世界遺産、聖地エルサレムマラソンを走る 歴史深き石畳の市街コース…記憶に残るレースに

南井正弘

旧市街の細い石畳の道、丘の上からの美しい眺望

午前6時45分、まずハーフマラソンからスタート。 【写真提供:南井正弘】

 レース当日は朝の5時に幹線道路が封鎖されたが、筆者の滞在していたレオナルド プラザ ホテルからスタート会場までは徒歩でも15分ほどであったので、ホテルのビュッフェ朝食を食べてから会場に向かった。

 ファミリーラン、5km、10km、ハーフマラソン、フルマラソンというすべてのレースのなかで最もスタートの早いのが、筆者がエントリーしたハーフマラソンで6時45分。スタートのコラル(区分け)は徹底されており、出入り口でしっかりとチェックされる。ニール・バルカート エルサレム市長により号砲一発スタート。自分はCのコラルであり、前から3番目なので約3分遅れでスタートラインを越えることができた。事前にアップダウンの激しいコースだという情報は聞いていたし、前日にコースの下見をして何ヶ所も丘というか山を登るのを知っていたので、今回は記録を狙うというよりも記憶に残るレースにするべく走ることに。

この写真を見てわかるように、コースは終始アップダウンが続く。 【写真提供:南井正弘】

【写真提供:南井正弘】

 スタートから4kmのラップまでは多くのランナーで前がかなり詰まっていたこと、登り基調ということもありスピードが出しにくく、Km/7分を切る程度のかなりゆっくりのペースで進む。エルサレムの街は新市街も旧市街も趣があって、走っていて本当に飽きない。エルサレムライトレールと呼ばれる市電が走る街並みも印象深かったが、なんといっても前半のハイライトは、5km過ぎに訪れる旧市街の細い石畳の道。これまで世界中のマラソンを走ってきたが、こんな感じのコースはなく、このエリアで立ち止まり写真を撮っているランナーは少なくなかった。

歴史あるエルサレム旧市街を走ることができるのもこのレースの醍醐味 【写真提供:南井正弘】

 前述の通りこの大会はフラットなエリアが少ない。延々とアップダウンの続くコースは自己記録を狙うランナーにとっては苦痛だが、景色を見ながら楽しみながら走りたいというランナーには嬉しいコース設定だろう。丘の上から旧市街を眺める景色は本当に美しく、キツイ登りも「美しい眺望のためなら!」と、それほど苦にならないはずだ。ただし14km過ぎの坂、18km過ぎの登りは上級ランナーでもタフに感じるかもしれない。終盤の坂をクリアして以降はkm/5分台のラップで走り、ゴール。手元のスントで2時間14分23秒、公式タイムは2時間14分09秒であった。

国際大会を名乗るに相応しい成長

完走メダルはどちらかいうとシンプル。表面は英語表記、裏面はヘブライ語表記だ。 【写真提供:南井正弘】

 ゴール後はペットボトルの水、完走メダル、ポテトチップス、オレンジ、リンゴなどを受け取る。最近のアメリカのランニングイベントの完走メダルはかなり豪華でデザインも凝っているが、同大会のメダルはそれと比較するとシンプル。メダル本体やストラップには英語だけでなく、ヘブライ語も表記されているので、いい思い出になるだろう。

自らもランナーであるニール・バルカート エルサレム市長も10kmレースに参加。 【写真提供:南井正弘】

 ゴールしてからリラックスエリアまで歩かされる距離はアメリカや日本の大規模大会と比較すると短いのはありがたい。当日は晴天に恵まれたこともあり、走り終えたランナーたちは芝生の上でストレッチをしたりリラックスしたり、友人とレース内容を語らったりと、各々レース後の時間を有意義に過ごしていた。

 今回の同大会にはフルマラソン約2000人、ハーフマラソン約6000人、10kmレース約1万1000人、5kmレース約3000人、ファミリーランに約6000人と、3万人近いランナーが参加。そのうち3500人は海外70ヶ国から訪れたランナーであり、2010年に行われた第1回大会の全参加者が約1万人、海外からのランナーが300人という数字からすると大きな変化であり、同大会はインターナショナル エルサレムマラソンと名乗るのに相応しい国際的なランニングイベントへと成長したのである。

ファミリーランには約6000人が参加。 【写真提供:南井正弘】

他とは一味違う大会に出てみたいランナーにオススメ!

 実際にエルサレムを訪れてみて、街は整備されているし、治安もほぼ問題ないことを実感。ファラフェルやフムスといったイスラエル料理も日本人の口に合うと思う。日本からの直行便が就航していないのはネガティブポイントだが、「他人がまだあまり走っていない大会に出てみたい!」「アメリカやヨーロッパのメジャーなレースは出尽くした!」「世界遺産に指定されているエルサレム観光のついでにマラソンも走ってみたい!」というランナーにエルサレムマラソンは本当にオススメだと思う。

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著者プロフィール

フリージャーナリスト。1966年愛知県西尾市生まれ。スポーツブランドのプロダクト担当として10年勤務後、ライターに転身。スポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズを得意分野とし、『フイナム』『日経トレンディネット』『グッズプレス』『モノマガジン』をはじめとしたウェブ媒体、雑誌で執筆活動を行う。ほぼ毎日のランニングを欠かさず、ランニングギアに特化したムック『Runners Pulse』の編集長も務める

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