1日でも長く一緒に野球を――報徳学園、勇退の名将に送る大勝

楊順行

「勝って歌う校歌は最高」

2番・永山が6打数5安打を放つなど打線爆発。21安打21得点を挙げた 【写真は共同】

 そして――永田監督が「背中の寒くなるような試合はしてほしくない」と語った初戦、第2日第2試合。フタを開けてみれば、報徳学園は投打で多治見を圧倒した。初回、ヒットで出た永山裕真が盗塁し、以後2本の適時打で2点を先制すると、3回には敵失にも乗じて大量8点。

「差は歴然でした。体勢を崩し、打ち取ったと思っても、振り抜いてくるから野手の間に落ちる」とは多治見の先発・河地京太投手で、終わってみれば多治見の述べ4投手に21安打を浴びせる21得点。6打数5安打の永山を筆頭に、西垣以外は先発全員安打・全員打点で、「横綱に胸を借りるつもりでしたが、それにさえ力不足」と多治見・高木裕一監督は言う。21点は、永田監督自身はもちろん、報徳学園の甲子園史上最多得点で、センバツでは2006年の横浜以来、今世紀では2度目の20得点以上という大勝だった。

 永田監督は語る。

「勝って校歌を歌うのは、最高です。選手に感謝、感謝ですね。打線に関してはできすぎで、初回足を絡める自分たちのスタイルで先制できたのが大きい。数日前までは、河地君が内角に投げにくいように右打者は打席のホーム寄りに立たせていたのを、考えを変えて今日は各自の判断で打たせました」

7回無失点のエースに監督も驚き

昨秋は最速132キロだったエース・西垣が140キロを超えるストレートで7回無失点の好投を見せた 【写真は共同】

 三塁を踏ませず、7回を2安打無失点に抑えた先発・西垣については、「秋より数段成長しているとは思っていましたが、まさかここまでとは。意気に感じて放ってくれたと思います。140キロが出ました? まだまだ伸びしろはありますよ」と、昨秋からの成長に驚き顔だ。

 その西垣は言う。

「今日はとりあえず勝てましたが、まだまだ。監督と最後まで試合できるように、チャレンジャー精神でいきます」

 もう1試合、できますね……と報道陣に水を向けられると、「それがめちゃくちゃうれしいです。ただ……今日は泣かんでおこうと決めていましたが、それを言われると泣きそうになるんですよ……」。

 報徳学園の次戦は、第7日第1試合。相手は、前橋育英(群馬)である。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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