沖縄本島1周サバイバルラン2016に挑戦! 総距離400kmの超過酷レース、その結末は?

三河賢文

30度におよぶ炎天下でのスタート

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 スタート地点は、ゆいレール・壺川駅から近い『沖縄国際ユースホステル』。ここから沖縄本島を1周し、再びこの場所を目指します。天気は晴れ。私は旭橋駅近くのホテルから歩いて向かいましたが、2km弱の道中だけで汗だくになりました。雲が少ないので太陽の照りつけも強く、暑さが大きな課題となりそうです。

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 スタート前に注意事項やコース、チップ計測に関する説明が行われます。説明を聞きながら、少しずつ「いよいよ始まるぞ」と士気が高まっていくのを感じました。

 なお、この大会はリピーターが多く、昨年の完走者もほとんどが再出場。その他のランナーも、国内外問わずさまざまな大会を制覇した強者ばかりです。
 そして、いよいよレースがスタート!ゼッケンナンバー順に、10名ずつ2分間隔で走り始めました。皆さん笑顔いっぱい……ですが、果たしてどこまで笑顔でいられるでしょうか。

 スタート時間は昼12:00と、もっとも暑い時間帯。気温は30度にも及んでいます。スタートからハイペースで進む方、制限時間を考えてイーブンペースを維持する方など、それぞれの戦略でレース開始です。

那覇市内を抜けて残波岬へ

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 しばらくは、人通りの多い那覇市内を走っていきます。信号はもちろんストップ。ペースが乱れますが、ここで焦ってはいけません。私は最後尾からスタートしましたが、しばらくすると前グループのランナーに合流しました。

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 10kmほど走ると、目の前に現れたのが青々とした海と空。これぞ沖縄といった景色ではないでしょうか。しかしレースは予想を超える暑さから、思った以上の疲労が出てきます。

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 途中、2人で走っていた男女のランナーと合流しました。暑さもあって水分補給の回数が多く、こまめにコンビニなどで休憩。お二人とも、初めて本大会にチャレンジされているそうです。話を聞くと「完走だけを考えて急がずペースを落として走る」とのこと、私もご一緒させてもらうことにしました。

 というのも……

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 実は大会前日、履いていたワラーチ(ランニング用のサンダル)が破損。応急処置として修理したものの、いつも通りの走りができる状態ではありません。加えて、修理した鼻緒部分が少し盛り上がってしまい、親指・人差し指の付け根にずっと刺激を与え続けます。再び故障する懸念もあったので、私もできるだけソフトに、ゆっくり走りたいと思っていたのです。

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 普天間飛行場や嘉手納基地などを越えて。コースの分かりにくい場所には、矢印が設けられています。

 この辺りから、少しずつペースダウンし始めます。その理由は、暑さによる“熱中症”。一緒に走っていた男性が「寒い」「吐きそう」という症状を訴え始めたのです。時間にはまだ余裕があったので、歩きを交えながら進みます。400kmという長丁場、序盤で無理することはできません。もし症状が悪化すれば、それこそレース続行が困難になってしまいます。

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 まず目指したのは、第1チェックポイントの残波岬。34km地点ですが、5時間という通過関門が設けられています。この頃、もう一人の女性ランナーも「寒い」と体調不良が出始めていました。私たちの他にも、やはり暑さにやられて体調を崩したランナーは多かったようです。

 時計を見れば、関門制限には少し余裕があります。歩きと走りを組み合わせながら、お互いに声を掛け合って進みました。少しずつ日が傾き始め、しかし気温は下がりません。

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 そして4時間35分ほど走り、残波岬に到着! ここでは、地元の方が冷たい沖縄そばを用意してくれていました。荷物を降ろして食べると、空腹だけでなく疲れた体まで癒してくれるようでした。

 ご一緒していたお二人も、一休みして少し回復した様子。「もしや出発できないのでは」と心配しましたが、ここからも一緒に走らせてもらうことに。
 残波岬を出たのは夕方5時前頃。出発してすぐ、美しい夕焼けが見られました。

「日が沈んだら、少し涼しくなるかな」

 そんな期待を抱きつつ、夜通し走り続けるオーバーナイトランへと突入します。

暗闇を駆け抜けるオーバーナイトラン

【三河賢文】

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 40kmを過ぎて恩納村に到着する頃には、すでに周囲は真っ暗。車の通りが多い場所は明るいものの、基本的にコース場は街灯が多くありません。オーバーナイトランは眠気が心配でしたが、思いのほか大丈夫だったのは幸いでした。

 しかし期待とは裏腹に気温があまり下がらず、むしろ湿度が上がって蒸し暑い状態に。オーバーナイトランも一筋縄ではいかないようです。

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 いつの間にか曇り空になっていたようで、たまに明るい月が姿を見せます。そして月が隠れると、明かりの少ない場所では頭上にたくさんの星が。「これは綺麗だ」なんて話しながら眺めていると、“誰かと一緒にいる”ということの心強さ、そして楽しさを感じます。

 夜中0時手前、名護に入って食事。ずっとコンビニばかりだったので、スピードも重視しつつ牛丼を食べました。すでに私はかなり脚が痛み始め、お二人も序盤の熱中症による体力低下が残った状態。しかし“食べる”ということが元気に繋がり、再び前に進もうという気力が生まれます。

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 そして100km地点、『美ら海水族館』のある国営沖縄記念公園に到着です。真夜中の美ら海水族館なんて、このレース以外に訪れる機会なんてないのでは。

 これまで100kmマラソンは何度も走っていますが、「これで本当に100km?」と疑いたくなるような疲労状態。立ち止まると動けなくなりそうで、ほぼ歩きになりつつも3人揃って進んで行きました。
 やがて長い夜が終わり、少しずつ空が明るくなってきました。途中、もう1人のランナーが合流して自然と一緒に進むことに。いつしか仲良くなり、とりとめのない話で盛り上がります。

 ちょうど朝4時頃、一緒だった男性ランナーが「眠い」と言い始め、私も同様にあくびが。1人だったら、睡魔に負けて仮眠していたかもしれません。しかし皆で喋りながら走っていると、気が紛れ、ちゃんと足は前に進みます。こうした人と人との関わりは、本大会の魅力なのではないでしょうか。

DNF、そして反省会

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 2日目の朝7時30分頃、約111km地点のポイントに到着しました。明るくなり、太陽の光を浴びると眠気が薄れるから不思議です。一緒だったランナーも疲れが見え、私もかなり脚が痛んでいます。しかし気持ちは切れていないので、まだ少しは走り続けることができたかもしれません。

 しかし残念ながら、私はここでリタイアすることを決めました。1つは、すでにワラーチの破損がひどく、足の痛みから裸足で走るような状態だったため。そしてもう1つ、実はこの大会には163km地点にも24時間という通過関門があり、この時点で残り52kmを4時間半と絶望的だったためです。

 一緒だった女性ランナーも「収容車に拾われるまで進もうかな」と悩んでいましたが、結局、全員がここでリタイアとなりました。
 気候条件などから序盤でのリタイアが多かったようで、那覇へと戻る回収車は満席。まるで運動部の部室のような臭いの室内で、ほとんどの方々は静かに眠っています。どこでリタイアしようと、1人1人が全力を出し尽くして走ったはず。なかなか完走には届かない、だからこそチャレンジしたくなる大会なのではないでしょうか。

完走した強者は8名!

【三河賢文】

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 回収車はいったん163km地点の残波岬へ向かい、ここでのリタイア者も乗せて那覇へと戻りました。素晴らしかったのは、残波岬へ着くと眠い目をこすりつつ、全員が車を出てランナーを迎えていたこと。レースを振り返り、反省したり笑ったりしながら、ランナーが来ると立ち上がって拍手。ランナー同士が讃え合う姿を見て、私もその一員であることが誇らしく思えてきました。

事情により私は翌日すぐ帰京しましたが、数名のランナーはレンタカーを借り、最後までランナーのサポートに回ったと言います。これだけ一体感のある大会は、とても珍しいのではないでしょうか。
 ちなみに那覇に戻った後は、皆で反省会という名の飲み会。

「何人が完走できるだろうか?」
「○○さん頑張ってるよな」
「来年こそ完走してみせる!」

 なんて話で盛り上がります。初めて会う方もいる中で、こうして交流が生まれるのは素敵なことだと思います。本大会にリピーターが多いのは、こうした人同士の繋がりという魅力があるからなのかもしれません。

 暑かった前半とは打って変わり、後半は雨のレースになった様子。最終的には8名のランナーが完走しました。出場者は49名ですから、どれだけ過酷かがお分かりいただけるでしょう。機会があれば、私も是非また挑戦してみたいものです。

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著者プロフィール

中学生の頃から陸上競技を始め、大学では十種競技選手として活動。引退後、約7年のブランクを経て2011年6月よりランニングを開始。同年にハーフマラソン、フルマラソン、翌年には100kmのウルトラマラソンやトライアスロン(オリンピック・ディスタンス)も完走。沖縄本島1周マラソンなどを始め、今では“超長距離”レースにも数多く出場している。また“トウモロコシ”や“アザラシ帽子“をトレードマークに、仮装マラソンも楽しむ。ランニングブログも不定期更新中。趣味と過去の経験を活かし、現在は東京都葛飾区内にある中学校の陸上部にて、外部コーチとして指導も行っている

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