清宮幸太郎だけじゃない早稲田実の強さ 創造した文化とつないだ伝統の融合

清水岳志

打てなくても声でチームを鼓舞

打てなくても常に前を向き、練習に励む清宮の姿は劣勢でもあきらめないチームをつくった 【写真は共同】

「清宮は失敗して抑えられた悔しさを持っていて、よく練習する、次への努力を惜しむ子じゃない」(和泉監督)

 その姿を他の選手はもちろん、見ていた。そして、チームは勝ち進んだ。

 ならば……打撃で貢献できなければ、清宮は声を出してチームメイトを鼓舞するしかない。清宮の声は秋が深まるごとにかすれていった。

「温度差なく、ゲームに出場していない控え選手も声が出てる。どんな展開でもあきらめず、自分が打てなくてもみんなに助けられた。それがうれしかった」

 清宮は都大会を振り返ってそう言った。

劣勢を受け止められるチームは強い

 日大三高戦は9回表に2点をリードされたところから逆転した。

「清宮はキャプテンになってより責任感が出てきた。彼がフォア・ザ・チームに徹すればなお、影響力が大きい。みんなで助け合ってあきらめずに劣勢を受け止めている。それをできるチームは強い。その先頭に清宮がいる」

 これは和泉監督の確信。

 伝統とはただ、同じことを繰り返すことではない。時代に即し、古いものは置いていき、新しいものを創造する。

「無安打の日もいつかは来ると思って覚悟してました」
「野球というのはピンチがつきもののゲーム」

 清宮はそんなことも口にした。劣勢の時は仲間に助けてもらうという新しい清宮像。2016年秋の文化、と言うことになるのだろうか。

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著者プロフィール

1963年、長野県生まれ。ベースボール・マガジン社を退社後、週刊誌の記者を経てフリーに。「ホームラン」「読む野球」などに寄稿。野球を中心にスポーツの取材に携わる。

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