鹿島が“仕掛ける”スタジアム戦略 「ゾンビイベント」開催の理由に迫る
鹿島がスタジアムの指定管理者になるまで
鹿島の誇るスタジアムグルメ。指定管理者になることで、飲食売店の売り上げに応じた収入を得ることができる 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】
県の公募に参加するきっかけを「クラブとして、これからはスタジアム事業が核になるというビジョンを持っていたから」と萩原は振り返る。通常、スタジアムに管理者がいる場合、クラブは「興業主」としてスタジアムを借りて試合運営を行うことになる。当然、試合日以外にスタジアムを使用するとなれば、管理者の許可を得なくてはならない。「練習をやらせてほしい」と申し込んだとしても、「メンテナンス中なのでできない」と言われれば、ホームスタジアムであっても使用することはできない。そうした意味でも、クラブがスタジアムをコントロールできるようになることが重要だった。
指定管理者になることのメリットはそれだけではない。
「飲食売店の権利に関しても、実は興行主の権利ではなく、スタジアムの権利なんです。興行主が一生懸命集客をして、お客さんを集めて、売店の売り上げがたくさん上がったとしても、売店の売上のロイヤルティー(使用料)を取るのはスタジアムで、興行主には入ってこない。ですが、スタジアムの管理権を取ることによって、売店の売上に応じた収入を得られます。今まではゼロだったものがプラスになるというだけでも大きな話でした」(萩原)
試合がない日でもスタジアムを活用し、地域の人たちに日常的に使ってもらえるようにしたいとの思いから、鹿島は施設内にフィットネスジムを併設。会員制の「カシマウェルネスプラザ」は幅広い年齢層に利用されている。また、15年には「アントラーズスポーツクリニック」がオープン。現在は試合開催日以外でも、クリニックの利用者など、1日に100人ほどがスタジアムを訪れるという。
一方で、指定管理者としてスタジアムを運営していく中で、負担になるのが施設の維持費だ。1993年に建設されたスタジアムは、今年度で25年目を迎える。建物の劣化は避けられないことに加え、海が近く霧が発生しやすい地域のため、スタジアムの躯体に塩が付着し、錆が発生することも多く、通常よりも早いペースで劣化が進んでしまう。大規模な工事は県も負担してくれるが、こうした細かな工事にかかる修繕費は当然、指定管理者が支払うことになる。
スタジアム収入を「4本目の柱」に――
鹿島が目指すのはスタジアムを地域のランドマークとしてにぎわいの場にすることだ 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】
「スポンサー収入や入場料収入は成績によって上下する不安定なものだと認識しています。その不安定さをスタジアム収入によって、もう少し安定した経営基盤が持てればと思っています。ここのパイを増やしていくことによって、安定したクラブづくり、成績に左右されないクラブづくりができるのではないかと思っています」
鹿島が「成績に左右されないクラブづくり」を目指す理由は、クラブの置かれた環境にあると萩原はいう。
「(鹿島は)Jリーグで進めている『100億円クラブ』や『街中クラブ』からは、かけ離れたクラブです。そういった街中クラブとは対極の『田舎のクラブ』でどう立ち向かうかというのを目指しています。いろいろな仕掛けをすることで、どうやって収入を増やしていけるかということです」
今回のイベントもその「仕掛け」のひとつであり、今後もカシマスタジアムでは家族や友人同士で楽しめるイベントを開催するつもりだという。現在、フィットネスジムやクリニックが併設されており、夏期限定でビアガーデンも行われるなど、スタジアムの活用は多岐にわたるが、鹿島が将来的に目指すのはスタジアムを地域のランドマークとして、にぎわいの場にすることだ。ショッピングモールやコンベンションホール、さらにはホテルなどが併設された複合施設――近い将来、カシマスタジアムがそんな“THE DREAM BOX.”になる日がくるかもしれない。
(文中敬称略、取材・文:木村郁未/スポーツナビ)
「ゾンビパンデミックwith鹿島アントラーズ カシマゾンビスタジアム〜スタジアムに隠された謎を解き生還せよ!〜」(PR)
【(c)KASHIMA ANTLERS】
2017年5月3日(水・祝)
【1stステージ】 13:00キックオフ(12:00開場)
【2ndステージ】 17:30キックオフ(16:30開場)
※各ステージとも同内容のゲームとなります。
体験時間:
約120分(プレイ時間90分 / 説明30分)
開催会場:
茨城県立カシマサッカースタジアム(茨城県鹿嶋市神向寺後山26-2)
チケット料金:
大人3,500円/小人 2,500円
※前売り・当日共通
※中学生以上から大人料金