕は硬いのは好きじゃないので、柔らかくしてもらっていました。それで水はたくさんまいてもらう。そのほうがイレギュラーしないので。

――メジャーで球場ごとのグラウンドの違いというのは。

 やっぱり暖かいところと寒いところでは芝質が違うんですよ。寒いところでは太くて力強い芝なんですけど、フロリダとかだとゴルフ場みたいな、短くて毛の細い芝なんで。だから球場ごとにポジショニングなどの守り方は少し変えていましたね。とは言っても、メジャーの球場はどこも芝がきれいに手入れされていたので、あまりイレギュラーしたっていう記憶はないですけどね。

――やはり日本の球場とは違いがありましたか。

 本拠地だった福岡ドーム(ヤフオクドーム)も今のマリン(ZOZOマリンスタジアム)も人工芝ですからね。あんまりグラウンドごとにどうこうというのは考えたことがないですね。ただ、今の日本の人工芝は進化しているので、意外と守るのが難しい。人工芝の毛が長くなってきていて、毛先がいろいろな方向を向いているので、意外とボールが真っすぐ飛んでこなかったりする。昔のデパートの屋上みたいな人工芝だったときは絶対にイレギュラーなんてしないからラクでしたけどね(笑)。体への負担という点では今の人工芝のほうがはるかに良くなっていますけど、守ることを考えると昔のほうが守りやすかったですね。

――ロッカールームなどの施設面ではいかがでしたか。

 ロッカールームは球団によって全然違いましたね。新しく立て直したり、お金をかけてる球場はどこもみんなきれいなんですけど、さっき言ったフェンウェイ・パークやリグリー・フィールドはひどかった。まあ、古い球場だからみんな納得してましたけど。フェンウェイ・パークなんかはホームベースからベンチまでも遠かったですね。やっぱり近いほうがラクですからね。でも、そういったことは日本の球場でも変わりはないですけどね。

1/2ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント